子どもの能力を伸ばす「ほめ言葉の使い方」3つのポイント
日々の生活で、親がかける言葉は、子どもにたくさんの影響を与えています。では、よりよい成長を促す「魔法の言葉」とは、どのようなものなのでしょうか。創価大学教育学部教授の園田雅代さんが紹介します。
※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年11月号から一部抜粋・編集したものです。
目に見えないプレゼント
はじめに、皆さんに少し振り返っていただきたいことがあります。
あなた自身がこれまで誰かから投げかけられた言葉によって、やる気が出たり、自信を取り戻したり、あるいは心がスーッと楽になったりしたことはありますか? それは誰からのどういう言葉でしたか?
そういう体験がある方は、言葉は目に見えないけれど、まるで魔法のような力があると実感されていることでしょう(そういう体験がすぐに思い出せないという方も、それはそれでOKです)。
それは、お子さんにとって親からもらえる目には見えないけれども特別なプレゼントになるはず。「言霊」という表現があるように、そのような「魔法の言葉」を親からかけてもらえるお子さんは、その言葉を通して、親からの愛情や自分への信頼感・励ましなどを実感できます。
と同時に、それはお子さんのみならず、親御さん自身にもきっと幸せをもたらしてくれるはずなのです。なぜなら、「魔法の言葉」というのは、発する側と受け取る側を共に満たしてくれるものであり、また、その人間関係をいっそう豊かに育ててくれる触媒となるものですから。
ここでは、ぜひ皆さんに意識し実行していただきたい、子どもの力を育てる「魔法の言葉」を、具体的にご紹介していきます。
子どもの6つの力を伸ばす「魔法の言葉」
1. 自分を信じる力
A. 〇〇ちゃんの考えていること、お母さんに聞かせてくれるかな
B. どんな気持ちも大切にしていいんだよ
C. 〇〇ちゃんならきっと大丈夫だよ!
【ポイント】
AとBは、子どもに、「自分の考えや感情を大切にしてよい」と伝える言葉です。自分の考えや気持ちが、親から大事にされていると実感できると、子どもは安心することができ、「自己信頼感」は自ずと育ちやすくなります。
Cは、親が自分を信頼してくれていると実感できる言葉です。子どもは「自信をもつ心」を育てやすくなり、前向きになっていろいろなことに踏み出しやすくなります。
2. 周りの人を思いやる力
A. お母さんの手助けをしてくれてありがとう。助かるな。
B. いつも弟(妹)の世話をしてくれてありがとう。やさしいお兄ちゃん(お姉ちゃん)だね。
C. 周りで困っている人や手助けの欲しい人はいないかな?
【ポイント】
AやBは、「他者を思いやる力」をしっかりと心に根付かせることで、子どもの自信へと、つなげられるようになる言葉です。子どもをほめるときは、「いい子ね」とか、「やさしくしなさい」などと抽象的な表現ではなく、具体的にわかりやすくほめるのがポイントです。
Cは、「周りの人にも関心や思いやりをもつ」という視点に気づかせる言葉です。子どもにさりげなく周りへの配慮を促すようにしましょう。
3. チャレンジする力
A. 〇〇ちゃんがしてみたいことは何? それをやってみてごらん。
B. やってもうまくいかないかもしれないけど、そうしたらまたやり直せばいいよ。
C. すぐに”できない”って決めなくてもいいよ。時間をかけてやっていけば、だんだんうまくなれるはずだよ。
【ポイント】
Aは、子どものやる気や主体性を引き出し、育てようとする言葉です。危険なことであれば、中止の指示も必要となりますが、基本、子どものチャレンジ精神は、応援してくれる大人に支えられてこそ、育ちやすくなるものです。
BやCは、「失敗」や「すぐに上手になれないこと」を嫌がり、避けようとする子どもの気持ちに対して、親がそれを支えることで、子どもが粘り強く頑張ろうと思えるようになる言葉です。
