かつての保活地獄が激変!「子育てしやすくなった世田谷区」を象徴するワークスペース
2016年、世田谷区は全国ワースト1位の深刻な待機児童問題に見舞われ、大きな話題となりました。
しかしその後、区は子育て支援に力を入れ、2020年には待機児童数をゼロにすることに成功。現在はかつての評価から一転し、世田谷区に住む人から「子育てしやすい」と好評の声が上がっています。
そんな世田谷区では今、子供を一時的に預けられるスペースとワークスペースが併設された施設が注目を集めています。
多様な働き方をサポートする、新しい形のワークスペース「cobaco」。
その実態と運営の裏側について、北沢おせっかいクラブ代表の斎藤淳子さんにお話を伺いました。
多様な働き方を支援するために
――「cobaco」はどんな施設ですか?
子供の一時預かりが可能な遊び場にワークスペースが併設された、世田谷区が実施する子育て支援施設です。
「下北沢周辺で子どもを中心に様々な世代が集える場を作りたい」という思いのもとに活動する、一般社団法人北沢おせっかいクラブが運営しています。
世田谷区には、未就園児の親子が集える場所として「おでかけひろば」という地域子育て支援施設があるのですが、cobacoはその「おでかけひろば」にワークスペースを併設した「ワークスペースひろば型」と呼ばれるものになります。
「ワークスペースひろば型」はcobacoを含め現在区内の5か所で運営されています。
――「cobaco」はどうやって始まったのですか?
コロナ前のから「多様な働き方を支援する」というキーワードが注目されるようになったのですが、その一方で、フリーランスの方が保育園に入りづらいという課題がありました。
そんな中、区から「ワークスペース併設のおでかけひろば」の運営の募集があり、ぜひやりたいと手を挙げました。
大変なことも多かったのですが、ちょうどたまたまこの物件とめぐりあえたこともあり、6年前にひろばの運営をスタートさせることができました。
中には夫婦で利用する方も
――どのように利用できるのでしょうか?
「cobaco」は一軒家を丸々借りていて、1階が親子の憩いの場、2階がワークスペースになっています。
子どもの近くで働きたいというニーズに応える、ちょうどよい距離感が利用者の方に好評です。
ワークスペースは日額500円で、お子さんの一時預かりは2時間まで1,500円。以降、延長1時間1,000円追加で、最大5時間まで利用が可能です。
2階にはワークスペースのほかにも、親が一人で休息するための「らっこルーム」という部屋もあり、こちらは無料で利用できます。
――どんな方が利用されていますか?
当初は主にフリーランスの方の利用を想定していましたが、最近では在宅勤務が増えた影響で、会社員の利用者も増えています。
ほかにも、資格取得の勉強をする方、再就職に向けた研修を受ける方など様々です。絵本作家の方や、論文執筆の方が利用されていたこともありました。
印象的だったのは、パパとママで交代でひろばを利用されていたフリーランスのご夫婦です。お仕事と育児の両立をお二人で上手にこなしていらっしゃいました。
じつは子育てしやすい世田谷区 今後の課題は?
――世田谷区は子育て支援に手厚い印象があります。
そうですね、特に就学前児への子育て支援は非常に充実していると感じています。
2013年に消費税が増税された際、その財源を使って子育て支援の拡充が進められました。当時、待機児童問題が大きな社会問題となっており、保育園の大幅な増設が目指されました。
一方で、未就園児の「在宅子育て」への支援も重要視され、「各中学校区に1か所地域子育て支援拠点を作るように」とのガイドラインが示されました。
その際、世田谷区はとてもユニークで、民設民営による施設も認めてくださったんです。そのため、私達のような民間団体が施設を運営することができています。
現在、世田谷区内にはおでかけひろばが40か所ほどあります。私たちのひろばのような民設民営が多く、アットホームな雰囲気の中で、親子でゆったり過ごすことができます。
「ベビーカーで歩いていける距離に支援拠点を作ること」が世田谷区の当初の目標でしたが、今、実際にそうなっていると感じています。
――今後の子育て支援の課題はなんだと思いますか?
これは世田谷区に限らないかもしれませんが、就学後の支援が手薄くなることが課題だと思っています。
就学前の子どもたちは、地域や保育園からの手厚いサポートを受けられますが、小学校に入学すると親の負担が一気に増えてしまいます。親が困ったときに相談に乗ってくれる相手が身近にいないケースが多くなり、「突然、梯子を外された思い」と言う保護者の声も聞かれます。
――「cobaco」の今後の活動について教えて下さい
「ワークスペースひろば型」の存在が、区民の方に意外と知られていないように感じます。3歳を過ぎた子の親御さんから「こんな便利な場所があったなんて!」と驚かれることも。必要としている人たちに知ってもらえたら嬉しいです。
運営側としても、利用者一人ひとりの多様な働き方や生き方をサポートできるように心がけていきたいと考えています。
(取材・文:nobico編集部)