ベテラン講師が発見した「学力が伸び続ける子の親」に共通する特徴

高濱正伸
2023.12.06 09:48 2024.01.11 11:50

微笑みあう親子

花まる学習会代表の高濱正伸さんは、お母さん、お父さんが楽しそうで家庭に笑顔が溢れていると、健やかで、頭のいい子に育つと語ります。その理由とは? 高濱さんの長年の講師経験から見えた、学力が伸び続ける子の”親の特徴”について紹介します。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年1月号から一部抜粋・編集したものです。

親は子どもにとっての安全基地

パパと子とママ

――子どもにはなるべく笑顔で接したいとは思っているんですが、親の笑顔が子どもの「頭のよさ」にも関係してくるんですか!?

【高濱】そうなんです! 子どもにとって、お母さんやお父さんの笑顔は、「愛されているという実感」につながります。そこに子どもが伸びる秘訣があるのです。

――愛されている実感……親が笑うほど、子どもに愛情が伝わるということでしょうか?

【高濱】はい。親が笑っていれば、それだけで子どもは安心し、愛されていると感じます。その実感こそが子どもの自己肯定感を高め、やる気や自信、生きていくために必要な力を伸ばすんです。

――なるほど~。子どもの自己肯定感を高めることが大事なんですね。

【高濱】その通りです! 自己肯定感が低く、自信のない子は、新しいことや難しいことになかなか挑戦できません。私は講演会でよく、「優秀な母であるよりも、笑っている母であることが大事」と伝えています。

――洗濯物をため込んでも、うっかりミスが多くても、明るく笑顔の多いお母さんならOKということでしょうか?

【高濱】うっかりミスはできれば減らしてほしいですが(笑)、そうですね。親は子どもにとっての安全基地。家に帰ればお母さんが笑顔で迎えてくれる、話を聞いてくれる、それだけで子どもは安心して「外の世界」に出ていけます。子どもにとっては日々の経験こそが宝、それが後々の頭のよさにもつながります。

子どもは親の笑顔のために頑張る生き物!

言うことを聞かない男の子

【高濱】私は「メシが食える大人に育てる」という理念で塾を立ち上げ、多くの親子と関わってきましたが、長年の講師経験から言えるのは、学力が伸び続ける子の親御さんは明るく大らかな方が多いということです。

――え、そうなんですね! 勉強ができる頭のいい子の親は、どちらかというといろいろ習いごとやドリルをさせるなど、子どもに厳しいイメージだったんですが……。

【高濱】子どもに無理やり勉強をさせても何も身につかないどころか、やる気や自信をなくすだけです。私は、子どもをやる気にさせる一番の特効薬は、親、特にお母さんの笑顔だと思っています。

――特効薬! 私の笑顔だけで、子どもがやる気になるのであれば、すごくうれしいですが……。

【高濱】小さいときは、大好きなお母さんやお父さんを喜ばせたくて、子どもはいろいろなことを頑張ったり、苦手なことにも挑戦したりします。親がほめてくれる、笑ってくれることが頑張る源なんです。

親が笑うと、子どものこんな力が育ちます!

ママの話を聞く子

幸せな人生を送るために、どれも必要な力です。

・自分を信じて積極的に行動する力
前向きに生きる力は、その子の自己肯定感の高さによって決まります。自己肯定感とはつまり、「自分が好き」と思える気持ち。自分のことを好きになれれば、自分を信じることができます。

「私(僕)ならできる」と思えることで、難しいこと、新しいことにも果敢に挑戦できるようになるのです。親が笑うだけで、子どもの自己肯定感は高められます。

・相手のことを思いやり共感する力
私は「本当に頭がいい人」とは、「他人を幸せにできる人」だと考えています。親の愛情をたっぷり受けた子は、人を妬むことも、誰かの足を引っ張ることもなく、「みんなで一緒に喜ぶ」ことができます。

「共感力」が高く、先に相手のことを理解し、受けとめようとします。それこそが円滑なコミュニケーションの基本であり、愛される極意です。

・最後まであきらめず、やり抜く力
失敗しても、うまくできなくても、お母さん、お父さんが笑顔で受けとめてくれる、そう思えれば、子どもは最後まで頑張ることができます。その繰り返しが、子どもの「あきらめない力」を育むのです。

その過程において、どうすればできるようになるかと試行錯誤を重ねるので、工夫する力も育ちます。壁にぶつかっても、自分の力で乗り越えられる子になるのです。

親の温かなまなざしは、子どもが強く生きていく土台!

母親と娘

【高濱】極端な話、親がニコニコと笑っていれば、子どもは元気に生きていけます。でも、そう言うと、無理して笑おうとする真面目なお母さんがいますが、それは意味がありません。

――私もこれまでのお話を聞いて、無理してでも笑わなきゃって思いました……。

【高濱】無理して笑っても、子どもはすぐに見抜きます。嘘の笑顔には何のパワーもありません。逆に子どもを不安にさせることもあります。だからこそ、お母さんに自分のことも大事にしてほしいと思うんです。笑うためには心のゆとりが必要ですから。

――そうですね。あれもしなきゃ、これもしなきゃで、気づけばパンク状態、子どもを怒ってばかりということがよくあります……。

【高濱】必要なのは、親の「温かなまなざし」なんです。子どもが何かしていたら「かわいいな」「成長したな」「頑張っているな」と優しい目で見る。笑顔とはつまり「温かなまなざし」。子どもを優しく見つめられるゆとりをもってくださいね。

笑顔でいるために大切なこと

男の子と女性

心を許せる場、楽しめることを見つけておきましょう。


・孤独感から抜け出す
子育ては、ある意味で孤独です。特にお子さんが小さいときはそうでしょう。答えがなく、どうすればいいかわからず、悩むことも多いと思います。

忙しさのあまり、夫婦で「なんでこんなこともしてくれないの!」「文句ばかり言うな!」とストレスをぶつけ合うということも少なくないかもしれません。そういうときは、あなたに共感してくれる誰かに、話を聞いてもらってください。「わかる、わかる!」、そう言ってもらえるだけで、救われるものです。

・あなた自身の人生を楽しむ
なんでも子ども優先、子どものためにと頑張っている人ほど、笑顔の子育てからは遠ざかります。大事なのは、あなた自身が満たされ、人生を楽しんでいるかどうかです。子は親の鏡。あなたが楽しそうにしていれば、子どもも自然と笑顔が増えます。そうなるとあなたも笑い、というふうに笑顔の循環が生まれます。

愛された、認められた、大切にされた……心が満たされてこそ人は優しくなれます。だからこそ、まずはあなた自身に優しくしてあげてください。

【高濱】親の笑顔の大切さ、ご理解いただけたでしょうか?

――はい! 子どもに「温かなまなざし」を向けられるように、自分のことも大事にします!

高濱正伸

高濱正伸

1959年、熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程卒業。93年に、「国語力」「数理的思考力」に加え「野外の体験教室」を指導の柱とする学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員。