祖父母の子育て観とのギャップにモヤモヤ…上手な付き合い方のポイントは?

高祖常子

子育てにおいて、実の両親はもちろん義理の親とのかかわり方が難しいと感じることはありませんか? 親世代との子育て観や方針の違いがストレスになることも。親世代を尊重しつつ自分たちの意見を伝え、上手に付き合う方法を子育てアドバイザーの高祖常子さんに聞きました。

※本稿は高祖 常子著『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

子どもの機嫌が悪いとき、放っておくように言われる

息子を3人育てた義両親。尊敬しておりますが、甘えん坊の4歳の娘の機嫌が悪いとき、「構わないほうがいい」「放っておきなさい」と言います。4歳なりに、何かを考え、憤りを感じて不機嫌になるわけで、その心の声を聞かずに放置はできません……。モヤモヤを会話やスキンシップで解消できれば親子の信頼も愛情も深まると思うのですが、義両親の子育て論には時々賛同できずイラッとします。(4歳女の子)

我が家の子育てのスタンスを伝える

おじいちゃん、おばあちゃんの対応と我が家の対応が違う、という悩みは多くあります。
この場合、同居しているのか、週に何度も会うのか、または年に数回しか会わないのかにもよります。

年に何度かしか会わないなら、「そうですね~」と言葉では受け止めつつ、心の中では受け流しましょう。

同居していたり、週に何度も会ったりする場合には、お互いにストレスになりますから、子育ての主体は親であることをきっぱり伝えておきましょう。

もちろん、おじいちゃん、おばあちゃんの考え方やアドバイスは、一理あったり、参考になったりすることもありますから、頭からすべて否定したり、対立関係になったりするような雰囲気にしないことです。

でも、このケースでは「我が家では、子どもの気持ちに寄り添う子育てをしているので、見守ってください」というような感じで伝えておきましょう。

言われたおじいちゃん、おばあちゃんは、いい気持ちはしないかもしれませんが、立場やスタンスを明確に伝えておくことで、子育ての主体が親であるということを、少しずつ理解してくれるようになるのではないでしょうか。

日ごろの子どもとの関わり方を、アピール

日ごろのコミュニケーションはとても大切です。
「この間、子どもがイヤだ! って言うから、なぜイヤなのって聞いたら、こんな答えが返ってきたんですよ」などと、子どもとの関わり方や、子どもの気持ちなどを伝えるようにしてみましょう。

そして、子どもが遊んでいる様子を写した日常の写真なども共有するといいですね。
我が家の子育ての雰囲気を伝えて、理解してもらうようにしましょう。

祖父母の空気を読んで、自分がキレてしまう

話したことを、息子が理解してくれないと「子どもだから、いいや」と放置する私。しかし、祖父母はそうはいかず放っておけないタイプ。子育て経験から、どうしても比較してしまうよう。祖父母・私と息子、4人一緒にいるときは、祖父母がキレそうになる空気を読んで、私がブチ切れてしまい、そこへ祖父母が止めに入る。このパターンを何度かくり返しています。(3歳男の子)

難しいけれど、自分軸で

感受性がこまやかな人は、祖父母に限らず、周囲の様子を繊細にキャッチします。たとえば、「電車の中で、赤ちゃんがぐずったときににらまれた」というのは、かなりの数のママが体験していることなのではないでしょうか。

これは多くの場合、「赤ちゃんが泣く→つい振り向く→振り向いた顔が真顔→にらまれたと思う」という構図だと私は思っています。泣き声に反応してつい、振り向くけれど、それは確認しただけであって、赤ちゃんが泣いていることを責める意図はありません。

子どもをぐずらせないようにと過剰に反応して、子どもを叱りつけ、さらに子どもがぐずるというループに入ってしまう人がいます。

困った状況にならないように、先回りして対処しようとして、それがかえって裏目に出てしまう(自分のほうが先にキレてしまう)という感じでしょう。このようなタイプの人は最近言われるようになった「HSP」(アメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロン氏が提唱した概念で、Highly Sensitive Person(ハイリーセンシティブパーソン)の略)かもしれません。「人一倍敏感な人」という意味です。


