「最後までやり遂げる子」「すぐに飽きる子」の違いを生む1つの要因

中野日出美
2024.06.25 16:04 2023.09.26 11:50

勉強する子

目標を達成できる子と、そうでない子の違いを生む要因は「モチベーション」にあると心理士の中野日出美さんは語ります。「親に言われてしぶしぶやる…」ではなく、「自らやり遂げたい!」という気持ちを芽生えさせるにはどうしたら良いのでしょうか。子どものやる気を伸ばすために効果的な3つの質問を紹介します。

※本稿は中野日出美著『自信がない・考えるのが苦手・傷つきやすい 「心が強い子」に育つ100の質問』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

中野日出美(なかの・ひでみ)
NPО法人 日本心理コミュニケーション協会 代表。公認心理師。心理セラピスト。絵本作家。親子関係の改善を図るセラピーの専門家。

なぜ、モチベーションが必要なの?

勉強する男の子

いくら頭がよく、健康な身体をもっていても、本人がやる気にならなければ、高い目標にたどりつくことはできません。

私は心理カウンセラーや心理セラピストを養成するスクールを長年、運営しています。その中で強く感じたのは、結局はやる気のある人が目標にたどりつく可能性が圧倒的に高い、ということです。

能力の高い人や心理職に向いている性格、経験をもった人はたくさんいますが、すぐさま他のことに目移りして、長続きしないケースが多いことに驚きます。

逆に、経験や目立った才能はなくても、粛々と努力を続け、モノになる人もいます。

では、こうした違いはどこから生まれるのでしょう?

それは、モチベーションが長続きするかどうか―。
これに尽きると私は考えています。

もちろん、忍耐力や覚悟なども関係しますが、モチベーションさえ持続できたら、立ちはだかる障害を乗り越えていける可能性がグンと高まると思うのです。

私が監修・指導・運営を務める心療内科クリニックにも、高学歴、高収入で誰もがうらやむような人生を送っているのに、どうにもやる気が出ない、頑張りたいのに頑張れない、という具合に心や身体に不調をきたしている患者さんがたくさんいらっしゃいます。これまで人並み以上に努力して、頑張ってきた方々です。

私は、その原因は「燃料切れ」だと感じています。

私たち日本人は、子どものころから「努力すること」を推奨されてきた、真面目な努力家です。そうして、大人になり目標にたどりつく人もたくさんいます。

スマホをいじる男の子
しかし、その後、うつ病や適応障害などの心身症にかかるなど、さまざまな問題を抱えることも少なくないのです。

平たく言うと、目標にたどりついた後、もしくはたどりつく前に「バーンアウト」してしまうわけです。とくに目立つのは、子どものころから「親の期待に応えたい」と頑張ってきていた人たちです。

もう1つ、気になるのは、親から甘やかされて育ったケースです。親の過保護から、大人になっても精神的・経済的に自立できず、何かを目指しても、ちょっとしたストレスに負けて、すぐに逃げたり、あきらめたりします。これもまたモチベーションが長続きしなくなる原因の1つです。

「親にやらされている」のではなく、「自分がやりたい」「やらなくてはいけない」という方向に意識を変えることが大切です。「やったほうがいい」のではなく、「やり遂げたい」「何としてもやるんだ」に変えることができれば、やる気は持続するのです。

そのためには、自分の心や身体を動かすための燃料が必要。そもそも自分を動かす燃料の質が悪かったり、不十分だったり、他の人からいつも分けてもらわなければならないとしたら、とうてい、目的地にはたどりつけないでしょう。

ソファーに突っ伏す女の子

人生の鍵を握っているのは、潜在意識です。というのも、自分を動かす最も大きなエンジンが潜在意識だからです。

つまり、この潜在意識というエンジンを動かし続ける燃料が必要なわけです。そして、まさにそれこそがモチベーションです。

潜在意識の特徴の1つに、「潜在意識は苦を避け、快を求める」というものがあります。だから、目標に向かうことは、苦しいことではなく、心地いいことだと潜在意識に思わせることが肝心です。

本稿では、お子さんの潜在意識にそのような刺激を与えるための質問をご用意しました。楽しみに読み進めてください。

勉強をしないと、将来にどう影響する?

勉強に悩む女の子

【質問1】これからの3年間、まったく勉強ができなくなるのと、毎日、学校や塾以外に5時間勉強しなくてはいけなくなるのとでは、どちらを選ぶ?

勉強をしないとダメだということはわかっているけれども、毎日、土日も夏休みもお正月も休みなく5時間も勉強しなくてはならない……。しかも、学校や塾の時間は除くのが条件なので、おそらく睡眠時間なども削らなければならないと思います。

現実問題としては、私自身は小さな子どもが休むことなく毎日5時間も勉強することについては反対の立場です。

なぜなら、子どもはその年齢に応じて、勉強だけではなく、さまざまな活動や体験をすることが大切だからです。また、睡眠時間もしっかりとる必要があります。

しかし、現代では中学受験をする子どもも多く、小学生のうちから、学校や塾以外でも勉強しなくてはならなくなっているようです。

この質問では、勉強をまったくしないことで訪れる未来への不安とともに、自分の健康やメンタルなども考えながら、勉強と自由時間のバランスを考えさせます。将来の成功のためにも、子ども時代を勉強漬けにすることは、実際にはかなり不健康なことです。

大人はつい、「今、やらないと大人になってから後悔するよ」と言いがちですが、子ども時代の今しかやれないこともたくさんあります

中野日出美

中野日出美

NPО法人日本心理コミュニケーション協会代表。公認心理師。心理セラピスト。絵本作家。親子関係の改善を図るセラピーの専門家。