子どもに「すごいね!」は逆効果? モンテッソーリが教える「ほめ言葉の選び方」
子どもの成長はうれしくて「すごい!」「よくできたね!」「さすが!」といったほめ言葉が思わず口をついてでるもの。しかし安易なほめ方(おざなりや人中心)ではかえって子どものやる気を削いでしまう可能性があることを、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者である島村華子さんは指摘します。
プログレッシブ教育(進歩教育、オルタナティブ教育)の代表格「モンテッソーリ」と近年最注目の「レッジョ・エミリア」の視点から考える「ほめ方」のパターンを、島村華子さんの著書『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』より紹介します。
※本記事は島村華子著『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)より一部抜粋・編集したものです
ほめるときの3つのポイント
「すごいね」とおざなりなほめ方もダメ、人中心に、「賢いね」と能力をほめたり、「優 しいね」と性格をほめたりするのも効果的ではないとすると、いったいどのようなほめ方をしたらよいのでしょうか。
ほめ方には3つのポイントがあります。
① 成果よりも、プロセス(努力・姿勢・やり方)をほめる
② もっと具体的にほめる
③ もっと質問する
① 成果よりも、プロセス( 努力・姿勢・やり方)をほめる
子どもをほめるときに大切なのは、能力や性格をたたえるのではなく、取り組んでいる過程での努力や挑戦した姿勢、やり方を工夫した点などに言及し、励ましてあげることです。
たとえば、子どもがテストで100点をとったとします。「100点とれたなんて、本当に頭がいいね!」とおおげさにほめる代わりに、「100点をとれるまで努力してきたんだね!(努力)」「いろいろなやりかたを試して、答えを導きだせたね!(やり方)」というような声かけをしてあげましょう。
これによって子どもは、もし次のテストで低い点数をとっても、「自分に能力がな いから、できなくてもしかたがない」とあきらめるのではなく、柔軟にいろいろな方 法を試すことで成功できるかもしれないとがんばれるようになるのです﹇* 12 ﹈。
もちろん子どもが努力をしていた場面を見ていないとき、あるいはそのがんばりの 様子を子どもから直接聞いていないときは、プロセスにコメントするのは誠実さに欠 けます。
この場合は、次にご紹介するように、見たままの具体的な感想を共有したり(もっ と具体的にほめる)、子ども自身に質問(もっと質問する)をしてみましょう
② もっと具体的にほめる
おざなりほめに足りないのは具体性です。
「すごいね」と言われても具体的な理由なしには自分の優れているところ、また努力 が必要なところがわかりにくいものです。
たとえば、上司に「いいね!」と言われるのと、「細かいところまで注意を払った 様子がよくうかがえる資料で、とてもわかりやすかったよ」と言われるのでは、どち らが自分の長所に目がいくでしょうか
「よく書けた文章です」と言われるのと、「各章のまとめが的確で、全体に一貫性が あって、非常に読みやすい文章だった」と言われるのでは、どちらがスキル向上に役 立つでしょうか。
このように具体的なフィードバックをもらった場合のほうが、次のパフォーマンス に向けてモチベーションが自然と上がります[*13]。
「プロセスほめ」でも見たように、途中経過の努力や姿勢、工夫などに言及しながら、 具体的にどんなところがよかったのかを子どもに伝え、「すごい」の口ぐせから脱却 してみましょう。
見たままを具体的に描写するのも手法のひとつです。
「上手」「よくできました」と大人の評価を押し付けることを避け、見たまま(色・形・ 数など)を具体的に表現してみるのです。
たとえば、子どもがおもちゃのレゴをつくってあなたに見せにきたとします。それ を評価したり、おざなりに言うのではなく、具体的に「たくさんの色を組み合わせたら、カラフルになったね!」「ここには違う色を使ってみたんだね!」というような声かけをしてあげましょう。
*13 Hattie, J., & Timperley, H. (2007). The power of feedback. Review of educational research, 77(1), 81-112.
③ もっと質問する
ほめる言葉を伝えるだけでなく、子どもにどんどん質問しましょう。
大切なのは、子ども自身がどう感じたか、どう思ったかということであり、親がど う思うかはそれほど重要ではありません。
質問するときは、「楽しかった?」など「はい」か「いいえ」で答えられるような 広がりのない選択解答形式の質問は避けることが重要です。
「どういうものをつくったのか教えてくれる?」など、会話のキャッチボールができ るような自由回答形式の質問をしましょう。
さらに最上級形容詞(もっとも、いちばん)を使って自由回答式の質問をするのも情 報を引きだすのにとても有効的です。「もっとも」「いちばん」という言葉をつけ加えるだけで、漠然とした質問から、具体的な質問に変化させることができます。
ここでも具体性が重要になります。たとえば幼稚園や保育園などのお迎えに行った ときに「今日はどんな日だった?」と聞いても「わからない」とか「知らない」と子 どもに回答された経験はありませんか。これは、子どもがたくさんあるできごとのな かから情報を整理しきれないからです。
「今日、お友だちと一緒にいて、いちばん楽しいことはなんだった? どうしてそう 思うの?」というように的を絞った質問をしてみましょう。
CASE1 字が上手に書けたとき
✕ 才能あるね!(おざなり・人中心)
◯ すごく集中して何度も書いていたね(プロセス中心)
「才能あるね」という人中心ほめは、子どもの外側だけを見た評価です。同じような 評価が得られないときに子どもは自分の才能を疑ったり、ほかの子どもと自分を比べ るようになります。
これに対して努力やがんばっていた姿を認めてもらった場合、もっとがんばろうと いう内的モチベーションの向上につながります。プロセス中心は結果に固執しないの で、たとえ失敗したとしても、次につながるように励ますことができます。
【こんな言い方もGOOD!】
・文字がイキイキしているね(もっと具体的に)
・自分で書いてみてどう思った?(自由回答式の質問)
CASE2 お手伝いをしたとき
✕ さすがお兄ちゃんだね(おざなり・人中心)
◯ 自分から挑戦してくれたんだね(プロセス中心)
「お兄ちゃん」だからというのは「〜すべき」という大人の勝手な期待の押し付けで す。お兄ちゃんらしく、お姉ちゃんらしくふるまわなかったら愛情がもらえないと考 える可能性もあります。
つまり条件付きの声かけなのです。自覚をもってもらいたいという大人の気もちもわかりますが、子どもにとっては大きなプレッシャーです。
お兄ちゃん、お姉ちゃんという色眼鏡を大人が取り払って、その子自身が考えて行 動してくれたことに対して声をかけてあげましょう。
【こんな言い方もGOOD!】
・一緒にやったら早く終わったね(もっと具体的に)
・お手伝いでいちばんがんばったことは何だった?(自由回答式の質問)
自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
プログレッシブ教育(進歩教育、オルタナティブ教育)の代表格である「モンテッソーリ」と近年最注目の「レッジョ・エミリア」を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士による、エビデンスに基づく最先端の教育メソッドをほめ方・叱り方という「声かけ」に落とし込んだ画期的な最新子育てバイブルです。(※本書は、おもに3〜12歳の子どもを対象としています。)