「叱る、嫌がる、癇癪、撤退」アナウンサー・赤平大さんと発達障害の息子の”前向きな日常”

赤平大
2024.11.11 23:07 2024.11.26 11:40

机に伏せる小学生※写真はイメージです

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6年生の12月に突然「麻布中学を受けたい」と言った発達障害の息子さんの意思を尊重しつつ、二人三脚で中学受験を突破した元テレビ東京アナウンサーの赤平大さん。

赤平さんも、発達障害のことを理解できずイライラとストレスを抱え苦しんだ過去がありましたが、発達障害について学ぶことで、子どもとの向き合い方は劇的に変わったそうです。

著書『たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。』より、赤平さんのトライ・アンド・エラーの様子が伝わる一節を紹介します。

※本記事は赤平大著『たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集したものです。

発達障害の子が「姿勢をキープできない」理由とは?

草原に座る男の子

息子に限らず、発達障害の子どもにとって背筋をピンと伸ばして立つ、キチンと座る―いわゆる「正しい姿勢」を保つのはとても難しいことです。どうしても”グラグラ””グニャッ””ダラッ”としがち。

これも原因は複合的ですが、理由の1つに生まれつき”体幹”が弱いことが挙げられています。体幹は、筋肉はもちろん骨格や内臓も含めた体の軸となる部分です。発達障害があると、その軸を感じ取ることが難しいケースがあり、その結果”グラグラ”して、自分自身の身体を支えられずに姿勢が悪くなってしまうのです。

体幹が弱いので、イスに座った時はどうもしっくりきません。誰でもそうだと思いますが、しっくりこないと落ち着かなくなります。そこで”しっくりポイント”を探るためにイスに座りながらモゾモゾしたりする。

さらに、しっくりポイントが見つかったはいいけれど、その姿勢が一般的には”悪い姿勢”だったりする―こうなると、親や学校の先生に叱られてしまうわけです。しかも、こうした”グラグラ”は成長と共に悪化するケースもあります。

これは頭蓋骨が重く、大きくなっていくからです。人間の頭の重さは体重の10%程度もありますが、その重い頭をしっかり支えてくれているのが、体幹とその周りにある筋肉です。元々体幹が弱いところへ、成長と共に頭が重くなっていくと余計に身体がブレやすくなるというわけです。

息子も、小さい頃から姿勢は良くありませんでしたが、小学校~中学校と進むにつれて少しずつ悪くなっていきました。

「ちゃんと座りなさい!」「姿勢!」私は姿勢に関して口うるさいタイプだと思いますが、何度口頭で指摘しても息子の姿勢は改善されませんでした。息子本人の力ではどうにもならないとわかっていても、口うるさく指摘してしまう”ダメ親”な私自身にも嫌気がさしました。

肘をついて寝そべっていたって勉強できれば問題ない、と切り替えて思うようにしたいのですが……。注意され続けると、息子の二次障害のリスクも高まってしまいます。

「勇気ある撤退」は日常茶飯事 子どもと一緒に考える新しい作戦

赤平大さん

どうすればいいのか?私は姿勢を”外側から”良くしてみようと考えました。道具を使うことで補正、矯正してくれる方法がないか、と。「何か、使えそうなものは……」ふと目についたのが物干し竿です。

机に向かう息子を挟んで左右両サイドに台を置いて、そこに物干し竿を乗せます。息子の両わきの下にちょうど物干し竿がくるくらいの高さに調整すれば、息子がもたれかかっても物干し竿が身体をちょうど良い位置にキープし、机に倒れ込むことを防げます。簡単に言えば”つっかえ棒”です。これを使えば息子の姿勢も良くなり、「ちゃんと座りなさい!」

と私が注意する回数も減って二次障害リスクも減る、はずです。この作戦内容を息子に説明して、やってみることにしました。ところが導入当初こそ上手くいくかに思えたものの、すぐに息子は嫌がるようになりました。

そして、どんどん息子の抵抗が強くなり、時には癇癪を起こすことも……。これは、発達障害支援で非常に効果があるとされる「応用行動分析学(ABA)」において、「望ましくない行動が強化」されてしまった状況になります。

本来は「望ましい行動(=姿勢が良くなる)」ことの「発生頻度が高まる(=強化)」を狙って”物干し竿”を使ったわけですが、実際にはこれまでとは別の「望ましくない行動(=癇癪)」が発生し強化されてしまいました。こうなると作戦は撤退です。私の作戦により、姿勢を良くする以外の弊害が発生している状況は決して良い状況ではありません。

このように勇気ある撤退は日常茶飯事です。中学生になった今も、息子の座る姿勢は悪いままです。姿勢が悪いことで、食事をこぼしやすかったり、字が汚くなってしまうことにも繋がっています。また新しい作戦を息子と考えて実践しようと、日々話し合っています。

赤平大

赤平大

1978年9月13日、岩手県出身。アナウンサー。ナレーター。株式会社voice and peace代表取締役。2001年、テレビ東京入社。2009年、退社しフリーアナウンサーに。2017年、早稲田大学大学院商学研究科を修了しMBAを取得。2022年から横浜創英中学・高等学校講師、2024年から代々木アニメーション学院で就活講師を務める。発達障害と高IQを持つ息子の子育てをきっかけに、発達障害学習支援シニアサポーターなどの資格を取得し、学校や企業向けの講演活動を開始。発達障害の知識を手軽にたくさん身につけるための動画メディア『インクルボックス』も運営。

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たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。

たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。

発達障害のわが子を中学受験成功、麻布中学に合格に導いた元テレ東アナが、子どもに伝えた具体的な勉強法や生活のルール作り、伝え方までもわかりやすく解説します。生きづらさを抱える子どもの学習&生活支援に悩むすべてのパパ&ママに!