「友だちのように仲の良い親子」はNG? 精神科医が解説する、理想の親子関係
「友だちみたいな親子関係」は理想的と思われがちです。しかし、そんな親子関係は子どもの自立を阻むことがあります。思春期の子どもの自立心を育てる親子の在り方について、児童精神科医の舩渡川智之さん監修の書籍『思春期の子の「うつ」がわかる本 SOSサインの見極め方と適切な接し方』より解説します。
※本稿は、舩渡川智之著『思春期の子の「うつ」がわかる本 SOSサインの見極め方と適切な接し方』(大和出版)の一部を再編集したものです。
子どもが自立する機会を奪っていませんか?
・子どもの自立心をつぶさないで
親の正論や心配が、子どもの自立心をくじいてしまうことがあります。過干渉になっていないか注意しましょう。ただ、神経発達症の傾向がある子の場合、親が手をかけざるを得ない場合もあります。年齢と子どもの発達の程度を考えながら関わることが大切です。
・失敗させまいという気持ちを抑えることも大事
人は経験から先を予測します。子どもに対して「好きな道を選べばいい」と言いつつ、子どもが決めたことに反対し、無理やり「失敗しない道」「親がよかれと思う道」を選ばせたがります。しかし人は自分で選択し、失敗することで自分の限界や能力を知り、困難を乗り越えていきます。
そして挫折から立ちなおるレジリエンスも高められます。親にも、子どもの失敗を前向きに受け止める姿勢が欠かせません。
●過干渉
心配で放っておくことができない。本人が自己表現する前に感情を言葉になおす。よかれと思って、本人の状態をよく観察せず一方的に励まし続ける。
●感情の混同
本人の感情を尊重せず、自分の感情を
まるで本人の感情のように口にする。
●先回り
本人を急かし、先回りしてやることをすべて指示する。思考ややる気、自己効力感を奪ってしまう。
●自己の押し付け
自分の方法論を自明のことのように本人に伝え、それ以外の選択肢を許さない。
→自分を表明できなくなる
本人は自分の考えや感情を表明することができず、ストレスを感じる。最初は抵抗していても、日常化すると自分を表現できなくなる。次第に、感情は動かず、思考も働かなくなる。
親子関係はうまくいっていますか?
・親子関係が自立の妨げになることがある
友だちのように仲の良い親子は、一見理想的かもしれません。しかし、養育する側とされる側、それぞれの立場は同じではありません。その立場の違いが、自立したいという気持ちを促します。一方、親に対して絶対服従を強いる、逆に親が子どもの言いなりになるという関係も、自立の妨げになります。
・困ったときに、相談に乗れる関係をつくる
子どもの抑うつ・不安が強いとき、子どもの感情に同調したり、ふり回されたりしていると、子どもの気持ちも安定しません。どっしり構え、見守り、不安を受け止めるよう心がけてください。
子どもが、家なら休める、家族は自分を見ていてくれる、困ったら相談に乗ってもらえると思えれば、家庭が安全地帯になっているといえるでしょう。「なにがあってもあなたの味方だから大丈夫」というメッセージを伝え続けることが大事です。
【NGな親子関係】
●対等
友人のように仲良しで対等な存在だと、子どもは親に反発し、距離を置き、自立することができない。
●親が絶対上
親が子どもを尊重せず、一方的な態度で接する。子どもは自立の機会を奪われる。
●子が絶対上
子どもの機嫌をとり、要求に応じ、自主性に任せきりは、たんなる過保護。規範を示すのも親の役割。
【OKな親子関係】
●一貫性のある態度で接する
世間や常識ではなく、親自身がよいこと、わるいことの判断に一貫性をもたせる。親への信頼につながる。
●わかったふりをしない
親でもわからないときは「わからない」と言って、子どもに伝える。わかったふりをすると、問題を先送りにしてしまう。
●いつでも味方でいる
どんな困難な状況におちいっても、子どもの安全を守り、子どもの味方でいることを示し、伝えていく。
●不安があっても本人にぶつけない
子どもの前ではうろたえないようにする。不安があっても子どもにぶつけない。自分自身のメンタルコントロールが大事。
思春期の子の「うつ」がよくわかる本: SOSサインの見極め方と適切な接し方(大和出版)
特に理由なく、学校にいけなくなった。元気がない、夜眠れない、ごはんが食べられない。「うざい」「うるさい」などの悪態をつく。――思春期特有の心のメカニズムと抑うつ・不安との関係を正しく理解し、子どもを守るヒント