激動の中東、ウクライナ…なぜ争う? 親が子どもの疑問に答えるための「地政学」

監修:出口治明
2024.06.24 16:56 2023.11.06 11:50

地球儀を眺める女の子

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ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナとイスラエルの緊張状態など、世界情勢がますます混迷してきています。しかし子どもの視点からすれば、国同士が争う理由がなかなか理解できませんし、そもそも大人にとっても難解な部分も少なくありません。

これらの世界情勢を読み解くには、話題の学問「地政学」が欠かせません。地政学とは、「地理」をもとに、その国の歴史や政治的課題、国際問題を考える学問です。島国なのか、内陸国なのか、大国なのか、その国の地理的な条件によって生き残る戦略は異なってきます。

親はもちろん子どもにも知っておいてほしい、地政学の基本的な考え方や世界各国のふるまいを、小学生にもわかりやすく解説します。


※本稿は、藤子・F・不二雄・まんが 出口治明・監修『ドラえもん社会ワールド 世界がわかる地政学』(小学館)から一部抜粋・編集したものです。

ランドパワーとシーパワーそれぞれの発展戦略とは?

ランドパワーとシーパワー

世界の国々は、ざっくり分けると、陸派の「大陸国家」と海派の「海洋国家」のふたつに分けられる。

大陸国家は内陸部にあって国境がほぼ陸にある国。地政学ではこのような国のもつ力を「ランドパワー」というよ。ロシア、中国、ドイツなどが代表的。ロシアは、領土の一部が北極海に面するけれど、北極海沿いの港はこおってほぼ使えないから、海洋国家とはいえない。ランドパワーの国は、鉄道や道路が発達していることが多いから陸上輸送にすぐれているよ。また、多くの国と国境を接しているため領土を侵略される危険性が高い。侵略されないためにも領土を広げたいと、せめたりせめられたりをくり返してきた歴史があるんだ。

海洋国家は、ほとんどの国境が海に面している国で、地政学ではこのような国のもつ力を「シーパワー」という。日本、アメリカ、イギリスなどだね。港がたくさんあって海上輸送が得意だから、海外との貿易がさかん。国境が海に守られているともいえるから、他の国から侵略される危険性は低い。海に拠点(活動の足場)を置くことで、侵略を防ぐ作戦をとっているよ。

ランドパワーとシーパワーは、国ごとの「得意・不得意」と考えるとわかりやすいかもね。

ランドパワーからシーパワーになった日本とアメリカ

大前提として「国はひっこせない」。

でも、政策によってランドパワーからシーパワーに変わることはあるよ。代表的なのは、日本とアメリカ。

日本は古代から、国内に意識を向ける国。鎌倉時代に元(モンゴル)がせめてきた「元寇」や、戦国時代に豊臣秀吉がしかけた「朝鮮出兵」以外、外国と戦うことはほぼなかった。江戸時代には「鎖国」をして外国との接触を断っていた。ずっと内向きのランドパワーだったんだ。

でも、明治時代に入ると海外文化を受け入れるようになり、昭和に入ってアメリカと太平洋をめぐって戦ったり中国に満州国をつくったりして、ランドパワーとシーパワーの両方を得ようとしたけど失敗に終わる。第二次世界大戦後はシーパワーの国としてがんばっていくよ。日本はランド→ランド&シー→シーと変わっていくんだ。

アメリカは、東から西に領土を拡大したランドパワーの国。でも、東西の海岸線が長いから地政学的には「巨大な島」で、シーパワーになったよ。

世界には、ランドパワーの時代とシーパワーの時代が交互にやってきた

世界の歴史をふり返ると、ランドパワーが強い時代とシーパワーが強い時代が交互にやってきたことがわかる。

15世紀までは、自分の国の領土を広げたいというランドパワーが優勢。オセロの石をひっくりかえすみたいに、次々と陣地を増やしていく時代だったんだ。アジアではモンゴル帝国、ヨーロッパではオスマン帝国こという大きな国が誕生したよ。15世紀になると「大航海時代」に入って、シーパワーが強くなる。ヨーロッパの人たちがアジアやアメリカに向けて船出していくよ。

19世紀には、陸上輸送が発達して、鉄道がさかんにつくられるランドパワーの時代になる。イギリスでは蒸気機関車が走り、リバプール&マンチェスター鉄道ができ、ロシアではシベリア鉄道が建設された。そして20世紀後半になると、アメリカ・日本というシーパワーの国が貿易などで力をつけるようになったんだ。

21世紀は世界の力関係がどう動いていくか、しっかり見ておきたいね。

出口治明

出口治明

立命館アジア太平洋大学学長