「子どもを助けようとしておぼれる事故」はなぜ起こる? 『子ども版 これで死ぬ』が教える川の危険

羽根田治(監修),藤原 尚雄(監修),松本 貴行(監修),山中 龍宏(監修),大武 美緒子(文)
2024.10.17 11:05 2024.10.24 11:50

川

※写真はイメージです

思わぬ危険が潜んでいるのが、川の怖い所です。キャンプなどで命を落とさないために事前に親子で学びたい「川の知識」を、書籍『子ども版 これで死ぬ 』よりご紹介します

※本稿は書籍『子ども版 これで死ぬ』(羽根田治 監修,藤原尚雄 監修,松本貴行 監修,山中龍宏 監修,大武美緒子 文/山と渓谷社刊)より一部抜粋・編集したものです。本記事の内容は同書より基本的な情報の一部を掲載しています。より詳しい情報は同書や、専門の解説書や講習会などをご参照ください。

助けようとしておぼれる

4月下旬、大阪府の安威川で、川で遊んでいた13歳の男子中学生と小学生3人のうち、2人が深みに流されました。ジョギング中だった30代男性が助けようと飛び込みましたが、男子中学生と9歳男の子は、別の通行人の男性らに救助されました。男子中学生は3日後に死亡、飛び込んだ男性は、水深2.5m付近の川底で見つかり、病院に搬送後死亡が確認されました。事故が起きたのは市街地を流れる川で、河川敷は公園として整備されています。

子どもたちは、川を横切るように敷かれたコンクリートブロックを飛び石がわりにして川の中央付近で遊んでいたところ、濡れたコンクリートで滑って転倒したか、流れに足元をすくわれるなどして転倒、下流に流され深みにはまったと見られています。ブロックを川の水が越えている地点の水深は足首程度ですが、数メートル下流は、増水時の水の流れで川底が深くえぐられて、水深5~6mの深みになっていました。

死なないためには

飛び石は危険

川と飛び石

※写真はイメージです

川に設置された人工構造物は、コケなどで滑りやすい、複雑な流れが起きているなど危険が多いです。見慣れた場所で、水深が浅く流れもゆるやかな場所でも雨などで様子は一変します。川底に敷かれたコンクリートブロックなどは、飛び石にして子どもが遊びたくなる場所でもあります。危険な場所だと繰り返し伝えましょう。

助けに行くのはちょっと待って!

子どもがおぼれている。その場に居合わせたら、なんとかして助けなければと思うでしょう。ですがおぼれた人を助けようとした人(川に立ち入って手や棒を差し伸べるなどを含む)のうち約14%で、救助者がおぼれる、流されるなどの二次災害が起こっています(公益財団法人河川財団調査による)。

水の中に入って救助しようとする行動はリスクが高く、専用の装備を持っている人や、訓練を積んだ人だけが救助にあたることができます。

わたしたちにできることは、119番への通報で救助を要請し声をかける。安全な場所へ指示、誘導する。浮き輪などの浮力になるものがあれば投げる。これらの水の中に入らない方法で救助を試み、自身の身を守ることを忘れずに行動しましょう。

川での水難事故は、起こってしまうと救助がとても困難な事態になってしまいますが、未然に防ぐことはむずかしくありません。痛ましい事故、二次災害を起こさないためには川の危険を正しく知り、ライフジャケットを着用し、安全な場所で遊ぶことにつきます。

【著者・監修者紹介(順不同)】

大武美緒子

フリーライター・編集者。山と溪谷社で登山専門誌、ガイドブック編集に携わったのちフリーに。二児の子育て中、親子でアウトドアを楽しむ。

山中龍宏

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長。

松本貴行

横浜国立大学大学院教育学研究科修了。成城学園中学校高等学校保健体育科専任教諭。公益財団法人日本ライフセービング協会副理事長、教育本部長。溺水事故はレスキューよりも、いかに事故を未然に防ぐか?が最重要であると、日本で初めて水辺の安全を誰もが学べるICT教材「e-Lifesaving」を開発。内閣府消費者庁消費者安全調査委員会専門委員。

羽根田治

フリーライター、長野県山岳遭難防止アドバイザー、日本山岳会会員。山岳遭難や登山技術の記事を、山岳雑誌や書籍で発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている。

藤原尚雄

1958年大阪府出身。大雪山系の麓で、大自然に囲まれた生活を謳歌している。雑誌『Outdoor』(山と溪谷社)の編集、専門誌『カヌーライフ』の創刊編集長を務めたのち、フリーランスとしてアウトドア関連および防災関連の雑誌、書籍のライターとして活動する傍ら、消防士、海上保安官、警察機動隊員などに急流救助やロープレスキュー技術を教授するインストラクターとしても活躍中。

子ども版 これで死ぬ

『子ども版 これで死ぬ 』羽根田治(監修),藤原 尚雄(監修),松本 貴行(監修),山中 龍宏(監修),大武 美緒子(文)/山と渓谷社

ベストセラー『これで死ぬ』シリーズの第2弾!

毎年、川や海など外遊びでの子どもの事故はあとを絶ちません。
しかし、外遊び中に出会う危険は、知っていれば避けられるものが多くあります。

本書では、「お菓子を拾おうとしておぼれる」「高波にさらわれる」「ランドセルが遊具に引っかかる」 など川・海・山・身近な公園で実際に起きた子どもの事故事例28を紹介。
それぞれの場所で事故防止策・安全啓発を発信しているプロの監修のもと、どうしたら事故を防ぎ、安全に楽しむことができるかを徹底的に解説しました。

また、各章の最後には、最も重要な安全の話がつまっている漫画解説付き。 子どもと一緒に、外で安全に遊ぶ方法について学ぶことができます。