おとなしい小学生がすぐにバレる嘘をついた時 子どもの本音と親が伝えるべきこと

吉田美智子
2024.06.28 14:47 2024.07.08 11:50

うつむく男の子

元スクールカウンセラーで2000人以上の親子の悩みを解決してきた吉田美智子さんは、内向的な子には長所が多くあり、その力を伸ばす方法を伝えています。

本記事では吉田さんの著書『声かけで伸ばす内向的な子のすごい力』より、内向型の性格の子が抱えがちな問題について「芯が強く個性的な内向型」と「環境感受性が高いHSC型」のケース別に親の対応方法を解説した一節を紹介します。

※本記事は、吉田美智子著『声かけで伸ばす内向的な子のすごい力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部抜粋・編集したものです

就学前の子どもの嘘は厳しく叱るべき?

見上げる女の子
子どもが嘘をつくときは、そうしないではいられない理由があります。自分を守るため、親の気を引くため、あるいは親の期待に応えたくて嘘を言ってしまうこともあります。嘘の内容は年齢によっても異なります。

子どもは、3歳頃から嘘が言えるようになります。やってはいけないと言われていたことをやってしまい、「やったの?」と聞くと「やっていない」と答えます。でも、「楽しかった?」と聞くと「うん」と答えてしまうので、すぐにバレます。

また、イマジナリー・フレンドと呼ばれる空想上の友だちを持つ子どもの話が嘘と誤解されることもあります。イマジナリー・フレンドとは、子どものこころを支える存在で、幼少期の何割かの子どもが持つといわれます。

また、友だち同士の話の中で自分に注意を引きたくて嘘を言ったり、どっちがすごいかを競い合っているうちに嘘を言ったりすることもあります。

就学前の嘘は他愛ないものが多いですが、親が子どもの嘘に驚き、悪い芽は早くに摘んでおかなければとあせってきつく叱ることがあります。

しかし、子どもを強く叱ったからといって、嘘を言わない子に育てられるわけではありません。子どもの嘘で親が嫌な気持ちになったときは、その気持ちを子どもに伝える程度の対応で大丈夫です。他愛もないかわいい嘘でしたら、受け流してもいいでしょう。

小学生になってからの嘘への対応

遠くを見る小学生の男の子

小学生になると、嘘はいけないことだと理解できるようになってきますが、嘘やごまかしが増える時期でもあります。

宿題をやっていないのに「やった」とごまかしたり、自分の失敗を「わたしじゃない」と否認したりします。親は正直に言ってほしい、人のせいにしないでほしいと思い、強く叱ることがあるかもしれません。

でも、親が叱れば叱るほど、子どもはその場をごまかす嘘をつくようになります。親に反抗できない小さな子どものうちは、叱られるストレスから逃げることしかできませんから、その場しのぎの嘘を言ってしまうのです。

正直に言いにくくて、その場しのぎの嘘を言うのは大人も同じですよね。

子どもに嘘を言ってほしくないなら、子どもを追いつめるような叱り方や感情的な叱り方をするのはやめるようにしましょう。

嘘がわかったときは、親が冷静に「嘘だったんだね」と言うだけで、子どもは悪かったなと感じます。

叱る必要はありません。何がいけなかったか、次はどうすればいいかを教えます。子どもが悪かったと感じて、次はどうすればいいか理解できれば、行動を変えようとするはずです。

心配になるのは、親の財布からお金を盗る、禁止されている遊びをする、友だちのゲーム機を壊すなど、子どもにとって不都合なことを隠すための嘘です。

親の愛情が足りないと感じていたり、逆に親が過干渉で息苦しいと感じていたりするなど、親子関係に何か課題があることが原因になっているケースが多く見られます。

また、子どもがいじめなどに巻き込まれていることもあるので、すぐに対処しましょう。子どもも嘘は悪いとわかっていますが、基本的に親には言いにくいことなので、冷静に時間をかけて話し合ってください。

