発達障害の子の「できない」にイライラ…父親失格だったと後悔するアナウンサーの反省

赤平大
2024.11.11 22:47 2024.11.18 11:40

1人で歩く小学生※写真はイメージです

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発達障害支援の手厚い私立中学への入学を目指していた6年生の12月、突然「麻布中学を受けたい」と言った発達障害の息子さんの意思を尊重しつつ、二人三脚で中学受験を突破した元テレビ東京アナウンサーの赤平大さん。

高IQを持つ一方で集中力が30分以上続かない等の発達障害の様々な特性と向き合いながら、赤平さんは様々な工夫とメソッドでお子さんを導いてきました。

そんな赤平さんも、当初は発達障害を理解できずイライラとストレスを抱えてしまい苦しんだ過去があります。著書『たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。』より、その後悔を記した一節を紹介します。

※本記事は赤平大著『たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集したものです。

不勉強な父の大失敗「できないのは”障害のせい”なのに」

勉強をする小学生の子の背中

息子は小学校入学と同時に、急速に困りごとや問題が増えていきました。いわゆる”小1の壁”です。授業はもちろん給食の時間や登下校……小学校では、すべての場面でクラスメイトと一緒に集団行動が求められます。ひとりで遊んでいてもよかった保育園や療育施設のようにはいきません。

発達障害の子どもはここでつまずくことが少なくありません。毎日必ず何かしら忘れ物がありました。上履きを履くことが苦手で、いつも裸足で過ごしていました。教室でイスにジッと座っていられません。

授業中に立ち歩いたり教室から出て行ってしまうこともしばしば。入学して最初の授業参観。行ってみると教室に息子の姿がありません。「どこにいるんだ!?」と思ったら、教室の後ろで床に寝転がって本を読んでいたこともありました。通学路も油断できません。

ボーッとして気づかないのか赤信号を無視して横断歩道を渡りだしたり、何かが気になって急に車道に飛び出してしまうこともありました。この頃は毎日、担任の先生からの電話がありました。

その日起きたことを先生から報告してもらい、同時に翌日の”持ち物”や提出物を先回りして教えてもらいました。

遅刻やトラブルに巻き込まれないよう学校の登下校は毎日付き添いました。それでも発生する忘れ物を取りに自宅から小学校まで往復したことも数え切れません。当時すでにフリーアナウンサーだったのでできましたが、テレビ東京にいたサラリーマン時代だったら絶対に無理でした。

その頃の私は発達障害に対しての正しい知識を、まったく持ち合わせていませんでした

「なんで息子は何度も忘れ物をするんだ……?」
「もっと厳しく、徹底的にしつけをしたほうがいいんじゃないか……?」

息子に対して、「なぜできない」という怒りが先に来てしまいます。

「信号をよく見て!」「なんでプリントを忘れてきたんだ!」「なんでみんなと仲良くできないんだ!」「ご飯をポロポロこぼさない!ちゃんと食べなさい!」「怠けるな!なんでちゃんとできないんだ!」「何度言ったらわかるんだ!」叱ってばかりいました。

できない息子が悪いのだ、と。

発達障害の専門書を読んで初めて見えた「子どもの本当の姿」

遠くを見る小学生の男の子

今、この本を書きながら思います。昔に戻ってそんな自分を殴り倒したくなるくらい、ひどい父親です。そんなある日、ふと自宅の本棚にあった一冊の本が目に留まりました。ずっと以前に買ったまま、一度も読むことなく放置していた発達障害―ADHDについての本でした。

著者は精神科医の司馬理英子先生。発達障害のクリニックを開いている専門家です。ADHDとは何か、多動症とはなにか、注意欠如とはどういうことか……原因や症状、そして対策が専門家の視点で、かつ、とてもわかりやすく書かれていました。目からウロコでした。決して特別なことが書いてあるわけではなく、非常にオーソドックスな内容です

そんなことすら、当時の私は勉強していなかったわけです。本当にダメな父親です。この本を読んで、息子が車が走ってきているのに道に急に飛び出してしまうのにも、ちゃんと息子なりの理由があったのだと知りました。

私も含めて、多くの人が道を渡ろうとする時は、「向こうから走ってくる車との距離があのくらいあって……」「これくらいの速度なら安全に渡り切れる」そう状況を判断してから渡ります。

でもADHDはモノとモノとの位置関係、自分とモノとの距離といった空間把握がとても苦手な場合があります。空間把握能力が低いのに「大丈夫」だと判断してしまう。加えて、注意力の低さや衝動性もあいまって、本人は「行ける」と思ってスタートする。結果、周りからは突然飛び出しているように見える。

発達障害についてきちんと学んできた親なら知っていて当然のことを、私はその時、初めて知ったのです。

「……なるほど、そうだったのか……」本を読み進めるうちに、どんどん恥ずかしさを覚えていきました。私は息子を”自分”というバイアスで見ていただけ。その前に、発達障害、ADHDというフィルターを1枚かけることができていれば、息子の言動に対しての見え方は変わっていたはずです。

私はそれができていなかった。

「僕が完全に間違っていた……」
「あぁ……取り返しのつかないことをしてしまった……」

息子へのこれまでの言葉や態度を思い返すと、とてつもない後悔が襲ってきました。

私は、寝室へ行って寝ている息子に謝りました。

「本当にごめんね……お父さんが間違っていた」
「本当につらかったね……」

赤平大

赤平大

1978年9月13日、岩手県出身。アナウンサー。ナレーター。株式会社voice and peace代表取締役。2001年、テレビ東京入社。2009年、退社しフリーアナウンサーに。2017年、早稲田大学大学院商学研究科を修了しMBAを取得。2022年から横浜創英中学・高等学校講師、2024年から代々木アニメーション学院で就活講師を務める。発達障害と高IQを持つ息子の子育てをきっかけに、発達障害学習支援シニアサポーターなどの資格を取得し、学校や企業向けの講演活動を開始。発達障害の知識を手軽にたくさん身につけるための動画メディア『インクルボックス』も運営。

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たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。

たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。

発達障害のわが子を中学受験成功、麻布中学に合格に導いた元テレ東アナが、子どもに伝えた具体的な勉強法や生活のルール作り、伝え方までもわかりやすく解説します。生きづらさを抱える子どもの学習&生活支援に悩むすべてのパパ&ママに!