何度叱っても「失敗を繰り返す子ども」に効果的な注意の仕方とは?

精神科医さわ
2024.04.05 16:56 2024.04.23 11:50

子どもを叱る母親

子どもはどうしても正しくない行動をとったり、失敗を繰り返してしまうことがあります。何度注意しても改善しない様子に、イライラを抱えている親御さんも多いでしょう。しかし、そんな時こそ頭ごなしに叱らず、対話することが重要だと児童精神科医の精神科医さわさんは語ります。

※本稿は、精神科医さわ著『児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること 』(日本実業出版社)から一部抜粋・編集したものです。

子どもが「できないこと」ではなく「できていること」に注目しよう

外をみる男の子

「子どものしつけは親の役目」と思うあまり、わが子につい口うるさく言ってしまうお母さんは少なくありません。ただし、子どもに対して何度も同じことを注意するのは、逆効果です。

何度注意しても子どもがその行動をやめなければ、親御さんもイライラしてしまいますよね。そんなときは、「親がしてほしい行為に注目する」「親のタイミングではなく、子どものタイミングを見て話をする」の2つを意識することが効果的です。

ひとつ目の「親がしてほしい行為に注目する」は、とくに小学生くらいまでの子ども向けになりますが、子どもが小さいころというのは、注意すればするほどその行動が増えることがあります。

子どもは、親から注意されるような行為でも、注目されるとそれは自分に反応してもらえることだととらえて、親から注意されるような行為をむしろ繰り返してしまうことがあるのです。

ですから、その反対に親御さんがしてほしい行為に注目して声をかけると、子どもはその行動をするようになります。つまり、子どもができていないことではなく、「できていること」を見つけるのです。

たとえば、診察室で「うちの子は食事のときにすぐ立ってしまうんです」と訴えるお母さんには、「お子さんが座っているときに注目して、ほめてあげてください」と言っています。それがたとえ10秒しかできていなくても、ほかの時間は歩き回っていたとしても、その10秒を見つけて、すかさずほめるのです。

スマホをいじる男の子

2つ目の「親のタイミングではなく、子どものタイミングを見て話をする」というのは、親が言いたいときに注意をするのではなく、子どもが耳を傾けそうなタイミングで声をかけるということです。

たとえば、子どもがゲームに夢中になっているときには、「部屋を片づけて」と言われても子どもは聞きませんよね。もしも子どもに部屋を片づけてほしいなら、子どもがゲームをはじめる前に、「部屋を片づけてからゲームをしたら、気持ちよく遊べるんじゃない?」と声をかけるのもいいでしょう。

片づけることで、あなたはこういう状態になれるというメリットを伝えてあげると、子どもの行動が変わる可能性があります。

また、子どもと目が合ったときに言うとか、「お母さんが話したいことあるから、ゲームのキリがいいところでちょっと手を止めてくれるとうれしいな」などと言って、子どもが手を止めて、子どもが話を聞く態勢になってから目を合わせて言うなど、子どもが耳を傾けるタイミングをつくるのも大事です。

子どもに同じことを何度も言うのは、子どもだけでなく親もいやな気持ちになります。それよりも、子どもの気持ちに寄り添った伝え方をすることで、お互い気分がいいなら、そのほうがよくありませんか。

対話のもたらす力

父親に支えられる男の子

親が子どもに「こんなふうに育ってほしい」と思っていても、子どもの意志を尊重せずにその思いを押しつけると、子どものやる気を奪ってしまうことがあります。子どもになにかを伝えたいときは、親が命令や指示をしてコントロールするのではなく、親子で話し合いながら伝えたほうがいいと、私は考えています。

たとえば、子どもになにかをしてほしいなら、ただ「これをしなさい」と言うのではなく、どうして親であるあなたが子どもにそれをしてほしいかを伝えるのです。そして「お母さんはこう思うけれど、あなたはどう思う?」 と、それに対してどう思うか意見を聞いてみてほしいのです。

反対に、なにかをやめさせたいなら「やめなさい」と指示するのではなく、それをしたらどうなるのか、なぜやめたほうがいいと思うかを話して、子どもがどうしたいと思うのか意見を聞いてみてほしいのです。

親が方針を決めるのではなくて、対話をしながら、こちらの思いを伝えるのです。以前、娘が友だちの悪口を言っていたことがあり、それは人に言ったら絶対にダメだと思う言葉だったので、私は頭ごなしに怒ってしまう衝動にもかられたのですが、ひと呼吸おいて、どういう状況で、どうしてその言葉を言ったのか娘に聞いてみました。そして、「もしも、あなたがそんなふうにお友だちから言われたら、どう思う?」と。

娘は「そんなこと言われたくないって思う」と答えたので、私は「そうだよね。ママも言われたくないよ。だから、○○ちゃんも言われたくなかったんじゃないかな?」と言いました。

すると、娘も納得してくれたのか、お友だちに謝っていました。対話は、ただ叱って「やめなさい」と言うよりも時間がかかります。「そんなことを言うのはやめなさい」とひと言で言ってしまったほうが、ずっと楽かもしれません。

でも、子どもの脳というのは、まだまだ大人に比べて未発達なのです。性急に結論を押しつけても考えが追いつかず、理解ができないことは精神的にとても負担が大きいので、子どもがその反動で反抗的になってくる原因になることもあります。

「子どもが言うことを聞かなくて、とても反抗的なんです」と思っている親御さんは、ぜひお子さんとの対話を増やしてみてください。「あなたがそれをされたら、どう感じるか」という感情を子どもに想像してもらうことで、おのずと「では、どうしたらいいか」という答えがわきあがってくるのです。

精神科医さわ

精神科医さわ

児童精神科医、精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師、医療法人霜月之会理事長。精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。発達特性のある子どもの育児に身も心も追いつめられ離婚し、シングルマザーとして2人の娘を育てる。長女が不登校となり、発達障害と診断されたことで「自分と同じような子どもの発達特性や不登校に悩む親御さんの支えになりたい」と勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開業。老若男女、さまざまな年代の患者さんが訪れる。これまで延べ3万人以上の診察に携わっている。

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