子どもを優しい子に育てるには?親子関係が「性格形成」に与える影響

小野寺敦子

「うちの子はやんちゃで」「恥ずかしがり屋で」……と子どもの性格に困っている方も多いでしょう。ですがそもそも、性格はどのようにして決まるのでしょうか? 子どもの性格形成に関する疑問に、目白大学教授の小野寺敦子さんが答えます。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年4月号から一部抜粋・編集したものです。

「性格」って何だろう

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もし誰かに、「お子さんはどんな性格ですか?」と聞かれたら、どのように答えますか。「明るくて誰とでも仲良くできるやさしい性格の子です」と胸を張って言える方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。

じつは、「恥ずかしがり屋」「落ち着きがない」「気弱」といった性格でどうしたらよいか困っている方が大半なのではないでしょうか。

そもそも、性格とはどのようなものかを考えてみましょう。心理学者のオルポートは、「性格とは個人の内にあって、個人に特徴的な行動や思考を決定する精神身体システムの力動的な構造」と定義しています。

この定義から、性格は持って生まれた生物学的要因と環境的要因が相互に影響しあって形成されていくと理解できます。


しかし、性格を客観的に知ることはなかなか難しいので、性格テストを試してみるというのも1つの方法です。

たとえば、よく使われている性格テストに「ビッグファイブ」があります。これは、人間には共通する5つの性格特性があり、それら5つの特性をどの程度もっているかを測定するテストです。

5つの特性の特徴は、次のようなものです。お子さん、そしてあなたご自身は、次の5つの性格特性のうち、どの特性を強くもっていらっしゃいますか?

性格形成に影響を与えているものは何だろう?

性格は生物学的要因と環境的要因が相互に影響し合って形成されていくと述べました。そこで、両方の要因についてみてみましょう。

・生物学的要因……生後まもない赤ちゃんにも個性がある
小児科医のトマスとチェスは、生後まもない赤ちゃんにも個性があり、その個性は気質によって分けられるとしています。

この気質は、活動性水準(行動が活発かどうか)、周期性(一定の時間に食べて寝る)、敏感性(音や光への敏感さ)、気分の質(ニコニコしていることが多いか、よく泣くか)などの9カテゴリーによって評価され、その9カテゴリーの組み合わせから、①気難しい子(環境の変化に敏感で手がかかる子ども)、②扱いやすい子(反応が穏やかで環境変化に適応し慣れるのが早い子も)、③出だしの遅い子(新しい環境に慣れるのに時間がかかる子ども)の3タイプに分類できるとしています。

また、きょうだいであってもそれぞれが違う気質を持っているので、親は子どもの個性をよく理解し、それに合わせた関わり方をすることが大切です。

なぜなら、上の子がやんちゃで気難しいタイプだと、親はいつもガミガミ怒ってしまいますが、その両親の怒り方が、穏やかで「扱いやすい」下の子の心を傷つけているかもしれないからです。


・環境的要因.…..きょうだいへの親の態度も影響する
性格形成には子どもが育つ環境、たとえば親の養育態度が影響を与えています。今の時代は少子化で、一人っ子や二人きょうだいが多いのですが、そうした家族内で子どもがかれた環境が性格に影響を与えていると考えられます。

では一人っ子・長男/長女・次男/次女・真ん中の子どもの性格特性についてみてみましょう。

・一人っ子……マイペース。おっとりしている。引っ込み思案。自己肯定感が強い。
・二人きょうだい……
【長男/長女】口数が少なく、人の話の聞き手に回ることが多い。用心深い。人の迷惑をよく考えて行動する。我慢強い。
【次男/次女】おしゃべりで、人にほめられると調子に乗る。甘え上手で人懐っこい。
・三人きょうだいの真ん中……おっちょこちょい。自己アピールをする。頑張り屋。こうした性格特性は、すべてのきょうだい関係にあてはまるわけではありません。

ですが、きょうだいへの親の対応が、子どもの性格形成にも影響を与えていることを覚えておいていただけたらと思います。

児童期に大切にすべきことは?

