なぜ思春期になるとイライラする? 12歳から知っておきたい「感情のコントロール」

堀田秀吾
2024.10.01 10:21 2024.08.05 07:00

落ち込む女子高生

勉強や人間関係など、様々な悩みが原因で、イライラしてしまうのは仕方ないことです。しかし、キレて周囲に八つ当たりすることは得策とは言えません。相手を傷つけたり、人間関係を悪化させたりするだけです。

この記事では、明治大学法学部教授・堀田秀吾さんによる書籍『12歳から始める心が折れない技術』からイライラを上手にコントロールする方法について解説します。

※本稿は、堀田秀吾著『12歳から始める心が折れない技術』(秀和システム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

キレるのは仕方がない。問題はキレ方だ

落ち込む男子高生

ちょっとしたイライラするできごとで、感情が爆発してしまうことがあります。いわゆる「キレる」という状態です。

なぜ、人はキレてしまうのでしょうか?

主な理由はストレスです。ストレスがたまると、ちょっとしたことでイライラしやすくなって、キレやすくなります。

脳には、感情をコントロールする「前頭前野」という部位があります。ストレスやつかれによって、この部分がうまく働かなくなると、感情をコントロールできなくなり、キレやすくなります。

もちろん、生まれつきキレやすい性格の人もいます。また、おさないころに親からどなられたり、暴力をふるわれたりした経験があると、キレやすい性格になることがあると言われています。

中学生になると、心にも体にも大きな変化が起こります。さまざまな悩みや迷い、心の中での戦い(「葛藤」と言います)をかかえやすい時期です。

成績が上がらずあせりを感じたり、友だちとくらべて自分ができていないと感じたり、友だちとうまくいかなかったり、家族とケンカしたり、部活がきついと感じたり、自分の体型や顔にコンプレックスを感じたりします。

ほかにも、睡眠不足やホルモンバランスの変化など、さまざまな原因で心が不安定になりがちな時期です。ですから、キレやすくなってしまうのは、ある意味、仕方がないことなのかもしれません。

悩みを抱える女の子
ただ、キレたとき、どういうふうにキレるかによって、そのあとの気持ちや行動、友だち関係などにも大きな影響が出ます。ですから「キレ方」には、少し注意しなければいけません。

たとえば、相手がいる場合、その相手に対してヒドいこと、わざときずつけるようなことを言ったりするのはよくありません。それが原因で、うらまれてしまうかもしれませんし、相手が心をいためてしまうかもしれません。それに、人のことを悪く言うと、自分自身が言われた場合のようにきずつくということをしめした研究もあります。

また、そういう場面を見かけたまわりの人も影響を受けます。他人が暴言をはかれるのを見ただけで、パフォーマンスが25%、創造性(何かを生み出す力)が45%も下がることが、アメリカ・ジョージタウン大学の研究者らの実験でしめされています。

また、キレてどなっている姿というのは、正直かなりおさなく見えてしまい、まったくかっこよくありません。そういう姿が高く評価されることは決してありませんし、評判を落とすだけです。

キレて暴言をはいたりすることは、本人をふくめ、結局だれも得をしないのです。「短気は損気」などということわざもあるくらいです。でしたら、キレたとしても、あとくされなく、まわりへの悪影響がないように、ゆっくり深呼吸でもして落ち着いて、冷静にこちらの不満や要望を伝えるほうがいいでしょう。

冷静に頭の中で状況を整理して、論理的に考えるようにしてください。そうすることで、感情に関わる脳の部位の活動がおさえられるので、いかりの気持ちもやわらぎます。

イライラしたら行動を修正するチャンス!

外をながめる女子中学生

キレるまではいかなくても、イライラすると、何もかもがイヤになってしまい「もうやめた!」と投げ出したくなったりしますよね?

投げ出す理由は、たとえば「イライラしてやる気がなくなったから」ということもあるでしょうし、あるいは「やらないことによって相手をこまらせてやりたいから」という場合もあるでしょう。

でも、それは幼児が駄々をこねる行動とまったく一緒です。12歳にしては、ちょっとおさなすぎる反応と言えます。幼児が、自分のしてほしいことを親がしてくれないと、ダメだとわかっているのに地面に転がって、手足をバタバタしたりします(そして余計に怒られる!)。

これは、ダメだとわかっているのに、わざと相手がこまることをして、自分の思う方向にことを進めようとしているわけです。

そうしたくなる気持ちはよくわかります。でも、そんなことしても、物事はうまく進みませんし、人間関係にヒビが入ることもあります。きっと、よい結果をもたらすことのほうが少ないのではないでしょうか?

感情はどうあれ、やらなければいけないことはきちんとこなしましょう。これが、成長とともに求められるようになってくる行動です。

頭を抱える男の子

みなさんのお父さんもお母さんも、イライラしていても、気が乗らなくても、やらなきゃいけない仕事はきちんとこなしていますよね? そういうものなのです。

ですから、たとえイライラしたとしても、そのときそこで「もうやめた!」となるのは、いくらなんでもかっこよくありません。むしろ「なんでこうなったのかな?」と考えてみましょう。

冷静になって状況を分析し、どうしたら自分をふくめた人すべてがハッピーになれるのかを考えるのです。
 
こういう冷静な分析を集中しながらおこなうと、怒っているときに活発になる脳の部位がおさえられます。結果、イライラもおさまります。怒りという感情は、じつは寿命が短く、数秒間をやりすごせばおさまるということが言われています。

だから、怒ったときは、深呼吸をしたり、10まで数えてみたり、ほんの数秒でいいので、ちがうことで気をまぎらわせると、少し気持ちが落ち着くのです。何か別のことを考えるのももちろん有効です。

イライラしたら、逆にしっかり考えるチャンス!

マイナスの状況をプラスに変える方法を考えましょう。あえて分析的な視点から考えて、行動や判断を修正する。こういう行動のクセをつけることは、必ずみなさんの成長のチャンスになるはずです。

堀田秀吾

堀田秀吾

言語学博士。言語学、法学、社会心理学、脳科学等の分野から言葉とコミュニケーションをテーマに研究を展開。『人間関係の99%はことばで変わる!』『科学的に元気になる方法集めました』等著書多数。

X:@syugo_h

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