高知在住の絵本作家・柴田ケイコさんが感じた「地方での子育て」のメリット
『パンどろぼう』『パンダのおさじ』などで大人気の絵本作家、柴田ケイコさんは、2人のお子さんを持つお母さんでもあります。自然豊かな高知での子育てで感じた事や、「トトロに出てくるような家に住んでいた」というご自身の子ども時代の思い出などを語っていただきました。
柴田ケイコ(イラストレーター・絵本作家)
高知県在住 2002年よりフリーイラストレーター 2016年よりイラストレーター兼絵本作家 個展や企画展にて雑貨制作も行う。
大人から指示されるのが苦手だった
――どのような子ども時代を過ごされていましたか?
絵を描くのはもちろん好きでしたが、外で遊ぶのも大好きでした。私の子ども時代は、まだ家庭用のゲームがなかったので、公園や裏山が遊び場だったんです。
今の時代だったら絶対駄目と言われるような、危なっかしい遊びばかりしていました。遊具をやってはいけない使い方で遊んだり……今思えばよく怪我をしなかったなと思います。
――物語の創作も、そのころからお好きだったんでしょうか?
あまり本を読む方ではなくて、読書感想文なども大嫌いだったんです。ただ、物語を作ることは好きで、適当な嘘ばかり書いた作文を提出したこともあります。ちゃんと書くより、そっちの方が楽しくて。(笑)
――自由な創作がお好きだったんですね。
絵を描くにしても、「こうやって描きなさい」と指示されるのは苦手でしたね。写生会で工場を描きに行ったのに、その近くの海の景色を描いたり……反発的な子どもだったと思います。(笑)
とにかく、「ああしろこうしろ」と指示されるのが苦手だったのですが、もしかしたらその性格が今の仕事にも出ているかもしれないです。
絵本やイラストなどのアートって、ギシギシに詰め込まれた制約の中では生まれないと思ってるんです。余白がないと駄目だと思うんですよね。そういう感覚は、もしかしたら子ども時代に育っていたのかもしれないです。
「トトロのような家」に住んでいた子ども時代
――そんな幼少期の柴田さんに対して、ご両親はどのように関わられていましたか?
放任主義だったので、何も怒らず……というか、ほとんどほったらしでした。どこに遊びに行こうが、何しようが自由でしたね。
あまり勉強をしなかったんですけど、成績が悪くても「勉強しなかったら結果出ないのは当たり前、自業自得」といった感じでした。
――ご家族との印象的な思い出があればぜひ教えて下さい。
実は子供のころ、『となりのトトロ』にでてくる家を、もっと古くしたような平屋に住んでいたんです。当時、お風呂を沸かすのはガスが主流だったのですが、我が家では薪で沸かしていました。
父がこだわりのある人で、「あえての薪」だったみたいで。お風呂は父と母の手作りだったので、お湯が漏れるたびに丁寧に修繕して使っていましたね。
思春期の頃は恥ずかしかったのですが、小学生ぐらいまでは、私もトトロのメイちゃんみたいに楽しんで住んでいたのを覚えています。 今考えたらいい経験ですね。
子どもにはたくさん失敗して欲しい
――ご自身の子育てのスタンスは、ご両親の子育てと似ていると思いますか?
全くそんなことはなく、子どもが小さい頃は、けっこう口を出すお母さんだったと思います。
上の子はのんびりしたタイプ、下の子は自由人で、急いでいる時に「早くして!」といっても、全然焦らないんですよね。こちらとしては焦ってほしいんですけど。(笑)
今はもう2人とも高校生なので、自分自身の考えに任せて自由にしてもらっています。
――高知在住とのことで、高知での子育ての良さがあったら是非お聞きしたいです。
まさしく子育てには良い環境だと思っています。
夜にカブトムシを取りに行ったり、コスモスが咲く場所へ散歩へ行ったり……自然と触れ合いながら子育てができるのはすごく良かったですね。
子どもが中学生くらいになるまで、夏は家族でキャンプに出掛けて、川で遊んだりもしていました。
山や川といった自然と、あとは公園くらいしか遊び場がなかったのですが、心は豊かになったんじゃないでしょうか。
高知の自然にはいい経験をさせてもらったなと思います。
――自然の中で、子供は何もなくても自由に遊びを作っていきますよね。
そうですね、何もないところから遊びを考えるというのは、本当にいい経験だと思います。
自分自身も高知で生まれ育ったのですが、遊びの中で「こうしたらもっと面白くなりそう」といった工夫をする知恵はついたかなと思います。
危なっかしいことが好きだったので、今思えば危険もありましたが。
自分の子がやっていたら、全力で止めちゃうようなこともやっていました。
――子どもにも自由に遊ばせてあげたい半面、親としては危険なことは止めたくなりますよね。その匙加減に難しさを感じます。
本当に命の危険になることはやめてほしいですよね。ただ、怪我して学ぶことも多いと思うんで、失敗は経験してほしいなと思ってます。
小学生になると、未就学児の頃と違い親の目が届かなくなることが多いので、登下校で事故がないよう交通ルールはしっかりと教えないといけないですよね。
ただ、遊びの中で、ちょっと無茶をしてケガをしたくらいだったら、心配しすぎたり怒ったりするのではなく、見守るぐらいのスタンスでちょうどいいのではないかと思います。
成功体験より失敗体験をたくさん積んで欲しいというのが、私にとっての理想ですね。
(取材・文:nobico編集部)
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