子どもを手助けする「面倒見のいい親」ほど、自分の都合を優先している可能性

向井秋久

子どもに失敗をさせたくない、と考える親御さんは多いもの。しかし、それは本当に子どものためになっているのでしょうか?本稿では、子育てを思い切って「手抜き」することの重要性について、げんきこども園理事長の向井秋久さんの書籍『子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方』から紹介します。

※本稿は、 向井秋久[著]、モチコ[イラスト] 『子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方』(Gakken)から一部抜粋・編集したものです。

勇気をもって「手抜き」する

・親がつい手を出してしまう
昔、きょうだいが多い時代は子どもはいい意味でほったらかしにされていました。今、子どもの人数が少ないせいもあって、手をかけすぎている親御さんが多いように思います。

逆説的ではありますが、それは、親御さんに余裕がないせいではないかと思うのです。余裕がないからこそ余計に手をかけてしまう。余裕がないから待てないし、思わず手伝ってしまったり、予防線を張ってしまう……という状態に陥っているように見えるのです。

例えば、子どもがコップで自分で飲もうとしてこぼします。こぼされた親は、面倒だからその後、飲ませてあげたり、ストロー付きのコップや倒れないカップを使わせます。そこにコップを使って自分で飲むという挑戦はありません。親の都合で考えると、こぼさないほうが楽です。多くの親御さんが、自分の楽を優先してしまっています。

そうではなく、あえて子どもへの手助けを「手抜き」してみてはどうでしょうか。



・失敗を経験させる
転ばぬ先の杖というか、お子さんが転ぶ前に「そこは危ないから」と手を出して、あらかじめ失敗を回避してしまっています。

それは、転んで痛い思いをしてほしくないという親心もあるでしょう。でもそれだけでなく、転んだ子どもがワーッと泣く、それに向き合うのが面倒だという気持ちもあるように思えます。

「うちの子は絶対転ばせたくない」という親御さんと、「転んでも、立ち上がればいいんちゃう?」という親御さんでは、今の時代、前者の方が多いように思います。しかし、どちらの方がお子さんの生きる力は強くなるでしょうか。

泣いた子どもをフォローしたり、泥で汚れた服を洗濯するより、泣かせない、転ばせないほうがたしかに楽です。でもそれを続けていると、お子さんは転ぶことも、転んで立ち直ることも経験できません。そんなふうに育てられたお子さんは、試行錯誤を体験できなかったために、失敗から立ち上がるたくましさが足りなくなってしまいます。

さらに「この道は安全なんだ」とか「ここは危険だ」と判断する感覚も養われないまま大人になってしまいます。

情報があふれ、どんどん変化していくこの時代を生きていくお子さんのこれからの人生は、自分で選択していくことの連続ですし、そのような危険回避の力がより重要になってきます。さまざまな困難が待ち受ける人生を自分の足で歩いていくためには、自分で判断する力を小さい頃から養っていくことが大切なのです。

もし、ここまでの文章を読んで「たしかに、失敗を回避しているな」と思った親御さんは、今後、少しずつでよいので、お子さんが失敗しそうなとき、手を出さずに見守るよう心がけてみてはどうでしょうか。子ども時代の失敗こそ人生の財産です。お子さんの失敗をただ見守るのは、とても勇気がいります。

また、失敗のフォローをするのはたしかに面倒です。しかし、その大変さを乗り越えた先に「子どもが自分でできるようになった」という、成長の喜びがあります。

「叱る」が難しい理由

私は「ほめる」よりも「叱る」ことのほうが難しいと感じています。それは、自分の感情もコントロールする必要があるため。やはり「叱る」時は、親が困った場面になることが多く、自分のスケジュールや感情などが子どもの行動で左右されることも多いため、ついつい感情的になってしまうことが多いものです。

ただ意外にも、大きな声で叱るよりも一度ぐっとこらえて「伝える」ように叱るほうが、そのあとこじれることなく、子どもも納得して違う行動をしたりすることが多いようです。そのほうが、トータル的な体力は使わなくて済むので、ぜひ、一度試してみてほしいと思います。

子どもと向き合うと同時に、自分とも向き合うこと。「叱る」ときは、そのような気持ちで臨むことが重要かもしれません。

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子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方(Gakken)
日本一の規模の「ほめ育」導入園の保育園から「ほめる育児」のポイントと、子どもたちが伸びる・折れない言葉がけのポイントを具体的に伝授します。今や、「ほめる育児」はよく聞きますが、実際のところほめてばかりではダメ! しかり方のポイントも。