やさしすぎて心配…「自己主張が苦手な子」の親がやりがちな間違ったサポート
子どもが人にゆずってばかりいたり、自分の意見を言えなかったりすると、親としては不安になるかもしれません。
でも、それはわが子の長所。子どもの個性を大事にしながら、必要な力を伸ばしていきましょう。
カウンセラーの三崎美津江さんに、やさしすぎる子への親のかかわり方を教えていただきました。
※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年4月号から一部抜粋・編集したものです。
子どもがやさしすぎて、 心配なあなたへ
やさしい子は友だちとおだやかに遊ぶことができるので、けんかやトラブルになることはあまりありません。
ただ、やさしいがゆえに、いつも主張の強い子に押し切られてしまったり、友だちにゆずったりしていることがよくあります。そんな姿を見ると、親はもどかしく感じたり、気が弱くていじめられないかと心配になったりするかもしれません。
やさしい子のまま成長してほしいけれど、もっと自己主張もできるようになってもらいたい。親はそう思うでしょう。
ここでは、やさしい子がもっと自分を出せるようになるための、親としての関わり方、サポートの方法を考えてみたいと思います。
親がやりがちな間違った関わり方&サポート
次のような関わりは、子どもの心を委縮させ、自信を奪ってしまいます。
・一方的に指示をする
・ なぜやらないのか、できないのかを問い詰める
・ 他の子と比べる
子どもが自分の気持ちをうまく出せていない場面を見ると、つい親は子どもにいろいろと言いたくなってしまいます。
「〜って言いなさい」と指示したり、「どうしてはっきり言わないの!」と問い詰めたり、「〇〇ちゃんのように言えばいいのよ」と他の子と比べたりします。
子どものためによかれと思ってしていることが、かえって逆効果になっていることに気づかない親が多くいます。
親からのこうした指摘は、子どもにとってはダメ出しをされているように感じます。だんだんと子どもは「自分はダメな子だ」と思うようになって心が委縮し、よけいに自分を出せなくなってしまうのです。
さらに親の考えを押しつけられてばかりいる子は自信をなくして、大人になっても生きづらさを抱えてしまうこともあります。
子どもの長所をつぶさず、自分を出せるようにするために
子どもが自分の思いを伝えられるように、次のことを意識してみましょう。
1.子どもの話を聞き、気持ちを受け止める
やさしい子がもっと自分を出せるようになるには、どのような関わりが必要なのでしょうか。まずは、家庭の中で、子どもが自分の気持ちを素直に出せるようにしましょう。
親の具体的な関わりとしては、子どもの話を聞くことが基本です。子どもが話しかけてきたら、なるべく耳を傾けます。自分からあまり話してこない子には、「それおもしろそうだね」「このあとは何をしようか?」などと声をかけて、話しやすいきっかけをつくってみてください。
そして、子どもの様子をよく見ましょう。眉間にしわを寄せている、うつむいて目を合わせない、口を固く結んでいるなど、何か言いたげなときはありませんか。やさしい子はそうやって気持ちを心の奥に押し込めています。そんな様子のときに気持ちを聞いてあげることが、とくに大切です。
子どもが気持ちを話してくれたら、否定せずに受けとめるようにしましょう。とはいえ、その場面で親も子どもにわかってもらわないといけないことがある場合もあります。そんなときは、子どもの気持ちをしっかりと受けとめたあとで、おだやかに伝えるようにしてください。
2.ダメな部分を指摘するより、自己肯定感を高める関りを
どんな気持ちを話しても受けいれてもらえる体験というのは、子どもにとってとても大切です。その体験が、「自分は大切な存在だ」「ありのままの自分でいい」という自己肯定感につながります。
この自己肯定感は、生きていく上でのさまざまな資質の土台になります。素直な自己表現の土台になるだけでなく、自発性の土台にもなったり、チャレンジする勇気の土台にもなったりします。子どもが自己主張できていない場面を指摘するよりも、家庭で自己肯定感を育ててあげるほうがはるかに重要です。
やさしくて内気な子が外で自分をうまく出せないことはよくあります。でも、家庭で素直に自分の気持ちを出せていれば大丈夫。そのうち外でも徐々に自分を出せるようになっていきます。外で気になる場面があっても見守っていきましょう。
ただし、自分の身を守るための自己表現は別です。不快なことは断る、困ったときには助けを求める自己表現は小さいうちから必要です。「いやだからやめて」「わからないから教えて」「できないから手伝って」などの表現は、その場で教えてあげるようにしましょう。
しなやかに生きていける強さを育もう
やさしい子の中には、もともと自分を出すのが苦手という子もいます。自己表現にかぎらず、人は誰しも苦手なことや弱みがあるものです。運動が苦手だったり、手先が器用でなかったり、整理整頓がうまくできなかったり。親だって苦手なことや弱みもありますよね。
あなた自身の弱みも見せて
苦手なことを克服させようとすることだけが正解ではありません。苦手なことがあっても柔軟にやりすごしたり、苦手な部分は誰かに助けてもらったりしてもよいのです。そういうこともできるほうが、しなやかに生きていけます。
また、自分の苦手なこととうまく折り合いをつけられる子は、相手の苦手なことも受けいれて助け合っていける子になるでしょう。
時には親自身も苦手なことや弱みを子どもに見せて、それでもなんとかなる、という姿を見せてあげるのもよいのではないでしょうか。
わが子のもつ力を信じる
やさしい子は人の気持ちがわかるので、人生でたくさんの人とよい関係を築いていくでしょう。やさしい子のおだやかなふるまいと雰囲気は、一緒にいる人たちにやすらぎや安心感を与えるでしょう。
やさしい子のもつ力を信じて、のびやかに育っていくのをあせらず見守ってあげてください。