2歳から5歳までの「心の荒れ」は学びのチャンス? 困った行動に悩んだ時のケース別Q&A

渡辺弥生
2024.08.22 09:57 2024.08.09 11:50

泣く女の子

癇癪を起こして物を投げたり、親の言葉を無視したり……。
子どもの荒れっぷりに、「育て方のせい?」「愛情不足?」と悩んでいませんか?

しかし、自分を責める必要はありません。
「うちの子、心が荒れてしまったのでは?」と思ったときには、むしろ「心の荒れは学びの一歩である」と前向きに考えて対応することが大切なのだそうです。

本記事では、教育学博士の渡辺弥生先生によるケース別Q&Aをご紹介します。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年9月号から一部抜粋・編集したものです。

「荒れ」は「学び」の一歩です

駄々をこねる子

2~3歳頃はイヤイヤばかりで、第一次反抗期と捉えられることが多い年頃ですが、「親に反抗している」というのは誤解です。

ママやパパに文句を言いたいのではなく、「自分でしたいこと」がいっぱい増えてくる時期なのです。

親と子の間に「愛着」と呼ばれる信頼関係ができると、子どもたちは次に、外の世界に関心を向け、探索を始めます。

バナナを「ブッブー」とクルマに見立てたり、ネット動画のキャラクターのマネをしたりと、「イメージ」を獲得していきます。そのうち、あれをやりたい、これをやりたい、と強く主張するようになります。

4〜6歳あたりは、自己主張パワー全開の時期でもありますが、同時に「我慢しなきゃ」という自己抑制を学ぶ時期でもあります。

ただし、気持ちを切り替えたり、自分の気持ちを伝えるスキルがまだ十分ではないため、泣きわめいたり、すねたり、ものを投げたり。親としては、「なんでこんなに荒れるの?」と思ってしまいますね。

ですが、これは「荒れ」というよりは、子どもが次の一歩を踏み出す、学びのとき。その一歩にどのようにかかわっていけばよいか、「足場かけ」になる対応をご紹介します。

すぐに癇癪を起こす

泣く女の子

Q うちの子、すぐに癇癪を起こすのですが、どうしたら直るのでしょうか?

A 子どもの気持ちを翻訳しましょう。

やりたいことがうまくできないときは、大人でもガーッと気持ちが高まりますよね。「私ね、これがしたいんだけど、うまくできないからくやしくて泣いているの!」と伝えられるといいのですが、子どもはまだ、伝えるための言葉や方法を学んでいません。悲しみなどの強い感情をどう切り替えたらいいのかも、わかりません。

こんなときは、「これができないからくやしかったのね」「〇〇に怒ってるんだね」と子どもの気持ちを翻訳してあげましょう。自分の気持ちがママやパパにわかってもらえると、落ち着くことができます。そして、ちょうどよい言葉と出合えたとき、「次からは『くやしい』って言えばいいんだ」ということに気がついていきます。

お友だちと仲よく遊べない

女の子の後ろ姿

Q 同年代のお友だちと仲よく遊べません。どうしたらケンカがなくなるでしょうか?

A 子どもにできそうな解決方法を教えましょう。

子どもたちをよーく見てもらうとわかりますが、2~3歳は互いに近いところで遊んでいても、黙々と自分のやりたいことをしていて、会話はあまりありません(並行遊び)。3歳になると、ケンカをした経験などが生きてきて、「かして」「どうぞ」といった簡単なルールを使って一緒に遊び始めます(連合遊び)。

ですが、相手が自分とは違う気持ちや考えをもっているとわかるのは4歳を過ぎる頃。相手を思いやりながらごっこ遊びができるようになるのは、ようやく5歳頃なのです。

ですから、「なんで仲よくできないの!」と頭ごなしに叱るのではなく、「お友だちは〇〇をしたいんだって」「順番こしてみよう!」と、状況の受け取り方や、できそうな解決方法を教えてあげましょう。

注意しても、同じことを繰り返す

男の子を叱る母親

Q 注意しても、同じことを繰り返します。どうすればわかってもらえるのでしょう?

A できたときに、具体的な言葉でほめましょう。

原因は、親にかまってほしいからかもしれません。「見て見て!」と注意をひきつけたいことがたくさんあるのに、「あとで」「自分でしなさい」などと、親にかまわれていないと、「叱られてもいいから自分に関心をもってほしい」と子どもは思います。同じことをすれば関心を寄せてもらえるので、繰り返します。

これを減らすには、ふだんできているときに、ほめてあげましょう。「〇〇を守って、おりこうさんだね」と、具体的に「○○」の部分を言葉にしてほめるのがコツです。

大人は、子どもができているときはよく見てやらずに、自分のしたいことをしているもの。日頃、満足がいく程度にかまってもらえていれば、子どもはわざわざ、叱られることをしなくなります。

渡辺弥生

渡辺弥生

教育学博士

筑波大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学の勤務を経て、現在、法政大学文学部心理学科教授。途中、ハーバード大学及びカリフォルニア大学サンタバーバラ校で客員研究員の経験がある。専門は発達心理学。

著書に、『心が荒れている子にちゃんと伝わる12歳までのお母さんの言葉がけ』(PHP研究所)『幼児の子育て はじめてBOOK』(KADOKAWA)などがある。