「踊る科学のお姉さん」はなぜ生まれた? 子どもを理系好きに変えたダンスの力
実験とダンスを組みわせた科学ショーが人気を博し、各メディアで活躍中のサイエンスエンターの五十嵐美樹さん。踊り始めた理由は? そしてその本当のねらいとは?
(写真:吉田和本/取材・文:Voice編集部(田口佳歩)
※本記事は月刊誌『Voice』(2024年4月号)「令和の撫子」より抜粋、編集したものです
ダンスを取り入れて科学の実験を子どもが楽しむようになった
「踊るサイエンスエンターテイナー」として、実験とダンスを組み合わせたショーや科学教室を行なう五十嵐美樹さん。
大学で講義や研究をしながら、土日祝日にはサイエンスエンターテイナーとして全国各地を回る。NHK高校講座にもレギュラー出演、ポッドキャスト番組も配信するなど、幅広く科学の魅力を発信してきた。
「大学時代、ミス理系コンテストの審査過程で『いかに理系を社会に普及するか』を考え、あらゆる企画に挑戦しました。グランプリを獲りましたが、そこで終わらせずにもっと社会に還元したいと考えました」(五十嵐さん)
科学館に実験教室の企画書を送り、自ら子どもたちに科学を伝える場をつくったという。しかし、ただ開催するだけでは、意欲のある子は楽しんでくれても、科学にあまり興味のない子には届かないのだと感じた。
「そこで、得意なダンスで引きつけるしかない、と思いました(笑)。商業施設で行なったショーにダンスを取り入れたら、ただ買い物に来ただけというかつての私のような子も、実験を楽しんでくれるようになったのです」(五十嵐さん)
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一方的にならないよう、子どもたちが自分で仮説を立てたり保護者と相談したりする時間も大事にする。
「保護者の方が『うちの子がこんなに科学を知っているとは思わなかった』と言って子どもを褒めるのを見て、それが自信につながるのかもしれないと思いました。また、親に相談できない理系の進路に関する悩みを聞いてほしいという子や、私のようになりたいと言ってくれる子もいます。嬉しいですし、やってきたことの意義を感じる瞬間です」(五十嵐さん)
2023年だけで100公演以上を行なった五十嵐さん。その活躍が、子どもたちの豊かな未来をつくっていく。
月刊誌『Voice』は、昭和52年12月に、21世紀のよりよい社会実現のための提言誌として創刊されました。以来、政治、国際関係、経済、科学・技術、経営、教育など、激しく揺れ動く現代社会のさまざまな問題を幅広くとりあげ、日本と世界のあるべき姿を追求する雑誌づくりに努めてきました。次々と起る世界的、歴史的な変革の波に、日本社会がどのように対応するかが差し迫って闘われる今日、『Voice』はビジネス社会の「現場感覚」と「良識」を基礎としつつ、つねに新鮮な視点と確かなビジョンを提起する総合雑誌として、高い評価を得ています。