『子ども版 これで死ぬ』が教える「低山での道迷い」の怖さ
※写真はイメージです
登山は子どもにとって貴重な体験。しかし、標高の低い山であっても油断は禁物です。意外と迷いやすい低山で起こった事故の事例、そして山で命を落とさないために知っておきたい知識を、書籍『子ども版 これで死ぬ 』よりご紹介します。
※本稿は書籍『子ども版 これで死ぬ』(羽根田治 監修,藤原尚雄 監修,松本貴行 監修,山中龍宏 監修,大武美緒子 文/山と渓谷社刊)より一部抜粋・編集したものです。本記事の内容は同書より基本的な情報の一部を掲載しています。より詳しい情報は同書や、専門の解説書や講習会などをご参照ください。
道に迷ってしまう
5月上旬、新潟県の標高900m 前後の低山が連なる山に向かった父親と6歳の男の子が下山せず、約3週間後、登山道から約1.5km離れた沢沿いで死亡しているのが見つかりました。死因は低体温症でした。この山域では、この時期例年残雪があります。ふたりは、道を誤り迷って沢を下ったと見られています。当初家族からの情報があった山を中心に捜索が行なわれましたが、別の山での目撃情報が寄せられ捜索範囲を広げていました。
死なないためには
低山の道迷いの危険を知ろう
道迷い遭難は、けわしく山深いところだけではなく、町に近い標高の低い山にも危険が多くひそんでいます。低山には、林業などで使う作業道やけもの道が交差していたり、現在は使われていない廃道が混在していたりする箇所が多く、迷い込みやすいのです。残雪や落ち葉で本来の登山道が隠れてしまっていることもあります。登山には地図、コンパス、地図アプリは必携で、その使い方をマスターしておくことが大切です。できれば子どもと一緒に学ぶとよいですね。
おかしいなと思ったら引き返す
おかしいなと思っても、下ればなんとかなるだろうと楽観的な方に思い込もうとする心のメカニズムが人には働きます。この思い込みが、事態を一層深刻化させてしまいます。分岐ごとや休憩のたびにこまめに登山用地図や地形図で現在地を確認しながら進みましょう。「間違えているかも」と思ったら、確実に合っている地点まで引き返すのが基本です。
沢を下らない
迷ったときに下りたくなるのが沢ですが、これは絶対にNG。沢はやがて滝や崖があらわれます。そこを無理に下ろうとして転滑落し動けなくなる事例が多いのです。つらくてもピークや尾根を目指して登り返します。
現在地の確認には地図とコンパスを使いますが、スマートフォンに登山用地図アプリを入れておくと、GPS機能で歩いたルートが記録できたり、現在地が地形図上に表示され便利です。アプリを使う場合も、バッテリー切れに備え紙の地図との併用がおすすめです。
▲登山用地図アプリは、事前に地図をダウンロードしておく必要がある。予備のモバイルバッテリーの携行も必須だ(※写真はイメージです)
登山計画書をつくり家族と共有する
登山者やその家族などから救助要請があった場合、登山計画書に行程などが正確に記されているかが、救助、捜索の初動を左右します。登山装備の一つと考えましょう。登山計画書は、所轄する警察署にメールでも事前に提出でき、登山用地図アプリから登山計画書をつくり提出できるシステムと連携している都道府県もあります。提出用とは別に、家族や近しい人に一部渡していくのも忘れずに。行動予定を共有し、帰宅予定日時も伝えておくことが遭難時の早期発見につながります。
▲登山計画書には、氏名、緊急連絡先、行程、エスケープルート、装備などを記入する。登山計画書作成アプリの、山と自然ネットワーク「コンパス」は、連携している一部の警察に、作成と同時に提出できる(※写真はイメージです)
【著者・監修者紹介(順不同)】
『子ども版 これで死ぬ 』羽根田治(監修),藤原 尚雄(監修),松本 貴行(監修),山中 龍宏(監修),大武 美緒子(文)/山と渓谷社
ベストセラー『これで死ぬ』シリーズの第2弾!
毎年、川や海など外遊びでの子どもの事故はあとを絶ちません。
しかし、外遊び中に出会う危険は、知っていれば避けられるものが多くあります。
本書では、「お菓子を拾おうとしておぼれる」「高波にさらわれる」「ランドセルが遊具に引っかかる」 など川・海・山・身近な公園で実際に起きた子どもの事故事例28を紹介。
それぞれの場所で事故防止策・安全啓発を発信しているプロの監修のもと、どうしたら事故を防ぎ、安全に楽しむことができるかを徹底的に解説しました。
また、各章の最後には、最も重要な安全の話がつまっている漫画解説付き。 子どもと一緒に、外で安全に遊ぶ方法について学ぶことができます。