不登校の子どもを救うには? 「嫌われる勇気」著者が示すひとつの道しるべ

古賀史健
2023.09.29 16:37 2023.10.02 17:00

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文部科学省の発表によれば、小学校、中学校ともに不登校児の数は年々増加傾向にあるといいます。また、不登校になった子どもたちの2割強は「きっかけが何か自分でもよくわからない」と答えているそうです。子どもたち自身でも、自分の気持ちや考えていることを完全に理解出来ている子は多くないのかもしてません。

ベストセラー『嫌われる勇気』の著者である古賀史健さんが発表した、『さみしい夜にはペンを持て』は揺らぐ13歳に向けて書かれた物語です。悩める子どもたちが『書く』をと通して「自分を好きになれる」ことを伝える寓話が収められた同書。そこに込めた思いを伝える古賀史健さんのnoteに投稿内容の一節と、メッセージをここに紹介します。

※本記事は古賀史健さんのnoteの投稿と本稿向けのオリジナルのメッセージより構成されたものです

古賀史健(ライター/株式会社バトンズ代表)
1973年福岡県生まれ。1998年、出版社勤務を経て独立。著書に『嫌われる勇気』(共著・岸見一郎)、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』、『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』(共著・糸井重里)などがある。2014年、ビジネス書ライターの地位向上に大きく寄与したとして「ビジネス書大賞・審査員特別賞」受賞。2015年、ライターズ・カンパニーの株式会社バトンズを設立。

本に助けられ、書くことで救われる

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本が好きな人ならだれでも、本によって救われた経験があると思います。

ひどく落ち込んでいたとき、あの本に救われた。あの作者の、あのことばが生きる光を与えてくれた。あのときの経験があったおかげで、いまも本を読んでいる。本を、すこし特別なものとして、こころの大切な場所に置いている——。ぼくだってそうです。どん底から救ってもらえた本は、何冊となくあります。

ところが、自分のこれまでを注意深くふり返ってみたとき、ぼくは読むこと以上に「書くこと」によって、救われてきた気がするのです。書くといっても、仕事として書いてきた原稿のことではありません。

ただ、自分の思いを書く。紙のノート、SNS、ブログ、スマホのメモ機能。なんでもいいし、どこでもいいから書く。「作品」でも「商品」でもなく、作文や読書感想文でもなく、つまりだれかにほめてもらうためのものではなく、もっと個人的なものとして、ひっそりと書く。

そんな「自分をことばにすること」のくり返しが、ぼくのせわしない毎日に考える時間をもたらし、つまりは自問と自答の機会をもたらし、わずかながらの落ち着きを取り戻させてきたのではないかと思っています。

書いてきたおかげで、「いまの自分」がいる。

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書けば「いいこと」があるよ、とは言えません。
——魔法の話をしているわけではないのですから。

書くのは「たのしい」んだよ、とも言えません。
——面倒くさくて投げ出したい日だって多いのですから。

ただし、書くのは「おもしろい」んだよ、だったら言えそうな気がします。
——たのしいというより、おもしろいのです。

書き続けたら「おもしろい」んだよ、だったら断言したってかまいません。——日記のように書き続けることが、おもしろくさせるのです。

書こう。

自分をことばに、していこう。
休んでもいい、つまずいてもいいから、続けてみよう。
だれの目も気にせず、日記のように続けてみよう。

それを書いた「あのときの自分」が、きっといつか「いまの自分」を救ってくれるのだから。

大人たちが子どもに示してあげられること

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『さみしい夜にはペンを持て』の主人公はタコの少年タコジロー。うみのなか中学校に通う彼は、学校に居場所がありません。そんなとき、ふしぎなヤドカリのおじさんに出会って、おじさんの頭の中の世界に入っていくという小さな冒険物語です。

冒険と言っても、遠くを旅する冒険ではありません。怪獣が出てきたりもしないし、ジャングルで迷ったりもしない。ここで語られる冒険は、今この瞬間から、誰にだってできるものです。

それは「書くこと」によって「自分」という人生最大の謎をとく、冒険なのです。

中学生という時期は、人生のなかでもとくに不安定だと言われています。子どもとして振るまえる時代でもなく、かといって自分ですべて決められる大人でもない。それゆえ「笑っているのに、次の瞬間には消えてしまいたくなる」という子もいるそうです。

そんな心の柔らかい時期に、悪い誘いにのって大切な中学校生活を棒にふったり、自分の弱さを処理できず人を傷つけたり、みずからを傷つけたりする。多くの大人が心当たりのある話でしょう。

だからこそ、大人たちは助けたいと思って、さまざまな言葉をかけます。

「自分を信じてね」
「がんばっていれば夢はかなうよ」

ところが、大人の思いとは裏腹に、子どもたちはそれを「きれいごと」ととらえてしまう。

落ち込む女子高生
『さみしい夜にはペンを持て』には、「自分を信じるためにどうすればいいか」「がんばるためにどうすればいいか」の第一歩となる方法を書いていきました。

そう、人生の岐路にさしかかった彼ら・彼女らに必要なのは、誰かから示される答えではなく、それを自分で見つけることなのです。

もちろん、助けの手を差し伸べることは必要でしょう。それは大前提としながらも、この苦境から自分の足で立ち上がり、自分の足で踏み出していきたいと思っている子どもたちに必要なのは、自分の頭で考えるための具体的な方法だと思います。

子どもたちは沢山の疑問を抱え、悩みを抱えている。大人たちはその答えではなく、「解き方」を示していけばいいのです。

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さみしい夜にはペンを持ての画像1

さみしい夜にはペンを持て(ポプラ社)
『嫌われる勇気』古賀史健が、はじめて13歳に向けて書き下ろした「自分を好きになる」書き方の寓話。SNSで常時だれかとつながっている時代。だからこそ、積極的に「ひとり」の時間をつくろう。他者より先に、自分との人間関係を築く方法を紹介。