周囲に馴染めず、クラスで孤立してしまう子が「自分の居場所」を作る方法

堀田秀吾
2024.07.24 22:18 2024.08.22 11:50

スマホをいじる男の子

集団になじめないことは、一見デメリットのように思えます。しかし、視点を変えてみれば、他人が関わらないことで自由な発想力や集中力を伸ばすチャンスでもあるのです。

この記事では、明治大学法学部教授・堀田秀吾さんによる書籍『12歳から始める心が折れない技術』から自分の居場所を見つけるためのヒントを紹介します。

※本稿は、堀田秀吾著『12歳から始める心が折れない技術』(秀和システム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

「集団になじめないとき」は大成功のチャンス

悩みを抱える男の子

集団になじめないことを苦痛に感じる人もいれば、他人に気をつかったり干渉されたりしないので気楽だと感じる人もいます。
もちろん、集団と関わることでえらえるメリット(よいこと)はたくさんありますが、それとは反対に、集団に関わらないからこそえられるメリットもあります。

物事は、何でもそうなのですが、不利な状況こそ発展のチャンスだということは少なくありません。ですから、不利な状況をむしろ発展や成長のチャンスだと考えて、逆に楽しむくらいでちょうどいいのかもしれません。

たとえば、集団に影響されないからこそ、自由な発想をすることができる場合もあります。他人が関わらないことで、目の前にある問題を自分なりの工夫やアイデアで解決し、それがさらなる創造性の向上につながったりもします。周囲に合わせることなく、自分のペースで物事を進められるので、集中もしやすいでしょう。

人間は、何かに集中しているときは、あまりネガティブなことを考えません。ですから没頭すると、その瞬間の幸福度は高いことが研究でわかっています。

また、ある集団になじめなくても、別の集団と関わることによって、新しいチャンスが生まれることもあるはずです。たとえば、新しい趣味や活動にチャレンジすることで、自分と同じ興味を持つ人々と出会う機会をふやせます。脳は新しい刺激が大好きなので、そういった行動は楽しむことができます。

あるいは、あえて自分のスタイルをつきつめることで、行動やファッションなどにおいて、独自の自己表現の楽しさを見つけることができるかもしれません。

さらに、性格が内向的で、なんとなく人づき合いがうまくできなくても、その内向性を強みととらえ、物事を深く考えたり、新しいものを作り出す活動に集中することもできます。創造についやす時間は楽しいものです。

女の子

これらはあくまでも例ですが、ほかにもいろいろな楽しみ方があると思います。大事なのは気持ちです。

「なじめなくてイヤだな」と思っていると、やはりネガティブな気持ちになってしまいます。脳は、自分自身のことばを簡単に信じてしまいます。

ですから、それを逆手に取りましょう。なじめない中でも「この状況を楽しんでやるぞ!」という気持ちでのぞむと、楽しめてしまいます。

さらに、とっておきの技をお教えします。ドイツのマンハイム大学の研究者たちの実験ですが、わりばしなどを横にして口にくわえると、強制的に笑顔が作り出されます。しかも、その笑顔のまま作業をすると、やっている作業を楽しく感じるそうです。

つまり、笑顔の筋肉の動きに脳がだまされて「自分は今、笑っているし、だから楽しいのだ!」と感じるわけです。逆に、口をすぼめてションボリした顔で作業をすると、自分がしている作業を苦しく感じるそうです。

ですから「この状況を楽しんでやるぞ!」という気持ちで、笑顔で行動してみてください。それだけでも楽しくなってきますし、そこで重ねた努力が、あとになんらかの形で自分の成長、そして成功につながることでしょう。

家でも学校でも教えてくれない「居場所の作り方」

うつむく男の子

今どきの12歳は「自分の居場所がない」という悩みがあるそうです。

人間には「所属欲求」というものがあります。どこかに属していたいと思う気持ちです。

人間は社会的な動物です。集団で生活することで、わかったことや学んだことをみんなで教え合い、危険から身を守り、食物を確保し、生存率を向上させてきました。ですから、集団に属しているほうが、安心を感じるようにできているのです。

では「自分の居場所」というのは何なのでしょうか?

まず言えるのは、精神的に快適で、安心感をえられる場所のことでしょう。必ずしも、他人がいる必要はありません。自分一人で自由なことができる空間を「自分の居場所だ」と感じる人もいるでしょう。

逆に、だれかとつながっていることで、安心感をえられる場合もあります。「自分を理解してくれる人がいる」「価値観を共有できる人がいる」「この集団にいると自分自身を素直に表現できる」など、そういったさまざまな環境を自分の居場所と感じることもあるでしょう。

また、自分の能力や役割りや存在価値がみとめられる場所も、自分の居場所と感じる場合があります。

こんなふうに、自分の居場所というのは、いろいろな考え方があります。

また、人によって、それが空間だったり、集団だったり、趣味に没頭している時間だったり、さまざまあるでしょう。ですから、なんとなく「居場所がない」と感じたら、自分がどうしたいのかを考えてみてください。

一人で自由に思いをめぐらせたり、行動したりしたいのか。
だれか自分を受け入れてくれる人と一緒にいたいのか。
自分の話を聞いてくれる人がほしいのか。
自分の能力や価値をみとめてくれる環境がほしいのか……。

このように、自分が必要としている居場所はどういうところなのかを、自分なりに分析してみてください。

机に伏せる少女

それがわかったら、その居場所を実現しやすい空間はどこなのかを考えてみてください。もしかしたら、リアルな空間ではなく、SNSなどのバーチャルな空間かもしれません。学校ではなく、塾や地域のボランティアのコミュニティかもしれません。友だちではなく、家族や親戚かもしれません。

あるいは、空想をしている時間だったり、本を読んでいる時間だったりするかもしれません。なんなら、本当は居場所がほしいのではなくて、単に安心感がほしいだけなのかもしれません。

こういった不安は、紙に書き出してみると、頭の中が整理され、精神的な面にもよい効果があることがいくつかの研究によってわかっています。とくに、日記をつけるのは効果的なようです。

どちらにしても「居場所がない」と感じたら、居場所をさがすための行動をしてみてください。宝くじは買わなければ当たりません。居場所さがしも一緒です。行動しなければ見つかりません。そうやっていろいろ行動しているうちに、そもそも何で居場所なんかさがす必要があったのか、わすれてしまう(つまり問題解決!)こともあるかもしれませんよ。

 

堀田秀吾

堀田秀吾

言語学博士。言語学、法学、社会心理学、脳科学等の分野から言葉とコミュニケーションをテーマに研究を展開。『人間関係の99%はことばで変わる!』『科学的に元気になる方法集めました』等著書多数。

X:@syugo_h

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