子連れ非難がこわい…緊張しながら外出するママへの、世間のリアルな反応は?

竹田こもちこんぶ

新幹線の中で泣く息子に向けられた、他のお客さんの「うっせぇなぁ!」の一言。
それ以来、竹田こもちこんぶさんは子連れでの外出が怖くなってしまったそうです。

そんな竹田さんを驚かせた、外出先での思いがけない出来事とは?
芸人であり、5人の男児の母でもある、竹田こもちこんぶさんの体験談をご紹介します。

※本稿は、竹田こもちこんぶ著『皆様、本日も家事育児お疲れ様です。』(KADOKAWA)から、一部抜粋・編集したものです。

子連れで出かけるのが怖くなった出来事

いつどこで非難されるか分からない子どもという爆弾を抱えて外出する我々母。

病院での待ち時間、電車やバスの中、スーパーやコンビニ、レストランなどあらゆる公共の場に、子どもという起爆剤を連れて行く親たちには避けて通れない気苦労がある。

今や4人の子を連れ回すようになった百戦錬磨の私は、いちいちまともに爆弾を食らっていては子どもなんか育てられないと気がつき、爆弾だとしても爆竹程度のダメージしか負わなくなった。

しかしそんな私も、かつて1人目の子育ての時にまともに被弾して、しばらく子連れで出かけるのが怖くなったことがある。


あれは2歳の長男を連れて私の母と新幹線で旅行に行った時のこと。

帰りの新幹線で先に最寄駅に着いたばぁばが降りた際に、息子が寂しくてぐずぐずと泣き出したことがあった。

私がなだめるもどうにもだめで、静かな車内に息子の泣き声だけが響き焦っていると、

「ちっ……。うっせぇなぁ!」

と斜め後ろに座っていたおじさんが怒りをこめた低い声を投げかけてきたのだ。

その瞬間、私は鈍器で頭を殴られたような痛みを覚え凍りついた。

あるとき、外出先で…

それ以来、人の視線や言葉がことごとく子連れ非難に思えて、どこへ行くにもビクビクしていた。

そんなある日、皮膚科に行きなるべく待ち時間が少ないようにと、受付時間前から並んでいると、今度はあと少しで受付開始というところで息子がぐずり出した。

「おい、あんた」

自前の折りたたみ椅子に座り、1番目に並んでいたおじさんがしびれを切らした声で言う。

私は身体をこわばらせ、再び鈍器で殴られる覚悟をした。

「順番変わってやるよ。あんた大変だもんな」

その低い声は、あの時とは真逆の優しい響きで私を包み込んだ。


またある時、電車の中でぐずりだした1歳の息子を、抱っこ紐の中で揺らしながらあやしていると、向かいの女子高生がジロジロとしつこい視線を送ってきた。

私は焦ってさらに揺らすが息子は泣き止まない。

それでも女子高生は視線を外さず、じっとこちらを見ている。

私はとうとう視線に耐えられなくなって、「うるさい? ごめんね。でもどうしようもないの」そう言おうとした瞬間、女子高生は言った。

「かわいい」

ストレートに響いたその声は、私の心からこり固まった焦燥を消してくれた。

先輩ママの優しいまなざし

イヤイヤ期ど真ん中の次男を歩かせ、1歳の三男をベビーカーに乗せ、図書館に本を返そうと家を出た日のこと。

いつもマンションのエレベーターのボタンを押しているのは次男なのだが、その日は間違えて私が押してしまったことから彼のハートに火がついた。

やり直しさせようとしても一度食い違った歯車はある程度暴走しないと収まらない。

イヤイヤとぐずる次男を仕方なくそのまま歩かせ、ベビーカーを押しながら図書館へ向かったが、とうとう歩道の真ん中で転がって泣き始めた。

図書館の入口まであと数メートル。

なんとか次男を抱きかかえて入ろうとするも暴れてどうにもならず、進めない。

転がる次男にぐずり始めたベビーカーの三男、そして八方塞がりの私

お手上げ状態で途方にくれていると、たまたま図書館から出てきた見知らぬお母さんが我々に気づいて叫んだ。

「私、本! 代わりに返してきますよ!!」

そのお母さんの両脇には小学生らしい息子がいた。

かつて自分にも似たような経験があったのだろう。

一瞬で私の状況を把握してくれたお母さんが発した、力強く迷いのない言葉にどれほど助けられただろう。


ファミレスで騒ぐ子どもたちを捌きながら、こぼしたジュースを拭いたり自分の服についた汚れを落としたりと、てんやわんやで3人の子どもにご飯を食べさせていたいつかの私。

なりふり構わず、とにかく迷惑をかけまいとバタバタしていたところ、前のテーブルに座っていた、もう手のかからなくなった子どもたちと平和に食事をしていたお母さんが振り向いて言った。

「頑張ってね」

懐かしそうに目を細め、自分の歩んできた育児と重ねたお母さんの優しいまなざしに、もうひと踏ん張りできる勇気をもらった。

Life is beautiful.

ベビーカーを押している私が通り過ぎるまで、ドアを開けて待っていてくれた見知らぬ中学生の男の子。

歯医者さんのお会計の途中で外に飛び出そうとした我が子を、「私が見ていてあげるから払っちゃいな」と勢いよく立ち上がった待合室のおばさん。

杖をつきながらゆっくりとわざわざ遠くの方から私たち親子のそばにやってきて「が・ん・ばっ・て」と囁いてくれたどこかのおじいさん。

そういえば、4人の子どもたちを連れて交差点で信号待ちをしていた私を見つけた車に乗ったおじさんは、車の窓を開けてびっくりしたように、指で子どもの数を数え始め、親指を折り曲げて手で「4」をあらわし、

「4人? 4人なのか?」

とまるで外国人のようにジェスチャーで私に問いかけてきた。

「そう、そうだ、4人だ!」

と親指を折り曲げ、おじさんにジェスチャーで返す私。

するとおじさんは大袈裟に両手を広げ、それから親指を突き出して、

「グッドグッドグッド」

と何度も私を讃える合図を送ってくれた。


人生は美しい。

そこかしこに地雷はあるかもしれない。
でも、見渡せば、こう感じさせてくれる人がたくさんいることに気づくんだ。

Life is beautiful.

どんなに良い子育て支援や子育て制度があっても、社会の中でこういう人の温かい眼差しがなけりゃ、やっぱり子育てはできないだろうなぁ。結局は人なんだよね。辛辣な言葉は心に残るだろうし怖いけれど、冷たい人に傷つくよりも、温かい人をたくさん感じて感謝しようっと。

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