児童期の性格形成では、乳幼児期とは違った対応が必要となってきます。

・勤勉をしっかり身につけよ
心理学者のエリクソンは、人の一生を8段階に区切り、各段階で達成しておくべき発達課題を提起しています。その中で、小学生の年齢にあたる児童期の発達課題は「勤勉対劣等感」です。

勤勉というのは、自分の好きなことを見つけて、まじめにそれに取り組んでいくという意味ですが、それに対し劣等感とは、自分は人よりも劣っているという感情です。

エリクソンは、児童期に勤勉をしっかり身につけられないと、劣等感が子どもの中に強くなてしまい、そのまま成長していくと何事にも自信のもてない大人、自己肯定感の低い大人になってしまうと説明しています。

つまり「何をやっても自分ってダメな人間だ」という自信のなさは、人からは「暗い性格の人」とみられてしまう可能性があるのです。


・ポジティブな気持ちを育ててあげて
では、どうすれば子どもに強い劣等感を抱かせないようにできるのでしょうか。小学校4年生ぐらいになると、自分の性格の良い点、悪い点客観的に人に話すことができるようになります。

時々、クラスで自己紹介をするときに、「自分には得意なことが何もない」「○○な性格を直したい」と発言するお子さんがいますが、とても残念なことだと思います。

日本人は、まじめな国民性であるがゆえに、できることよりもできないことをがんばって直していくことが望ましいと考える親や先生方が多いのですが、それが子どもの劣等感の形成にも影響を与えているのかもしれません。

子どもに強い劣等感をもたせないためには、小学生の時期に「友だちは運動が得意だけど、自分は絵が好きだし、絵を描いていると楽しい」といったポジティブな気持ちをたくさん育ててあげましょう。

・ほめられて活発な性格へ
そのためには、どんな小さなことでもよいので、お子さんのがんばっていること、上手にできたことに気づいたらほめてあげるように心がけましょう。

ほめられた経験が増えてくると、肯定的に自分をとらえられるようになり、積極的に物事に取り組もうとする活発な性格の子どもに成長していくはずです。

性格にまつわるQ&A

性格について、一般的によく言われる以下の2つは、本当なのでしょうか!?

・性格は変えられるのでしょうか?
かつて性格は一生の間、変えることはできないと考えられてきました。これはおそらく平均寿命が短かった時代のことで、近年では、”性格は変えることができる”と考えられています。

海外の研究では、先に説明した気質という生まれつきの生物学的要因は変化しないけれども、ビッグファイブに掲げた性格特性は、成長とともに変化する傾向があることが明らかにされています。

たとえば誠実性や協調性は、成長するにしたがって高くなり、神経症傾向は低下するとのことです。

この結果からわかるように、性格は生まれ持った気質に対して、親がどのようにかかわるかによって変えていくことができるのだと思います。


・血液型と性格とは関係していますか?
人が集まったとき、血液型の話が出るとその場が盛り上がります。世界の中で日本人ほど血液型と性格とを結びつけて考える人たちはいないそうです。

「O型は小さなことにこだわらない・おおらか・おおざっぱ」「A型は几帳面でまじめ・我慢強い」「B型はマイペース・飽きっぽい」「AB型はクール・傷つきやすい」というように血液型を尋ねて相手がどんな性格の人かを知ろうとするわけです。

ところが日本人では、A型の人が約40%、O型は約30%、B型は約20%、AB型は約10%の割合になっており、A型とO型の人を合わせたら約7割に達してしまいます。

したがって血液型と性格とを結びつけて考えることには無理があると言えるでしょう。

子どもが健やかに育つために

親ならば皆、心やさしい、誰からも愛される子どもであってほしいと願って子育てをしています。そして、そういう子どもに育てるにはどうすればよいのかについて悩みながら生活しています。その想いから、わがままばかり言うわが子をひどく叱ってしまい、怒りすぎたことに後悔するときもあるかもしれません。

ですが、”あなたは私の大切な宝物で大好きだよ!”という想いをもって子どもに接していれば、その想いは子どもに伝わっていくはずです。その想いを大切にしながら、親が穏やかな気持ちでかかわっていけば、お子さんもスクスクと成長していけると思います。