うつや不登校につながることも…思春期に「強いストレス」を感じる原因と対処法

松丸未来
2024.05.01 10:29 2024.05.16 11:50

外をながめる女子中学生

何かと変化の多い思春期ですが、この年頃の子どもは自分自身のストレスや感情を上手にコントロールすることができません。強いストレスによる心の不調・病気を防ぐために知っておきたい対処法とは?
思春期の心理を知ろう!』(PHP研究所)より解説します。


※本稿は、 松丸未来監修 『思春期の心理を知ろう!』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。

ストレスや感情をコントロールできない

勉強に苦戦する男の子

10代はストレスをうまく受け止められません。急激な身体の変化、進学・受験、部活動、友人・異性とのトラブルなどの多くは、どれも初めての体験で、対処法を知らないからです。

対処法とは、そのストレスに向き合ったり避けたりする方法、ストレスとの距離のとり方や受け止め方、自分の感情と身体反応をコントロールする方法などです。

強いストレスは心身ばかりか、本人の行動にも深刻な影響を与えます。

思春期によく見られる心の不調など

思春期のイメージ

・心身症
苦しさやつらさが、頭痛や腹痛などの身体の不調であらわれる。まじめで自己表現が苦手な人がなりやすい。

・幻聴、妄想(統合失調症)
自分をおどす声が聞こえる幻聴や、だれかに追われているという妄想が生じる。思春期後期以降に見られる。

・暴言、暴力
悩みや不満からイライラが爆発し、暴言や暴力がとびだす。そんな自分に罪悪感がつのる人もいる。

・対人恐怖
人前に立つときに「恥ずかしいことをしてしまうかも」と不安になり、極度の緊張や恐怖を感じる。

・うつ病
さびしい気分のまま、やる気を失った状態が2週間以上続く。何事にも興味がわかない、1日の間に気分が大きく変わる、おこりっぽくなるなどの変化が見られる。

・摂食障害
食事をこばむ拒食症は、外見や体重へのこだわりが原因。食べすぎる過食症は、食欲不振や拒食症がきっかけになることもある。

・強迫症状
強い不安感から、それを打ち消す行為をくりかえす。たとえば、「自分の手は汚いかも」と不安を感じ、何度も手洗い行為をくりかえすなど。

・不登校、ひきこもり
失敗がこわくて教室に入れない、いじめがいやで登校できないなど、不登校の原因はさまざま。ひきこもりは、統合失調症やうつ病などが原因となる事例も多い。

・ゲームやSNSへの依存
睡眠時間をけずり不登校になってもゲームをやめられない人や、仲間はずれがこわくてSNS中心の生活からぬけだせなくなる人がいる。

・自傷行為
苦しくつらい気持ちを落ち着かせるために、リストカットをくりかえす。大量服薬や性的依存などの行為に走る人もいる。

心、身体、行動は作用しあっている

女の子

心配事があると、心臓がドキドキします。これは、ストレスを感じた脳がアドレナリンなどのホルモン(生命を維持する情報伝達物質)を体内で多く分泌させ、心拍数を上げるからです。その結果、いつもできることができなくなります。反対に気分がよいと、体調がよくなり、新しいことに挑戦したくなります。

このように、心と身体と行動は、たがいに作用しあいながら変化しています。

考え方や行動を変えるとストレスは小さくなる

教室で勉強する男子学生

自分が感じるストレスは、自分の考え方や行動を変えることで小さくなります。

強いストレスを感じたら、まず、早寝早起きの規則正しい生活を続け、弱った心と身体のパワーを取り戻します。ストレスで心身が弱ると、「考えのかたより」が強くなります。しかし、規則正しい生活で元気を取り戻せたら、そのかたよりが修正されるのです。

ストレスを軽減できないときは、家族や学校の先生、医師などに相談しましょう。

ストレスを軽減する行動

空を見る中学生

・勇気を出して、ふだんはできない行動に挑戦する
実はやってみたかったこと、いつもなら恥ずかしくてできないことを、ゆっくりと自分のタイミングで、時間をかけてやる。

・受け止め方を見直す
つらい感情になる、自分の考え方のくせを見つける。

・リラックスする
不安やストレスを感じたら、深い呼吸で心と身体を落ち着かせる。

・家族や友達のやり方を聞く
今の自分と同じ状態のときに、どうするかを、さりげなくまわりに聞いてみる。このときに、自分の悩みや困りごとを聞いてもらうと、ストレスが軽くなる。

・好きなことをして気分を変える
おしゃべり、運動、趣味など、心から楽しめることをする。

例:
・大声で叫ぶ。大きな声で歌う。

・なりたい自分のために「今できること」を始める。

・両手で自分をだきしめて「大丈夫」と言う。

松丸未来

1975年、東京都生まれ。臨床心理士、公認心理師。スクールカウンセラー。20年以上にわたり子どもの心のケアに力を注ぐ、子どもの認知行動療法の専門家。1998年、英国レディング大学心理学部卒業。2001年、上智大学大学院文学研究科心理学専攻修了。産業分野でのメンタルヘルスケア、東京大学大学院教育学研究科附属心理相談室臨床相談員を経て、小学校・中学校・日本人学校のスクールカウンセラー、東京認知行動療法センター心理士を兼務。ウクライナ避難者の心理支援活動も行う。著書・監修書・完訳書に『よくわかる 学校で役立つ子どもの認知行動療法』(遠見書房)、『子ども認知行動療法 怒り・イライラを自分でコントロールする!』『子ども認知行動療法 不安・心配にさよならしよう!』『子どもの自己肯定感を育てる100のレッスン』(以上、ナツメ社)、『子どものための認知行動療法ワークブック』『若者のための認知行動療法ワークブック』(以上、金剛出版)などがある。