2歳から5歳までの「心の荒れ」は学びのチャンス? 困った行動に悩んだ時のケース別Q&A

渡辺弥生
2024.08.22 09:57 2024.08.09 11:50

テレビやゲームに夢中になりすぎる

ゲームコントローラーと子どもの手

Q テレビやゲームに夢中になると、親も無視! どちらも禁止するしかないのでしょうか?

A 内容をよく吟味し、時間制限を設けましょう。

子どもは、動きのある新しい刺激を追いかけてみたいところがあります。ましてや、楽しそうな音やカラフルな色とともに展開しているものには、じっと釘づけになってしまいます。

また、この時期は、1人で見せっぱなしにすると、善悪の判断がまだ難しい時期なので、見たものを何でも真似してしまいます。

ですから、親がまず、内容やどれくらいの時間がかかるのか、コンテンツを吟味してから見せましょう。エルサゲート※、虚無動画※などと呼ばれるものは特に注意が必要です。

生活のリズムや習慣を身につけさせるのは親の役目です。「テレビタイム」は、夕飯が終わってからお風呂までとか、物事に区切りがあるのを教えていくとよいでしょう。

文字も数字も興味がない

絵を描く子ども

Q 文字も数字も興味がないようで、拒絶します。うちの子、将来大丈夫でしょうか?

A 関心があるものをきっかけにしましょう。

子どもの興味や関心には個人差が大きいものです。まずは、目の前にいる自分のお子さんのようすをよく見て、どんなことに関心があるのか、注意を向けましょう。

電車だったら、駅の構内で「ここに『電車』って書いてあるね」とか、「3両目に乗ってるんだね」というように、生活の中で文字や数字に関心をもたせていくといいですね。

お子さんの興味を無視して、文字や数字を早く教えなければと思うと、ママやパパの中に「大きな期待」がムクムク湧いてしまいます。すると、お子さんが期待に沿わない行動をするたびに、「あーあ……」「なんで?」と落胆の声や表情が無意識に出てしまうものです。お子さんは、そんな雰囲気を感じとって、いやになってしまいます。

人のいやがることをする

ケース別Q&A 子どもの心が荒れたときの対応の画像1

Q わざと人のいやがることをします。どうしたらやめてくれるのでしょうか?

A 人にやさしくしたくなる言葉がけをしましょう。

「やさしくする」ということがどんなことなのか、まだわかっていない場合が少なくありません。単に相手の反応が面白かったり、自分はよいことをしていると勘違いしていたりするのかもしれません。

相手の気持ちや考えを少し推測できるようになるのは、4歳を過ぎる頃からで、年長さんぐらいになって、やっと相手の表情や声の調子で「怒ってるのかな?」「悲しいのかな?」とわかり始めていくのです。

「〇〇すると、お友だちはうれしいよ」と教えてあげて、絵本などを読み聞かせするときには、登場人物の行動について、それをされた相手の気持ちを教えてあげましょう。

人にやさしくできたときには、「〇〇できたね」と、できるだけ具体的にほめることも大事です。

園の教室から脱走する

叱られる女の子

Q 園の教室から、よく脱走します。じっと座らせておく方法はありますか?

A 出ていってしまう原因を理解しましょう

たくさんの理由が考えられます。教室で何かいやなことが起きている場合、園の外に何かひきつけられるものがある場合、落ち着きがない原因が本人にある場合など、原因を理解してあげることが大切です。

落ち着きのない特徴が、個人が抱えている問題か、環境に影響されているのか、また両方が関わっている場合かを適切に理解しないと、的確な対応をすることができません。

一番ダメなのは、ただ叱るだけのかかわりです。本人が抱える問題をわかってあげないと、元の問題だけでなく、理解してもらえないことへの反抗や不安などの問題が加わってしまう場合が少なくありません。

まずは子どもの言葉に耳を傾け、どういうときに出ていってしまうのかを知るところから始めましょう。

気持ちに寄り添い、足場をかけましょう

ママの話を聞く子

ある年齢になれば、子どもの脳の中に大事なことが勝手に備わるというわけではありません。ママやパパや、周りの人たちが、ハシゴや足場をかけて教えてあげないといけないのです。

親は「早く!」「どうしてわからないの!」と何度も言ってしまいがちですが、肝心の「なぜ」や「何を」が抜けていませんか。大事な理由や目的について、子どもにわかりやすいようにきちんと説明しましょう。できれば絵本などを使って、わかりやすく、よい例や悪い例のモデルを見せ、できた場合にはほめましょう。

そこをしっかりと考えると、親自身も「なぜ急がせているのかしら?」「何をさせたいのかしら?」と、自分勝手に焦っていたことに気がつくこともあると思います。親のイライラは、子どもに大きく影響します(情動感染)。

何より大切なのは、子どもの気持ちに寄り添ってあげることです。「難しいね」「わからないこともあるよね」「くやしいね」といった一言が、子どもの「心の荒れ」には一番よく効きます。子どもが安心して落ち着いた気持ちになってから、子どもなりに理解できるような足場をかけてあげましょう。

渡辺弥生

渡辺弥生

教育学博士

筑波大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学の勤務を経て、現在、法政大学文学部心理学科教授。途中、ハーバード大学及びカリフォルニア大学サンタバーバラ校で客員研究員の経験がある。専門は発達心理学。

著書に、『心が荒れている子にちゃんと伝わる12歳までのお母さんの言葉がけ』(PHP研究所)『幼児の子育て はじめてBOOK』(KADOKAWA)などがある。