親の過干渉が原因? 現代の子どもが「生きづらさ」を抱える背景

中野日出美

不登校や自傷行為など、現代の子どもたちが抱える問題の背景には何があるのでしょうか? 子どもたちが健康に、幸せに生きていくためには「強い心」が必要です。何が起きても簡単には折れない心を育むために、親が伸ばしてあげるべき6つの力を、中野日出美さんが解説します。

※本稿は中野日出美著『自信がない・考えるのが苦手・傷つきやすい 「心が強い子」に育つ100の質問』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

中野日出美(なかの・ひでみ)
NPО法人 日本心理コミュニケーション協会 代表。公認心理師。心理セラピスト。絵本作家。親子関係の改善を図るセラピーの専門家。

今、子どもたちの周りで何が起こっているのか?

現代の日本に生まれた子どもたちは、経済的に恵まれ、一定レベルの教育も受けられ、ほとんどの子が明日、食べるものに困らない生活を送っています。

その子が本気で望めば、努力次第ではなりたいものになれる―。

そんな幸福な時代に生まれたラッキーな子たちとも言えます。

ところが、その反面、いとも簡単に命を絶つ子や自分自身を傷つけずにはいられない子もたくさんいます。

また、不登校や引きこもりなどの社会的不適応や過敏性腸症候群、摂食障害、身体表現性障害など、心身の病気を抱える子どもも増えています。

豊かで平和な時代に生まれながらも、とても精神的に脆弱な子どもたち―。

その背景には、いったい何があるのでしょうか? 少子化が進み、親たちはわが子に愛情や関心を十分に注げるようになりました。

これは素晴らしいことではありますが、過度になると、親の過保護や過干渉、過度の期待という形になって表れます。


また、学歴社会で育った親たちが精神的に熟していないまま親になってしまい、親として十分に機能できていないという問題もありそうです。

中には、逆に親自身の自己実現を優先し、子どもへの愛情や世話が十分でないケースもあります。
過保護や過干渉、過度な期待、もしくはネグレクトの中で育った子どもたちは、ちょっとしたことで過度に傷つき、なかなか立ち直れない、弱い子になる可能性や、自分の心や身体を大切にできない子になる可能性があります。

過度に自分を愛しすぎて、周囲との摩擦を生んだり、自己肯定感の低さから、無意識に自分を傷つけるような人間関係を築いたりするかもしれません。

いずれにしても、小さなことで心がポッキリと折れやすい子になってしまう恐れがあるということなのです。

いくら偏差値の高い大学を卒業して、医師や弁護士、起業家になっても、心が弱いと社会の荒波の中で自分らしい人生の航海を続けることはできません。実際に社会的ステータスが高い人たちが、心や身体のバランスを崩し、うつ病や適応障害、パニック障害などの病気になるケースも驚くほど増えています。

また、心理セラピストという私の職業上、職場や家庭での人間関係がうまくいかず、生きづらさを感じている人の割合が激増していることもひしひしと感じています。


そう、こんな状況だからこそ、自分らしい人生を、喜びを感じながら生き抜くためにも、学歴や資格、教養だけではなく、「強い心」を育む必要があるのです。

人生は、そもそもがでこぼこ道です。子どものころは、子どもが歩く道を親が前もって整備してあげられますが、大人になってからは、自分の力で歩いていくしかありません。

人生のでこぼこ道には、たくさんの穴もあります。転んだり、穴に落ちたりしながら、いち早く起き上がり、穴から這い出して、また歩き始める―。

そんな「心の強さ」、つまり「レジリエンス(精神的回復力)」こそを育む必要があるのです。