「手足口病の子を段ボール箱で隔離」は間違っている? 医師の見解と保育士の本音を聞いてみた

吉澤恵理
2024.10.15 16:54 2024.09.13 11:52

泣き止まない0歳の赤ちゃん

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2024年の夏は、手足口病が過去最悪とも言われるペースで感染が広がり、警報基準値を上回る都道府県もありました。子ども同士から始まり、大人へも感染しやすい手足口病に苦しめられた親は少なくないです。

そんな中、福岡県の保育園で手足口病の0歳園児を段ボール箱で隔離されていたことで、市から園が改善を指導されたことが報道され議論を巻き起こしています。

SNS上でも段ボールの箱に入れて隔離するという行為に対してそれを批判する声と、保育園側の対応もやむを得ないと擁護する声、それぞれが上がっています。

五良会クリニック白金高輪の理事長であり、竹内内科小児科医院の院長でもある五藤良将医師に、手足口病に関する詳しい情報をお聞きしつつ、また現場で苦闘する保育士の方の本音もお聞きしました。(取材・文/吉澤恵理)

手足口病からまれに重篤な合併症を引き起こすことも

病院の診察室
病院の診察室

Q1: 手足口病とはどのような病気でしょうか?

五藤医師「手足口病は、主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによって引き起こされるウイルス性感染症です。主に5歳以下のお子さんがかかりやすい病気ですが、大人でも感染することがあります。

典型的な症状としては、軽度の発熱、口腔内にできる潰瘍(水疱)、そして手足に現れる水疱性の発疹が挙げられます。時には、口の周りや臀部にも発疹が出ることがあります。通常、これらの症状は7〜10日程度で自然に治まりますが、まれに髄膜炎や脳炎といった重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です」

水疱が乾燥するまでは特に注意が必要

Q2: 手足口病の感染力はどの程度でしょうか?

五藤医師「手足口病は非常に感染力が強い病気です。特に発症初期が最も感染しやすい時期となります。感染経路としては、感染者の唾液、鼻水、便、または水疱の液体を通じて拡散します。

水疱が乾燥するまでは感染のリスクが高いため、この期間は特に注意が必要です。また、大人も感染する可能性があり、家族内での感染がよく報告されています。大人の場合、症状が軽度で自然に回復することが多いのですが、時には発疹や倦怠感などの症状が強く出ることもあります」

手足口病が法律によって出席停止の対象になっていない理由

Q3: 手足口病にかかった子どもの登園・登校についてはどのように判断すべきでしょうか?

五藤医師「日本の学校保健安全法では、手足口病は出席停止の対象疾患に指定されていません。そのため、原則として登園・登校に制限はかかりません。これは、多くの場合、手足口病が軽症で自然治癒するためです。

しかし、お子さんの全身状態を考慮して判断することが重要です。具体的には以下の点に注意して判断してください。

1. 高熱が続いている場合
2. 口内の潰瘍が痛くて食事や水分摂取が難しい場合
3. 強い倦怠感や不機嫌が見られる場合

これらの症状がある場合は、お子さんの体調回復を優先し、自宅での静養をおすすめします」

大人は子どもより重症化することがある

寝ている赤ちゃん

五藤医師「手足口病は主に子どもがかかる病気ですが、免疫力が低下している大人が子どもとの接触によって感染することもあります。大人が感染した場合、子どもよりも症状が重くなることがあります。

具体的な症状としては:
•手足に強い発疹が現れる
• 関節痛を伴う
•強い倦怠感を感じる

などが挙げられます。特に、免疫力が低下している場合(妊娠中や慢性疾患がある場合など)は、合併症を引き起こすリスクもあるため、早めに医療機関での診察を受けることをお勧めします」

保育士の本音「保育園が子どもを預かれなくなってしまう」

保育室のイメージ

一方で現場の保育士の方は手足口病への対応について議論されいてる内容について、どう感じているのでしょうか? 東京都内で勤務する保育士の方の意見をお聞きしました。

「保育士の本音としては欠席して欲しい。でも、親は手足口病で休んでと言われるより預かってもらえる方が助かっているのが現実。当事者以外の方の声が大きくなって、保育園が世論に従って預からなくなる方が社会問題だと思います。

子どもから先生がうつされて先生が休みになったら園が回りません。運営の事を考えると手足口病の子を受け入れるのはリスクが高いです。

行政が今回の件で指導をするということであれば、一方で病児保育をもっと増やすべきでは? 全てを園に押し付けられるのは苦しい。現場を見てほしい」

手足口病の予防と対策 医師からのアドバイス

最後に五藤医師から読者のみなさまへのアドバイスがあります。

五藤医師「手足口病の予防には、基本的な衛生管理が非常に重要です。以下の点に気をつけましょう

1. こまめな手洗い:特に食事前、トイレの後、外出後は念入りに
2. アルコール消毒の徹底:手指の消毒を習慣づける
3. おもちゃや生活用品の定期的な消毒:特に乳幼児が口に入れるものは注意
4. 感染者との濃厚接触を避ける:特に水疱が乾燥するまでは注意が必要

大人の場合、感染したお子さんの飛沫を吸い込んだり、タオルの共有、おむつ替えなどで排泄物を触ったりして感染する傾向があります。手洗いや消毒をこまめに行うことが予防策として有効です

手足口病は通常自然に治癒する病気ですが、適切な対応と予防策を講じることが大切です。
症状が重い場合や不安がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。正しい知識を持ち、冷静に対応することで、お子さんと家族の健康を守ることができます」