思春期になっても子どもが「本音」を話してくれる聞き方・話し方

山下エミリ
2024.10.01 10:08 2024.08.29 11:50

考える小学生

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思春期の入口は10歳頃ともいわれます。親との会話も減り、反発を見せるなど親子のコミュニケーションが難しくなってくるこの時期。子どもとどう関わり、本当の欲求にどうやって触れるべきでしょうか?

育児・教育に悩むの多くの親をカウンセリングしてきた公認心理師の山下エミリさんは、心理学とワークを通して欲求を読み解き、その心に寄り添った子育てを説いています。

本記事では、山下エミリさんの著書より、思春期の子との関わりと子どもの欲求を聞き取るスキルを伝える一節を紹介します。

※本稿は山下エミリ著『お母さんには言えない子どもの「本当は欲しい」がわかる本』(青春出版社)より一部抜粋・編集したものです

思春期こそ「親のサポート」が必要です

悩みを抱える女の子

今、お子さんが無気力な状態だったり、「でも、どうせ、だって」が口癖だったりして自信が持てない状態であったら、自尊欲求が満たされていないかもしれません。

こんな時こそ、お母さんのサポートが功を奏します。

特に思春期の成長には、親から離れる恐れや不安がつきまといます。そのため成長しつつある子どもは、親からのサポートを必要としているのです。

あなたがお子さんの心を理解することで、お子さんの「心」を健康に成長させてあげる適切なサポートが可能になります。

一方で親が子どもの「心」の成長を妨げるような関わりをしていると、本来は成長に向かうはずの子どもは、親の意向に沿うために、「成長しないこと」にしがみついている状態です。

他からの助けがなければ、あえて怖い成長に踏み切ろうとしません。それなのに、親自身が子どもを「成長しないこと」に縛りつけていることに気づかず、「そのうち時期がくれば治るだろうと」と放置していては、いつまでたっても子どもはそこから動けないのです。

このことについて今からお伝えするマズローの言葉は、もしかしたら、とても厳しい言葉に聞こえるかもしれません。でも、後悔しないために「早く気づいてほしい」という愛ある助言と捉えていただけたらと思います。

「私たちは子どもが大人になるまで待ち続けて、ついに心が病み、自立できなくなってから、子育ての間違いを証明するか、子どもの心に寄り添って自立する子に育てるか、そのどちらも選べるのです。」

この言葉は、脅しのようにも聞こえるかもしれません。でも、私も実際に後悔している人たちにたくさん出会っています。子どもはあっという間に大きくなります。だから、早く軌道修正をしてほしいと心から願っています。

でも、どちらを選ぶのかは、あなたが決めることなのです。では、どうしたらお子さんの尊重欲求が満たされるのでしょうか?

それはとてもシンプル!お母さんがお子さんの欲求に気づいて、お子さんの欲求を満たしてあげることができればいいのです。

「本当は欲しい」を聞き取る3つのスキル

勉強する女の子

お子さんの欲求を正しく理解する心理学のスキルがあります。ざっくりになりますが、ポイントをお伝えします。

① 話をちゃんと聞く
② 欲求をちゃんと聞く
③ 気持ちを理解したことを伝え返す

ことです。一つずつ説明しますね。

①話をちゃんと聞く

ママの話を聞く子

あなたのお子さんが、お友だちが家族でハワイに行った話をした時に、お子さんはその話の何かが印象に残ったからこそ、あなたに話をしていると思って、ちゃんと話を聞いてあげてください。

あなたの興味ではなくお子さんの興味に耳を傾けるということです。

先ほどの図式を思い出してください。あなたの興味が「ハワイに行きたい」であったとしたら、お子さんから何を聞いても「子どもはハワイに行きたいと言っている」としか聞こえてきません。

②欲求をちゃんと聞く

お子さんの気持ちの質問をするのです。

「それを聞いて、どう思ったの?」

あなたのお子さんが、お友だちから話を聞いた時に何を思ったのかを言語化できるようにお子さんから聞いてあげるのです。

③気持ちを理解したことを伝え返す

勉強に悩む

お子さんの気持ちはちゃんとわかったということを伝え返すことで、「気持ちを伝えていいんだ」ということを子どもは学びます。

小さい時からいい親子関係の構築ができていれば、子どもが思春期になった時に「心」のシャッターを下ろすことはありません。

親は急に反抗期が来たと思うようですが、小さい時からの親子関係の積み重ねが顕在化しただけなのです。

お子さんの話をちゃんと聞いてあげると、お子さんは、ハワイに行きたいということではなく、案外、仲のよい幸せそうな家族の様子がうらやましいということである

かもしれません。もし、そうだとすると、家族の中でお子さんがどんな立場にいるのかをよく見てあげることができます。

「心」に寄り添ってあげることができますよね。少なくとも、子どもは「ハワイに行きたい」ということを伝えたかったわけではないことを親が理解できます。

そうすると、目的は費用を貯めてハワイに行くことではなく、お子さんの心の欲求を満たしてあげることになります。

同時に、お子さんは、お母さんがわかってくれたことに安心し、「私の気持ちを尊重してくれた」という尊重欲求を満たされるのです。

お子さんが本当に伝えたい心の声と、親が聞きたいことのギャップが「欲求不満」を生んでしまいます。

あなたは、お子さんが何を伝えたいのか、「本当は欲しい」と思っている「心」の声を聞き取ってあげるだけでいいのです。

これがお子さんの心に寄り添ってあげられるということです。

山下エミリ

山下エミリ

公認心理師。一般社団法人キャリアエデュケーション協会代表理事。筑波大学大学院博士課程前期修了。カウンセリング修士取得。TBSドラマ「積み木くずし」で暴走族のリーダー役としてデビュー後、人気モデルとして活躍。3男1女の子育て中に大学・大学院で心理学を学び、スクールカウンセラーやキャリアコンサルタントを経て、2019年にキャリアエデュケーション協会を設立。心理学の理論とワークに基づいた「賢く幸せな子育て」を伝授している。