反抗期の中学生がもっとも嫌う「親の口調」とは? 言い方次第で子どもの反応は変わる
子育ての試練ともいえる、子どもの反抗期。子どもの態度につい親もイライラし、ヒートアップしては疲れてしまうことも多いのではないのでしょうか。
『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』のMC、福田遼さん、秋山仁志さんが「反抗期を乗り越えるためのテクニック」について語った一遍を、著書より抜粋してご紹介します。
※本記事は福田遼,秋山仁志『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです
Q 反抗期がひどいです
中学2年の息子がやることをやらず、反抗期がひどいです。反抗をするときは私が言いすぎてしまったときです。片付けができなかったり、空のお弁当箱を出さなかったり、宿題をしなかったりが続くと、良くないとはわかっていても、つい息子にきつく言いすぎてしまい……。どうすれば反抗期を乗り越えられるでしょうか?
A 「I(アイ)メッセージ」で乗り越えよう
明日からすぐ使えるテクニック、「Iメッセージ」とは
ひとし:反抗期(※1)のお子さんを抱えるお母さんからの相談ですね。子どもが反抗する上に、自分もきつい言い方をしてしまう、と。
はるか:こういう反抗期のお悩みってすごく多いんです。だから本当は「反抗期とは何か?」というレベルから考えるべき問題なんだけど、今回は、明日からすぐに行動に移せる方法をお話ししようと思います。
ひとし:おぉ、いいね!
はるか:反抗期の子どもに対しては、「YOUメッセージ」ではなく、「Iメッセージ(※2)」を使いましょう。
ひとし:……何もわかんないな。
はるか:そうだよね(笑)。YOUは英語の「あなた」、Iは「私」という意味です。
ひとし:うん。それでどういうこと?
はるか:本当に文字通りなんだけど、YOUメッセージというのは主語が「あなた」の伝え方です。たとえば「片付けて」とか「勉強しなさい」って、どちらも言葉には出してないけど、主語をつけるとしたら「あなたが片付けて」「あなたが勉強して」になるよね。これを使わないようにしよう、というお話です。
ひとし:へえ。Iメッセージはどういうもの?
はるか:Iメッセージは、主語が「私」の伝え方。たとえば「(私が)うれしいな」「(私が)悲しいな」「(私が)ちょっと困るな」なんかがそう。
ひとし:じゃあ、今回のお悩みにあるシチュエーションでIメッセージを使うと何になるの?
はるか:「お母さん(お父さん)、片付けてくれたら助かるんだ」とか、「散らかしっぱなしだと困るな」とかかな。
※1 反抗期:発達心理学の分野では、第1次と第2次に分けられる。第1次反抗期は、2歳半から3歳頃で、いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる時期。第2次反抗期は、12歳から17歳頃で、思春期である中学生頃がピークとされる。時期に個人差はあるが、子どもから大人へ成長する過程で、誰もが通るものとされている。
※2 Iメッセージ:アメリカの心理学者トマス・ゴードン博士が提唱したコミュニケーションの技法。相手の言動に関して、自分がどう感じるかを、「私」主体の言い方で表現することにより、相手の自主性を損なわず、また相手に不快感を与えず相手を動かすことができるとした。参考文献『親業 子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方』(トマス・ゴードン著、近藤千恵訳、大和書房)
反抗期は「言われてやる」のが嫌な時期
ひとし:なるほどね。YOUメッセージとIメッセージが何かは一応理解したけど、なんでそれが反抗期の子どもに有効なのか、みたいなのがまだ全然わからないんだけど……。
はるか:そもそも反抗期って、子どもの「自立したい」という気持ちの表れなんだよね。「自分でどうにかしたい」とか「言われなくてもわかってるよ!」という気持ちが反抗的な態度として表れている。
ひとし:うん。
はるか:つまり、反抗期は「言われてやる」のが嫌になってくる時期ということ。そんなときに、YOUメッセージで「〜しなさい」と叱られる。この伝え方って、指示されてる感じがあるじゃない? 命令されてる気がするから、子どもはつい反発したくなるんです。
ひとし:たとえ正論であっても、ってことか。
はるか:そうそう。一方で、「片付けてくれたら助かるな」のように、Iメッセージで親が自分の気持ちを伝える形だと、指示されてる感覚はなくなると思わない?
ひとし:ないね。不思議だ。
はるか:ここが大事です。一見同じようなことを言っているように見えても、「指示された」と思うか、「お母さん(お父さん)が困るんだな」と思うかで、子どもの心境は全然違うんですよ。後者は、子どもが持つ「自立したい」って気持ちを邪魔しません。
命令口調をやめると、子どもの行動が「自発的」になる
ひとし:なるほど。これは実際はるかも、先生として子どもたちに使ってたの?