4. がまんする力
A. 思い通りにならないから頭にくるね。でも、がまんするのはえらいよ。
B. がまんできるようになって、素敵なお兄ちゃん(お姉ちゃん)になったね。お母さんは誇らしく思うよ。
C. 今、がまんしたら、あとで大きな喜びになると思うよ。がまんできそうかな?
【ポイント】
Aは、子どもの嫌な気持ちを親が認めたうえで、それをがまんできるようにと導いていく言葉です。「がまんしなさい!」ときつく言っても、子どもの気もちが否定されただけになってしまいます。
BやCは、がまんの力を育てることに、親が丁寧に寄り添う言葉です。親が”がまんする自分”を認めてくれて、”がまんするとよい理由”がわかりやすく伝わると、子どもも体得しやすいことでしょう。
5. 夢を育てる力
A. 〇〇ちゃんの、好きなものや将来なりたいものを聞かせてほしいな。
B. 大きくなったら何になりたいのかな? なるために今できることは何だろう?
C. 自分の夢に近づいていけるように、いつもお母さんは応援をするからね。
【ポイント】
この3つの言葉は、親が子どもの夢を大切にし、その夢に近づいていけるよう応援していることを示す心強い言葉です。
一方で、もし子どもが「将来の夢はない」「どうせできない」というマイナスの言葉を発する場合、どうぞお母さんは慌てず怒らず、「へえ、お母さんはそう思わないけどなあ。
どうしてそう思うの? 聞かせてほしいな」と、どうして子どもがそう思うのか、理由を尋ねてみましょう。そのような、親子の話し合いを大切に実行してみましょう。
6. 自分を愛する力
A. 〇〇ちゃんのこと、大好きよ!
B. お母さんは、〇〇ちゃんの一番のファンなんだからね。
C. 〇〇ちゃんがお母さんの子どもでいてくれて、本当にお母さんはハッピーだなあ。
【ポイント】
この3つの言葉は、幼児期の子どもに育てたい「自己肯定感」や「自尊感情」を育むのに役立つものばかりです。これは、「失敗もあるけれど、根本的に自分のことを大切な人間だと思える気持ち」のことです。
日常では、照れや気恥ずかしさもあって表現しづらい言葉を、時には親が心を込めて、言葉を噛みしめながら子どもに伝えてみましょう。お子さんの思いがけない素直な反応を、新鮮に感じるかもしれません
絶妙な言葉がけのポイント3か条
①お互いに落ち着いているときに言う
バタバタして忙しいときや、何かの片手間で、大切な「魔法の言葉」を発してしまってはもったいない限り。子どもも親も、共に落ち着けるときを見計らって伝えましょう。
そういう時間を生み出すことも大切です。きょうだいが早くに寝たときや、あるいは、ちょっとパパに協力してもらって、ゆっくり2人になれる母子の時間を確保するなどして、まずは、あなた自身が少しでもゆったりとした気分でいられるときに、ぜひ実行してみてください。
②口先だけで言わない
思いのこもっていない美辞麗句は、子どもの心に響きません。また、親が口先だけで言ってばかりいる、と感じると、子どもが、人を信用できない人間になってしまうかもしれません。
言葉は、自分の思い通りに相手を動かすための、お手軽な道具ではありません。自分が本当にそう感じているか、口先だけになってないか、などの自己点検も試みてください。これは、親自身の言葉の力を磨くことに直結します。
③すぐに成果を求めようとしない
言葉の受け止め方は、親子関係や子どもの個性などによって多種多様です。「魔法の言葉」とはいえ、子どもがたちどころに変わるなんてことはないでしょう。
でも、親の思いがちゃんと根底にあり、それが徐々にでも子どもに沁み通ってゆくならば、自己肯定感や相手を思いやる気持ちなどをさらに育てていけるはず。「魔法の言葉」の発信は、どうぞ気長に試みていきましょう。