「13歳までの親との関係」が子どもの自己肯定感を決める
自己肯定感に満たされていると、自分のことを大切にできるだけでなく、他者のことも受け容れることができます。人間関係を豊かにするためにも重要な力なのです。親子関係が自己肯定感に及ぼす影響、そして、子どもの自己肯定感を高めるために効果的な3つの質問を、中野日出美さんが紹介します。
※本稿は中野日出美著『自信がない・考えるのが苦手・傷つきやすい 「心が強い子」に育つ100の質問』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。
中野日出美(なかの・ひでみ)
NPО法人 日本心理コミュニケーション協会 代表。公認心理師。心理セラピスト。絵本作家。親子関係の改善を図るセラピーの専門家。
なぜ、自己肯定感が必要なの?
最近、よく耳にする「自己肯定感」―。これは、自分の悪い点や反省すべきところをいっさい気にせず、自信過剰になるということではありません。
基本的には、自分の存在価値そのものを肯定する力です。
それがあるからこそ、素直に自分の悪い点を受け入れ、反省することができます。たとえ、誰かにひどいことを言われたとしても、自分自身がそうではないと知っていれば傷つくこともありません。
その一方で一見、自信満々に思える人が、じつは自己肯定感の低さから、過剰に自信があるように見せかけているということはよくあります。そして、自分以外の人を批判することによって、自分を上にもち上げるというのもよくある話です。
本当の意味で自己肯定感が高い人は、自分だけではなく他人も認めることができます。いわば、「I am OK,You are OK」の立場でいられる人です。
このような人は、基本的に乳幼児期から幼少期にかけて、親との間に特別な心の絆、つまり安定した「愛着」が形成された人とも言えます。
親との間に安定した愛着が形成されると、子どもは親を「安全基地」とし、果敢に新しい世界でチャレンジをするようになります。
そして何か傷つくようなことが起こったり、疲れたりしたときでも、安全基地に戻り、充電することで、再びチャンレンジを始めることができるのです。
しかし、親との間に安定した愛着が形成されない場合には、安全基地がありません。そのため、外の世界でチャレンジすることを恐れたり、傷ついた体験から、なかなか立ち直れないということが起こります。
いずれにしても、赤ん坊から子ども時代に、親から適切な愛情と関心を傾けられると、自然と「無条件に自分は大切な存在である」という感覚が生まれます。
逆に、親からの愛情や関心、反応が不十分であると、「自分には大した価値がない。大切な存在ではない」という感覚が生まれます。
これが基本的な自己肯定感の正体です。
一般的な愛着理論では、およそ1歳半から2歳くらいまでの間に基本的な愛着のスタイルが決まるとされています。しかし、私は25年間におよぶ、潜在意識を扱う心理セラピストの活動の中で、愛着スタイルというものは、影響力こそ違えども、2歳から12、13歳までの間の親との関係性や親の生き方に影響を受けると確信しています。
自己肯定感が高いと、自分だけではなく他者の存在価値も認められるので、他者とむやみに争ったり、愛情や承認の奪い合いをする必要がありません。
また、自分自身も他者も、大切にすることができます。自分の心や身体を大切に守りますし、他者を傷つけることもありません。
だから、将来、社会に出ても、家庭や仕事での人間関係はとても親密で温かいものになり、他者からの協力も得やすく、成功しやすい人間になるのです。
逆に、自己肯定感が低いと、自分も他者も大切にすることができず、愛情や承認の奪い合いをしてしまいます。知らず知らずのうちに、自分を傷つけるような人とつき合うことも多くあります。
自信がないので、初めから挑戦しない。ちょっとしたことですぐ傷つき、立ち直れない。場合によっては、無意識に心や身体の病気になるような行動を選んでしまいます。自傷行為や摂食障害、非行行動、犯罪、異性との共依存関係など、自己肯定感の低さが招く問題は多々あります。
本稿では、質問に対する答えを求めるうちに、自然と自分を愛し、大切にするようになる自己肯定感の種をまいていくことにしましょう。