「友だちのように仲の良い親子」はNG? 精神科医が解説する、理想の親子関係

舩渡川智之(監修)
2024.12.16 13:29 2024.12.16 11:50

落ち込む男子高生

「友だちみたいな親子関係」は理想的と思われがちです。しかし、そんな親子関係は子どもの自立を阻むことがあります。思春期の子どもの自立心を育てる親子の在り方について、児童精神科医の舩渡川智之さん監修の書籍『思春期の子の「うつ」がわかる本 SOSサインの見極め方と適切な接し方』より解説します。

※本稿は、舩渡川智之著『思春期の子の「うつ」がわかる本 SOSサインの見極め方と適切な接し方』(大和出版)の一部を再編集したものです。

子どもが自立する機会を奪っていませんか?

空を見る中学生

・子どもの自立心をつぶさないで

親の正論や心配が、子どもの自立心をくじいてしまうことがあります。過干渉になっていないか注意しましょう。ただ、神経発達症の傾向がある子の場合、親が手をかけざるを得ない場合もあります。年齢と子どもの発達の程度を考えながら関わることが大切です。

・失敗させまいという気持ちを抑えることも大事

人は経験から先を予測します。子どもに対して「好きな道を選べばいい」と言いつつ、子どもが決めたことに反対し、無理やり「失敗しない道」「親がよかれと思う道」を選ばせたがります。しかし人は自分で選択し、失敗することで自分の限界や能力を知り、困難を乗り越えていきます。

そして挫折から立ちなおるレジリエンスも高められます。親にも、子どもの失敗を前向きに受け止める姿勢が欠かせません。

●過干渉
心配で放っておくことができない。本人が自己表現する前に感情を言葉になおす。よかれと思って、本人の状態をよく観察せず一方的に励まし続ける。

●感情の混同
本人の感情を尊重せず、自分の感情を
まるで本人の感情のように口にする。

●先回り
本人を急かし、先回りしてやることをすべて指示する。思考ややる気、自己効力感を奪ってしまう。

●自己の押し付け
自分の方法論を自明のことのように本人に伝え、それ以外の選択肢を許さない。

自分を表明できなくなる
本人は自分の考えや感情を表明することができず、ストレスを感じる。最初は抵抗していても、日常化すると自分を表現できなくなる。次第に、感情は動かず、思考も働かなくなる。

親子関係はうまくいっていますか?

落ち込む女子高校生

・親子関係が自立の妨げになることがある

友だちのように仲の良い親子は、一見理想的かもしれません。しかし、養育する側とされる側、それぞれの立場は同じではありません。その立場の違いが、自立したいという気持ちを促します。一方、親に対して絶対服従を強いる、逆に親が子どもの言いなりになるという関係も、自立の妨げになります。

・困ったときに、相談に乗れる関係をつくる
子どもの抑うつ・不安が強いとき、子どもの感情に同調したり、ふり回されたりしていると、子どもの気持ちも安定しません。どっしり構え、見守り、不安を受け止めるよう心がけてください。

子どもが、家なら休める、家族は自分を見ていてくれる、困ったら相談に乗ってもらえると思えれば、家庭が安全地帯になっているといえるでしょう。「なにがあってもあなたの味方だから大丈夫」というメッセージを伝え続けることが大事です。

【NGな親子関係】
●対等
友人のように仲良しで対等な存在だと、子どもは親に反発し、距離を置き、自立することができない。

●親が絶対上
親が子どもを尊重せず、一方的な態度で接する。子どもは自立の機会を奪われる。

●子が絶対上
子どもの機嫌をとり、要求に応じ、自主性に任せきりは、たんなる過保護。規範を示すのも親の役割。

【OKな親子関係】
●一貫性のある態度で接する
世間や常識ではなく、親自身がよいこと、わるいことの判断に一貫性をもたせる。親への信頼につながる。

●わかったふりをしない
親でもわからないときは「わからない」と言って、子どもに伝える。わかったふりをすると、問題を先送りにしてしまう。

●いつでも味方でいる
どんな困難な状況におちいっても、子どもの安全を守り、子どもの味方でいることを示し、伝えていく。

●不安があっても本人にぶつけない
子どもの前ではうろたえないようにする。不安があっても子どもにぶつけない。自分自身のメンタルコントロールが大事。

舩渡川智之

栃木県出身。2004年山形大学医学部医学科卒業。2年間の初期臨床研修を経て、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室に入局。同医局の関連病院等での研修の後、東邦大学医学部精神神経医学講座の助教に就任。以来、東邦大学医療センター大森病院メンタルヘルスセンターにて一般精神科臨床の傍ら、児童精神科医として臨床、精神病の予防・回復のためのデイケアの診療にも携わる。児童精神医学、学校精神医学、予防精神医学、精神科リハビリテーションが専門。

思春期の子の「うつ」がよくわかる本: SOSサインの見極め方と適切な接し方

思春期の子の「うつ」がよくわかる本: SOSサインの見極め方と適切な接し方(大和出版)
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