どこから甘やかしすぎ?子どもが失敗した時に「親がかけるべき言葉」

曽田照子

子どもをガミガミと叱らないほうがいいのはわかりました。では、叱る代わりにどんな対応をすればいいのでしょうか。いろいろなケースについて考えてみましょう。子育てNGワード専門家の曽田照子さんが解説します。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年10月号から一部抜粋・編集したものです。

ガミガミ言わずにあなたはどうする?

急いでいるときや疲れているときなどには、ついつい声を荒らげてしまうものですが、ガミガミ言わずに子どもを上手に導くには、いったいどんな言葉をかけたらいいのでしょうか。ここでは、ありがちな5つのケースについて3択クイズ形式で解説します。

「もし、自分が子どもの立場だったら、親にはどのように対応してほしい?」と考えてみるのがポイントです

いつまで経っても子どもがごはんを食べ終わりません。どんな言葉をかけますか?

ある日、あなたは子どもと一緒に夕食をとっていました。あまりにも食べるペースが遅い子に、「早く食べなさい」と何度か声をかけましたが、気がつくと、すでに30分が経過。子どもはひと口かふた口、口にしただけです。

さて、こんなときはどんな言葉をかけたらいいのでしょうか。

A「残しても大丈夫だよ」
B「先にテレビを見てから食べる?」
C「あと10分で食べ終わろう」

「あと10分で食べ終わろうね」

せっかく作ったのに……という気持ちや、小食を心配するあまり、つい感情的になってしまいがちですが、冷静に言葉がけをしましょう。でも、「大丈夫だよ」とか「テレビを見る?」というのは、少し甘やかしすぎかもしれません。

こんなときには、具体的なタイムリミットを決めて子どもと交渉をしましょう。「いつまでに食べなければいけない」という時間がはっきりとわかることで、子どもは自分の行動をコントロールしやすくなるのです。

まだ時計が読めないお子さんには「長い針がここにくるまでに」と示したり、キッチンタイマーでカウントダウンするなど、残り時間を「見える化」するのも効果的です。

もう5歳になるのに、コップやお皿をよく落とします。どうしたらいいでしょうか?

食事をこぼしたり、肘などが食器に当たって、料理や飲み物を台なしにしてしまうことがしょっちゅうあります。楽しく食事をすることのほうが大事だと思って、今までは大目に見てきましたが、もう5歳。そろそろ改めさせたいのですが、言葉がけはどうしたらいいでしょうか。

A「次からは気をつけようね」
B「大丈夫だよ。拭いておくね」
C「あら、失敗しちゃったね」

「大丈夫だよ。拭いておくね」

子どもはそれぞれ成長のスピードが違います。大きくなっても食事をこぼす子は、たくさんいます。そういう子は、「腕をどう動かせば上手に食べられるのか」を感覚的につかめていないだけ。子どもは「こぼさないで食事をしたい」と思っているものです。放っておいても、必ずできるようになります。

AやCも悪くはありませんが、Aの言い方では、子どもの「次から気をつけよう」という気持ちがしぼんでしまいます。Cの「失敗しちゃったね」だと「失敗したこと」に気持ちがいってしまいます。あまり問題にせずに「大丈夫だよ。拭いておくね」などと言って、さっと拭いてあげるのがいいでしょう。

洗い物などをしていて手が離せないときに、子どもが「絵を描いたの」と見せてきたら?

長かった一日の仕事もようやく仕上げ。眠い目をこすりながら夕食後に食器を洗っていたら、子どもが声をかけてきました。「絵を描いたの。ねえ見て!」疲労のピークに達しているあなたとしては、「無理! そんなのあとにして!」と怒鳴りたいところですが、そこをぐっとこらえて……。さあ、どんな返事をしましょう。

A「どれどれ? 見せてみて」
B「今、忙しいの。わかってね」
C「ごめんね。ちょっと待って」

「どれどれ? 見せてみて」

いつもしっかりと子どもの話を聞いてあげられている場合には、ときには「今、忙しいの」「ちょっと待って」といった対応でも、子どもは納得して待っていると思います。

ただ、「あとで」と後まわしにされることが多い子どもは、「自分は大切にされていない」といった不安にかられる場合もあるでしょう。そうなると、親に話すことをしなくなってしまうかもしれません。

できることなら、その場ですぐに「見せて!」と興味をもって接するのが理想でしょう。どうしても手が離せない場合には、「5分だけ待って」などと具体的な時間を提示して、必ずその約束通りに見てあげましょう。

何度言っても、おもちゃを散らかしっぱなしにします。堪忍袋の緒が切れたときは?

