2歳児の壮絶イヤイヤ期を乗り越えた「お願い」の効果

大貫ミキエ
2023.10.11 13:41 2023.11.09 11:50

大貫ミキエ

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親の言うことは一切きかず、泣いて怒って自分の要求を押し通そうとするイヤイヤ期。そんな子育て生活を乗り切るために、大貫家が定めている「独自ルール」とは?
芸人・漫画家の大貫ミキエさんに、ご自身の子育てについてうかがいました。

※本稿は、『のびのび子育て』2021年1月号より転載したものです

息子の頭がいいだって!?

先日、普段芸人として私たち夫婦がお世話になっている、構成作家のYさんにお会いする機会がありました。

2歳の息子も一緒に小1時間食事をし、たわいもない会話をして別れたのですが、後日、同期の芸人から「Yさんが、大貫さんの息子は頭がいいってすごく褒めてたよ」と言われたのです。

息子はまだ2歳。スーパーキッズのように読み書きができるわけでもなく、英会話教室やなんとか式塾のような幼児教室に通わせているわけでもない、ただただ戦隊ヒーローや幼児向けアニメが好きな普通の男の子です。

いや、むしろやんちゃ盛りとイヤイヤ期も相まって、「頭がいい」という雰囲気とは真逆の、好奇心旺盛なわんぱくボーイといったところです。

それがどうして「頭がいい」というイメージを持たれたのか……。もしかしたら違う人の子どもと勘違いして話を聞いてしまっていたのではないかとさえ思いました。

しかし、どうやらYさんが言っていた「頭のいい子」というのは本当に息子のことのようで、一体どうしてそんなイメージを持ってくださったのか、あらためて聞いてみることにしました。

するとYさん曰く、「大人が話しているときに割って入ってきたりしない」「大人たちの会話が止まると、話しかけてくる」とのことで、とにかくコミュニケーション能力を褒めてくださっていたのですなるほど。とは、すぐには思えませんでした。そんな感じだったっけ……? と、そのときのことを思い返しても、よくはわかりませんでした。


何故なら息子は、とてもよく喋るのです。私たち夫婦がリビングで2人だけで仕事の話をしているときなどは、わざと割って入ってきたりするんです!

……!!

……なるほど。たしかに言われてみれば、コミュニケーション能力は高いのかもしれません。私たちが夫婦だけで盛り上がっているときは、わざと邪魔をしに来ているのです。盛り上がっていないときは入ってきません。

話している内容はわかっていないとは思いますが、なんとなく空気を感じて、邪魔してやろう、邪魔してもつまらないからやめておこう、と判断しているのかもしれません。それを「頭がいい」と表現してもいいのかはわかりませんが……。

「笑ったら負け」というルール

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コミュニケーション能力を鍛える……ということでしているわけではないのですが、わが家ではイヤイヤ期とのつきあい方において、独自のルールを用いています。

それは、「笑ったら負け」というルールです。

イヤイヤ期というのは、とにかく「怒り」や「涙」で要望を通そうとしてきます。嫌なことがあって怒って泣いて、それで要望を通してしまうと、また困ったときに怒ったり泣いたりするのだろうと想像できます。

ときどき大人でも、そういう人いませんか? 恋人に対して怒りや涙で支配する人。これはなかなかヘビーなタイプであり、息子にはそうはなってほしくないのです。とはいえ、イヤイヤ期というのは壮絶であり、もういっそのこと要望を叶えて終わりにしてしまいたい! と思うこともあります。

しかしわが家では、「イヤイヤしても何も変わらないよ。ちゃんと『お願い』してね」と息子に伝えます。そして、その「お願い」の仕方が面白かったら、要望を叶えてあげるのです。

「イヤイヤ」を乗り切るコツは笑顔

大貫ミキエ

こう言うと、なんだかとんでもないルールのようですが、別にお笑いの「大喜利」のようなものを求めているわけではありません。

ちょっと変な顔をして「お願い!」と言ったり、かと思ったら真剣に「……お願い! お願い! お願い!」と連呼してみたりと、子どもらしく明るくお願いされるだけで、親は笑ってしまうのです。かわいく「おねが〜い!」と言うこともあり、これもまたかわいくて笑わずにはいられません。

とはいえ、全部のお願いを叶えてしまうわけにもいかないので、そういうときは、「ママのお願いの仕方も見て〜!」と言い、そのお願い(おもちゃやお菓子)よりも、ママとの「お願いゲーム」のほうが面白いと感じさせるくらいのテンションでこちらも頑張っています。

この「お願いゲーム」に突入した時点でイヤイヤの気持ちはどこかへ行ってしまっているため、大抵のイヤイヤモードは乗り越えることができています。

「笑顔」というのは、コミュニケーションにおいて非常に重要であり、人の心を温める力があります。息子にも、この「お願いゲーム」から、人を笑顔にすることの楽しさや、創意工夫をして困難を乗り越える力を養ってほしいと思っています。

忘れられない朝の1コマ

そう言えば、息子が生後半年くらいの頃のとある朝、目が覚めると、どこからか視線を感じたことがありました。隣で寝ていた息子が先に起きており、こちらをじっと見ていたのです。

泣かずに起きられたんだ! と内心嬉しく思っていると、ニコーッと私に微笑みかけてくれた息子。世の中にこんなに幸せなことがあるのか……!と、忘れられない朝の1コマとなりました。

このときのことを友人に話していた際、「ママがいつもたくさん笑いかけてあげていたからだね」と、想像していなかった答えが返ってきたため、少し恥ずかしい気持ちと正直に嬉しい気持ちで、心がいっぱいになりました。

まだまだ赤ちゃんだったし、意思疎通ができるようになるのは当分先のことだろうと思っていましたが、普段自分が向けていた笑顔がきちんと息子にも伝わっているのだと思うと、とても感慨深かったのを覚えています。

親の笑顔は子どもに伝わる正直、育児をしていると、いつも笑顔でばかりいられないということも多々あります。いっぱいいっぱいになり、つい怒ってしまうことも。

そんなときは、自分がギャグ漫画の世界の中にいることを想像します。そうすると、散らかった部屋や食べ物で汚れた床、そして、そこに佇む白目を剥いて顔に縦線が数本入った自分に、思わず吹き出してしまうのです。笑ったら負け。

もうそのときの心は、イライラが去ってしまっています。そして、親の笑顔は必ず子どもに伝わっています。子どもに笑っていて欲しいと思うときは、まず親が100点満点の笑顔で毎日を楽しんでみましょう!

大貫ミキエ

大貫ミキエ

大学卒業後、東京NSCに入校。現在、夫とコンビ「夫婦のじかん」を組んで活動中。夫婦の芸人活動や子育てのことを綴ったエッセイ漫画『母ハハハ!』(パルコ出版)が話題に。