実は子どもに効果がない「避けるべき叱り方」の2つの特徴とは?

小崎恭弘
2024.05.14 15:47 2024.05.27 11:50

叱られる女の子

子どもを上手に叱るというのは、本当に難しいですね。まずは、「できれば避けたい叱り方」と「上手な叱り方」の概要と、それぞれが子どもに与える影響について知っておきましょう。保育学者の小崎恭弘さんが語ります。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年8月号に掲載されたものを一部抜粋・編集したものですです

「叱る」のはダメなことではない

子どもを叱る親

「叱る」って、難しいですね。お母さんとしては、「あんなにきつく叱らなくてもよかったのでは」「もっと別の伝え方があったのでは」などと、モヤモヤ後悔してしまいがちです。

できれば叱ることなく、子どもと楽しく過ごしたいのですが、なかなかそのような関わりだけで子育ては進まないでしょう。

「ほめておだてて、なだめてすかし」などと、日本には古来、子どもとの関わり方のレパートリーが数多くありました。もちろんその1つに「叱る」も存在しますので、現代のお母さん方にも、うまく叱ってほしいと思います。

多様な変化のある環境の中でこそ、子どもは豊かに育ちます。そこには、時として肯定ばかりではなく、否定的な感覚や経験もあっていいと思います。「叱る」=「ダメなこと」と捉えるのではなく、豊かな人生に必要な関わり方の1つと考えてみましょう。

絶対的に正しい叱り方は存在しません。なぜなら、子どもたちは1人ひとりが豊かな個性の持ち主ですし、お母さんの個性も1人ひとり違うからです。また、叱る年齢や状況によっても、それぞれの関わり方は異なるのです。そのうえで有効な叱り方と、避けたい叱り方について触れておきましょう。

できれば避けたい「叱り方」

しゃがむ女の子

・手を上げる
あたりまえのことなのですが、暴力に頼って子どもの行動をコントロールしようとしてはいけません。手を上げなくても、過度に子どもを責め立てるような、言葉の暴力を使うこともダメです。

これらは一見、効果があるように思えるかもしれません。しかし実は、子ども自身の内面の育ちや変化につながらないどころか、むしろ恐怖による支配につながってしまいます。同じように、脅したり、怖がらせたりするような叱り方も、本来の意味から外れてしまいます。暴力や脅しに頼らない叱り方を考えましょう。

・過去を引き合いに出す
「また、こんなことをして!」「いつも同じことを言ってるでしょ!」「いったい、これ何回目!?」。このような叱り方をよく耳にします。確かに、同じことを何度も繰り返されれば、ついつい、このような言い方になってしまいますね。

しかし、これらは過去に起こったことを引き合いに出して叱っているので、実は子どもの心に響きません。なぜなら、もし過去のことを本当に理解し、反省しているのであれば、同じことをするはずがありませんから。子どもは過去を忘れて、今を生きる存在です。「今、ここで」叱ることを意識しましょう。

上手な「叱り方」

うつむく男の子

・叱った理由を伝える
保育園などで、廊下を走っている子どもたちを保育士が大きな声で叱ります。「走ってはいけません!」。その瞬間、子どもたちは走るのをやめてゆっくりと歩きます。さて、その子どもたちはその後、走らないようになると思いますか?

残念ながら、廊下の角を曲がると、もう走っています。さっきは声の大きさに驚いて、そのときだけ、行動を変えただけなのです。

こういう場合は「人とぶつかるから走らないで」「こけたら危ないよ」など、理由を添えることで意識が変わります。なぜ、叱られたのか。その理由を伝えることを意識しましょう。

・どうすればよかったか考えさせる
ついつい「なぜそんなことしたの!」と問い詰めてしまうことがあります。あまりにひどいことをやった場合には、やはりその理由を聞きたいものですが、厳しく詰問してしまうと、子どもは許してもらうことに精一杯になり、自分で考えることができません。

子どもが自分の言葉で考えを言うための時間をあげてください。そのためにも、お母さんは冷静になりましょう。「叱る」とは、その行動を変化させるために行ない、これからの成長に期待をするということです。単に怒りの感情で関わるのは「叱る」ではなく「怒る」です。その違いを意識して、よい叱り方を心がけましょう。

小崎恭弘

小崎恭弘

大阪教育大学教育学部准教授、NPO法人ファザーリング・ジャパン顧問。武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科を修了後、関西学院大学大学院人間福祉研究科後期博士課程を満期退学。西宮市市役所初の男性保育士として採用される。市役所退職後、神戸常盤大学を経て、現職。著書多数。