はるか:もちろん! 「Iメッセージに助けられた!」と言えるくらい、かなり頻繁に使ってたよ。
学校の先生と言えば、「姿勢良くしなさい」「勉強しなさい」とか指導するイメージがあると思います。最初は僕もそうやって、ちょっと偉そうに指示を出してたんだけど、子どもの心はどんどん離れていく。全然言うことを聞いてくれないし、なんかギクシャクするんだよね。
それで困っていたときに、このIメッセージの考え方を知って、さっそく実践するようになりました。たとえば、何かを手伝ってほしいとき。それまでは、「人のために動くのって大事よ」「みんなも手伝って」なんて説教っぽく話していたところを、「先生、今、大変やけん、手伝ってくれんー?」とか「手伝ってくれたら、めっちゃ助かるんだけど!」みたいに伝えるようにした。すると、子どもたちが気持ち良いくらいに動いてくれるようになったんです。
ひとし:へえ。「静かにしてくれたら先生うれしい」とかもIメッセージかな?
はるか:そうそう! 「君たち静かにしてて偉いね」じゃなくて、先生がうれしい。僕が助かるって伝えるわけです。
ひとし:たしかに。俺も子どもの頃「片付けなさい!」って言われてもしなかったけど、「お母さん、食器洗うの大変そうだな」とか感じたら、自分で洗ったりしてたかも。
はるか:そう! 子どもの行動が自発的になるんだよね。親が大変そうだから自分がしたい。親を喜ばせたいから自分がしたい。人に指示されたんじゃなくて、自分から行動するから気持ち良く動けるんです。
すぐにうまくはいかないけれど、うまくいったら「ありがとう!」
ひとし:とはいえ、そういう伝え方をしても、子どもが自発的に動かないパターンはないかな?
はるか:もちろんあるある! でも、そもそも「子どもが必ず行動してくれる」って前提で考えていたら、うまくはいきません。命令・指示する形のYOUメッセージと違って、Iメッセージは「お願い」や「提案」に近いもの。だから、「行動してくれるかもしれないし、行動してくれないかもしれない」がベースです。
その前提を見失ってしまうと、子どもが思ったような行動をしてくれないときに、こっちが落ち込んだりストレスを感じるかもしれない。あるいは「やっぱり叱ったほうがいいんだ!」と思ってしまうかもしれません。
ひとし:なるほど、それはおもしろい視点だ。
はるか:「Iメッセージを使って『動かして』やろう」という下心があるかどうか。子どもはそういう空気を敏感に感じ取っています。そんな下心が伝われば、子どもは押し付けられてるように感じるし、きっとお手伝いはしないはず。
だから僕はこんなふうにしていました。「うれしいな」「悲しいな」とたくさん伝えていると、たまに動いてくれるときがある。そのときに、気持ちが伝わるように「ありがとう!」と感謝するんです。そうしたら子どもはすごく喜んでくれるし、それが何度か積み重なっていくと、だんだん子どもも心を開いてくれるんだよね。それで、気づいたら反抗的な態度もなくなっていく。
だから、このお母さんにも、焦らず、少しずつ信頼関係を再構築していくようなイメージを持ってほしいと思います。
ひとし:たしかに、すぐにうまくはいかないかもしれないよね。
「相手を思惑通りに動かそうとするとお互いにストレスがたまる」って、俺は会社に勤めて、マネジメントする立場になってすごい感じることだな。自分の思った通りに行動してもらおうとするより、いかに感謝を伝えるかとか、そっちが大事だよね。
はるか:うん。やっぱり人と人とのコミュニケーションの話だから。「こうすればこうなる」「コントロールしよう」とは思わないほうがいいと思います。
はるか先生のワンポイント
Iメッセージ
「私」を主語にして気持ちを伝えよう。
✖(あなたが)片づけなさい!
○(私が)片づけてくれたら助かるな!
『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(福田遼,秋山仁志/PHP研究所)
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子どもにガミガミ怒ってばっかりの自分に、ドンヨリ。 うちの子の将来、このままでだいじょうぶかな、と不安になる……。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えるすべての親御さんに届けたいーー。
元小学校教師のはるか氏と、友人でラジオ番組プロデューサーのひとし氏の二人が、子育てに悩める親御さんの気持ちに寄り添い、「明日やってみよう」と思える、22の「神回答」をお届けします。