出生前診断を考えるときに大切なこと…診断の種類と結果の捉え方
出産前に胎児の異常を検査する「出生前診断」。受けるべきかどうか、答えが出せずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。後悔のない選択のために、 診断の詳しい種類、そして検査を検討する上で大切なことを解説します。
※本稿は重見 大介著『病院では聞けない最新情報まで全カバー! 妊娠・出産がぜんぶわかる本』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集したものです
重見大介
産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。株式会社Kids Public 産婦人科オンライン代表。大学病院の産婦人科で臨床を経験したのち、「女性の健康 x社会課題」へのアプローチを活動の軸として、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りや啓発活動、臨床研究、性教育などに従事。また、SNSやネットニュース等で医療情報を積極的に発信している。
出生前診断を検討するときに
近年では、出産前に胎児の異常があるかどうかを検査する「出生前診断」が普及しつつあります。
もちろん、お腹の子に何か異常がないかどうか、心配になる気持ちを持つのは親として不思議なことではありませんし、そのために検査を活用することは有益なことです。ただ、産婦人科医として「出生前診断を考える際に必ず考えてほしいこと、大切なこと」をこの場でお伝えしたいと思います。
赤ちゃんの先天性疾患
まず前提として覚えておいていただきたいことは、「大小含めて、生まれた時点でなんらかの疾患を持っている赤ちゃんは3〜5%程度いる」ということです。これを聞いて、多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれかもしれませんが、20〜30人に1人と考えれば「滅多にない」というわけではないんだな、という印象かと思います。
人の細胞の中には、それぞれ遺伝情報を持った染色体があります。この染色体に異常(過不足や変異)があると生じる代表的な先天性疾患(生まれつきの疾患)が「ダウン症候群(21トリソミ―)」です。染色体異常は、先天性疾患の原因の4分の1程度を占めると考えられています。
なお、染色体異常による先天性疾患には、ほかに18トリソミー* 、13トリソミー* などがあります。実際には、染色体異常による先天性疾患のうちダウン症候群がもっとも多く、8割程度を占めています。
*18トリソミー
18番染色体に原因がある先天性疾患です。発生割合は3,500~8,500人に1人程度で、女児に多いのが特徴です。全身に複数の合併症を持つ場合も多くあります。約半数は生後1週間以内に亡くなり、1年以上生存できる赤ちゃんは10%未満です。
*13トリソミー
13番染色体に原因がある先天性疾患です。発生割合は5,000~12,000人に1人程度で、全身に複数の合併症を持つ場合が多いです。生後1ヶ月以内に約8割が亡くなり、1年以上生存できる赤ちゃんは10%未満です。