そういう人は、おじいちゃん、おばあちゃんのイライラを先にキャッチしてしまうのです。それを感じないようにすることは難しいですが、自分はそんな傾向があると知っておくだけでも気が楽になるかもしれません。考え方としては、「相手の感情に巻き込まれない」「相手の感情を請け負わない」ということ。

なかなか難しいのですが、相手は、もしかしたらそもそもその日は機嫌が悪かったり、直前に何かイヤなことがあったりして、怒りの沸点が低くなっているのかもしれません。
祖父母の反応が気になって、「ママはいつもは怒らないようなことなのに、今日だけ怒る」というのは、子どもも混乱します。

おじいちゃん、おばあちゃんの感情は、祖父母の感情。子どもへの対応はいつも通りということで、整理して考えるように、心がけてみてはいかがでしょう。

子どもを育むためのヒント〜祖父母への対応〜

・尊敬と尊重を忘れずに
長年生きてきて、子育てをしてきた自負もあるので、尊敬や尊重は忘れないようにする。

・子どもへの接し方や子育ての様子を伝える
遠方でたまに連れていく場合には、祖父母も自己流の接し方をしてしまいがち。親自身が子育てで大事にしていることや接し方など、日常会話の中でそれとなく伝えていこう。

・NGはきっぱり伝える
どうしてもして欲しくないことがあれば、「ここだけは」と伝えておこう。特にアレルギーがあれば、おやつを勝手にあげたりしないように伝えるなど。

第三者の反応を気にしない

一緒に居合わせた人(祖父母や、一般の人)がイヤな気分になると思うから、子どもをどなりつけてしまうということも、少なくありません。周囲への過剰反応です。

もちろん、その場の状況によって対応を変えることは必要です。勉強会などで、赤ちゃんが泣くことによって講師の声が聞こえにくくなりそうなら、会場の外にちょっと出るなどの行動はその場の判断でするといいですね。
よくあるのが、夫や祖父母が(このまま子どもが行動を続けると)怒り出しそうなので、先に自分が怒ってしまうというようなケースです。

いつも親子で過ごしているときには怒らないのに、周囲の目を気にして怒ってしまうということもありますよね。そのときの自分は、相手と対等の関係になっていません。相手に合わせるように、こうあるべきという姿を見せようと頑張ってしまっている状態です。

このような場合、無意識に相手を怖れ、相手の機嫌を損ねたくないという、上下関係になっていることがあります。要は、親自身が素のままの自分でいることができていないということ。よく見せたい、相手に合わせるように行動したい、と考え、そのために子どもの言動を調整しようとしてしまいます。

このような場合は、周囲との関係性に無理が生じています。夫や祖父母など身内の場合には子育ての方法や大事にしていることを共有し、理解してもらえるよう、素のままの親子関係でいられるようにしましょう。

もちろん、家の中と外、公的な場所での対応などを変えることは、社会的な行動ですから、悪いことではありません。ただ、近しい間柄であれば、共通の認識を持ち、一緒に過ごすことがストレスにならないよう、コミュニケーションを取るといいでしょう。

関連書籍

こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て

こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て(かんき出版 )
メディアに話題になった『イラストでわかる 感情的にならない子育て』(2017年)の第2弾。
著者は、前作同様「どならない、たたかない子育て」を推進し、4万6000人のママとパパにアドバイスしてきた、子育てアドバイザーの高祖常子さん(育児情報誌miku元編集長)。
セーブ・ザ・チルドレンジャパンの2万人アンケートによると、約6割が子どもへのしつけとして体罰(叩くこと)を容認しているという結果が出ているとのこと。 「毎日イライラ」「たたきそうになった」「どなってばっかり」と自己嫌悪するママやパパに贈る、「子育ての困った」をまるっと解決してくれる1冊です。