出生前診断を考えるときに大切なこと…診断の種類と結果の捉え方

重見大介
2023.10.06 12:46 2023.10.06 11:50

出生前診断について

母子手帳 マタニティ エコー

次に、出生前診断の説明をしていきます。

出生前診断とは、胎児がなんらかの疾患を持っているかどうか、検査をして診断するための方法です。ここで大事なのは、出生前診断の目的が「異常があるかどうかで中絶するかを決めるため」だけではないということです。あらかじめ出生前に生まれつきの異常を把握しておくことで「生まれた赤ちゃんがその瞬間から、より育ちやすい環境の準備を進めるため」というのも大切な目的です。

出生前診断には主に3つの検査法があり、超音波検査などの画像を用いる方法と遺伝学的検査があります。遺伝学的検査は、子宮や胎児に負担のある検査(侵襲的検査)と負担のない検査(非侵襲的検査)に分けられます。それぞれの検査法でメリットや特徴が異なります。

なお、重要なこととして「出生前診断ですべての先天性疾患がわかるわけではない」ということもぜひ覚えておいてください。出生前診断では染色体の異常について評価することができますが、先天性疾患には染色体異常によるものではない疾患も多くあります。例えば先天性心疾患(生まれつきの心臓の病気)は染色体異常がなくても起こる場合があり、これは出生前診断ではわからない、ということになります。

検査法についてもうひとつ大事なことは、「診断を確定させるための検査かどうか」です。大きく「非確定的検査」と「確定的検査」に分けられます。

【非確定的検査】
妊婦さん自身への負担はほとんどありませんが、この検査だけでは異常の有無を確定できない検査です。「先天性疾患の疑いあり」かどうかを評価します。

【確定的検査】
非確定的検査の結果、「異常がある可能性が通常より高い」と判断された場合に、診断を確定させるために行うものです。ただし、この方法は母児への負担(破水や出血、流産のリスク)が避けられません。

出生前診断の種類

◆画像検査
代表例:超音波検査(NT*など)
感度:100%はわからない(非確定的検査)
安全性:母児に安全(非侵襲*的)
実施時期:11~13週
費用:10,000~20,000円 保険適応なし(全額自己負担)

◆遺伝学的検査(侵襲なし)
代表例:母体血マーカー検査(クアトロ検査など) 母体血胎児染色体検査(NIPT)
感度:100%はわからない(非確定的検査)
安全性:母児に安全(非侵襲的)
実施時期:クアトロ検査は15~18週頃 NIPTは10~16週頃
費用:クアトロ検査は20,000~30,000円 NIPTは200,000円前後 いずれも保険適応なし(全額自己負担)

◆遺伝学的検査(侵襲あり)
代表例:絨毛検査、羊水検査
感度:高い確率でわかる(確定的検査)
安全性:流産率が約0.3~1%
実施時期:絨毛検査は11~15週 羊水検査は15週以降
費用:100,000~200,000円程度 保険適応なし(全額自己負担)

*NT:Nuchal Translucency(胎児の首の後ろの厚さ)
*侵襲:胎児や子宮へ検査時の負担がかかること

N I P T について

最後に、母体血胎児染色体検査(NIPT)について補足しておきます。この検査は、妊婦さんの血液を採取して検査する方法で、日本では2013年から導入されました。これまでの検査(画像検査やクアトロ検査)とNIPTの決定的な違いは「血液検査という非常に負担の少ない方法で、胎児の染色体異常の評価を100%にかなり近い精度で行える」という点です。

一方で、NIPTには注意点もあります。まず、NIPTで検出できるのはダウン症候群(21トリソミ―)、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の3つだけです。次に、「NIPTは異常がないことを高精度に評価するもの」ということです。つまり、「異常の疑いあり」という結果が出た場合には、確定的検査(羊水検査など)を受ける必要があります。

出生前診断については、早めにかかりつけ医と相談し、ぜひしっかりと話を聞いた上で検討するようにしてくださいね。

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