子どもを責めるだけでなく、親側にも反省すべき点があるはずです。その点も伝えながら、お互いに少しずつ努力して変えていきましょう。

内向型の場合・ごまかしの嘘は、親の口だし不要のサイン

伏せる子どもを見つめる母親

子どもによくある嘘に、部屋を片づけていないのに「片づけた」、宿題をやっていないのに「やった」と言うごまかしがあります。これらは、すぐにバレる嘘ですが、親の期待を裏切るため、イライラして悲しい気持ちになります。

このような嘘が繰り返される場合は、子どもは「親の口だしはもういらない」と感じています。大人が期待する水準まではできていないので、声をかけたくなる気持ちはわかりますが、言っても効果がないときは子どもの気持ちを認めて任せましょう。

子どもが夜遅くになってから宿題を始めて就寝が遅くなったら、「だから言ったでしょ」と叱るよりも日を改めて話し合います。「帰宅後にどう過ごすかは自由だけど、睡眠時間を守るために22時には寝てほしい」のように親の希望を伝えてください。

自分のペースでやりたい内向型の子どもには、このくらい自己管理の自由を与えて本人に考えさせるほうが合っています。

また、子どもは成長するに従って、自分だけの秘密を持つようになります。たとえば、好きな人や憧れる人ができたり、いつかやってみたいことができたりします。それらは、自分の胸にしまっておきたい大切な秘密です。

外向的な子どもはやりたいことを隠さずに伝えて親に協力してもらうこともあるので、親は「言ってくれたら協力できるのに」と思うでしょう。

しかし、内向型は自分の中にとどめて楽しんだり、考えたりしたいのです。何か隠しごとがあり、子どもが言いたがらないとき、子どもが困っていなければ無理には聞かないで少し距離をとってあげてください。

HSC型の場合・「お母(父)さんの気持ちを心配して本当のことを言えなかった?」と伝える

小学生の女の子を見つめる母親

子どもはみんな親の期待に応えたい、親に心配をかけたくないと願っているものですが、HSC型はそれがひときわ強く、その思いが嘘になってしまうことがあります。

本当は学校へ行くのが苦しいときも「楽しいよ」と言うとき、親に心配をかけたくない気持ちや、学校でうまくやっていると思ってほしい気持ちがあります。

また、親の喜ぶ進路を口にすることがあるかもしれません。親が喜ぶとうれしくて、ますます自分から嘘を言ってしまうこともあります。悪い成績を隠すときも、不都合なことを隠すというよりも親をがっかりさせるのがつらいと思っていることがあります。

HSC型の子が嘘をついているときは、「お母(父)さんの気持ちを心配して言えなくなってしまったのかな?」と子どもに問いかけて、本当の気持ちを話してもいいこと、親も話してほしいと願っていることを伝えましょう。

子どもが親の顔色や空気感を読んでいると感じたら、いったん「そうなんだ」とその嘘を受けとめてあげます。そのうえで「でも、違う気持ちもある?」「心配かけたくないと思ったかな?」のように聞いてみるといいかもしれません。

言いにくいことを言えたときは、「言ってくれてありがとう」と伝えます。本音を伝えると相手が喜ぶという体験を重ねて、自分の気持ちを言う力をつけていきましょう。

吉田美智子

吉田美智子

臨床心理士・公認心理師、はこにわサロン東京・代表。外資系企業勤務、臨床心理士の資格取得。東京都・神奈川県・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年はこにわサロン東京を開室。主な技法は、ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析。子育ての相談、親子関係、トラウマケア、ストレスケア、アンガーマネジメントなどの相談に携わる。

X:@hakoniwasalon

 

声かけで伸ばす 内向的な子のすごい力

『声かけで伸ばす 内向的な子のすごい力』(吉田美智子 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊

初対面の人にあいさつできない。友達と遊びに行かない。チャレンジできない。学校の面談で毎回おとなしい子だと言われる。でも心配はいりません。引っ込み思案だからこそ、いいところがたくさん!
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