おもちゃで遊んだあと、片づけずに散らかしっぱなしにしていることが、よくあります。自ら片づけることもありますが、たいていは片づけません。もう何度も注意しているので、そろそろガマンも限界です。どのように言えば、ちゃんと片づけられるようになるでしょうか。

A「片づけないと、鬼が来るよ!」
B「一緒にやろう。競争だよ!」
C「お片づけ、忘れちゃったね」

「一緒にやろう。競争だよ!」

親にしてみれば「使ったら片づける」というのは常識かもしれませんが、子どもには通用しません。まずは、片づけなければならない理由を、子どもにわかる言葉で説明しましょう。

「鬼が来るから」と脅していると、恐怖心から子どもの心が縮こまってしまいます。また、子どもは察することが苦手なので、「忘れちゃったね」と言われても、片づける行動に結びつけにくいのです。

人形はおもちゃ用のベッドに寝かせる、電車は車庫に見立てた棚に収めるなど、子どもの目線でおもちゃ収納を用意するのも有効です。そのうえで「競争しよう!」などと誘って、片づけることを「楽しい遊び」にしてしまうのがいいでしょう。

おもらしでベッドが台なしに! おねしょを気にしている子にかける言葉は?

オムツが不要になってから半年が経ちました。親子一緒にベッドで眠っていた、ある夜の2時頃……。「おしっこしちゃった!」子どもの声で飛び起きると、お気に入りのベッドが水びたし。本人もショックだったらしく、泣いています。こんなとき、どんな言葉をかけるのがいいでしょうか。

A「寝る前におしっこをしようね」
B「一緒に片づけようか」
C「気にしなくても大丈夫だよ」

「気にしなくても大丈夫だよ」

トイレ問題は、誰もが必ず通る道。子どもは、だんだん食事をこぼさなくなるのと同じように、放っておいても自然とおねしょをしなくなります。

どの選択肢も、感情的にならないように意識している点はいいですが、Aはおねしょをしてしまったあとで言うのは遅すぎますね。Bも考え方はいいですが、深夜であることを思うと、ちょっと不適切ですね。

こんなときは、「気にしなくても大丈夫だよ」と声をかけて安心させ、そっと片づけてあげましょう。幼少時の細かい記憶はなくなっても、「親がやさしく片づけてくれた」という印象は、きっと子どもの心に刻まれ、残り続けるでしょう。

「ガミガミ言わない」は「甘やかす」とは違います!

子どもに対してガミガミと言いすぎないことはとても大切ですが、それは子どもを甘やかすこととは違います。幼児期ならではの心の動きを理解して、子どもをよい方向へ導く対応をする、ということです。

感情的に叱らないように心がけることは、子どもを導き、その力を伸ばすばかりでなく、親自身の気持ちをリラックスさせ、落ち着いた気持ちで子どもと接することができるようになるという大きなメリットもあります。親の心が安定することは、子どもにもよい影響をもたらしますので、そうなれば、好循環に入ったと言えるでしょう。

また、ここでご紹介した対応方法は、あくまでも一例です。子どもの心身の成長についての基礎知識をもったうえで、わが子をじっくりと観察して、それぞれの子に合わせた対応を考えましょう。

とは言うものの、子育てに対してあまりプレッシャーを感じすぎない、バランス感覚も必要です。「ガミガミ叱ってはいけない」「適切な言葉がけをしなければ」と気負うあまりに、親自身が心の余裕をなくしてしまうのでは、まったく本末転倒です。

うっかりガミガミ言ってしまっても、すぐにやさしい言葉でフォローすればOK。そのくらいの気持ちで、のびのびと子育てをしましょう。