子どもを伸ばすシリコンバレー式の「プロジェクトベース学習」とは?
世界の先端企業が集まるアメリカのシリコンバレーで日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool創設し、教育事業のアドバイスをするコンサルタントとしても活躍する中内玲子さんは,現代の子どもに必要なものは3種類の「自分で考える力」だと言います。
ここではその詳細と、家庭でできる考える力を伸ばす「プロジェクトベース学習」について解説します。
※本記事は中内玲子著『シリコンバレー式 世界一の子育て』(フローラル出版刊)より一部抜粋・編集したものです
新しい時代に求められる3つの「考える力」
かつての工業社会では、「指示されたことを正確に行う能力」が求められていました。その後の情報社会では、「最新の情報を入手すること」「多くの情報を集めること」が重視されました。これからの社会ではさらに、「AIやIoT、ビッグデータを使って、集めた情報を的確に処理・判断する力や社会問題の解決法を考える力」が求められます。
与えられたタスクをこなす時代は終わり、情報を集めるだけの時代も終わりに近づいています。「言われたことをいかにうまくやるか」「どれだけ知っているか」にフォーカスした教育から脱け出さなくてはならないのです。
これからの時代は、与えられるのを待つのではなく、一人ひとりが「自分で考える」ことが求められます。具体的にはつぎの3つの「考える力」が必要だと私は考えています。
知的に考える力
これは、情報をもとに分析する、情報が本当に正しいか判断するなど、「頭」でインテリジェントに考える力です。知的に考える力は、自分の理想の人生を生きるベースになります。
創造的に考える力
新しい価値を生み出す力や、感性、想像力、インスピレーションなど「魂」で考える力です。イノベーションを起こすための力でもあります。
人のために考える力
共感する、人を思いやる、自分の思いを人に伝えるなど、「心」で考える力です。社会的スキルの土台になるものであり、自分の力を社会に還元するための力でもあります。
「考える力」は人間だけに与えられた大きな力です。自立心と同じく、いずれ子どもが親の手を離れても、必要なときに子どもの助けとなる最高のギフトです。育てようとしてもすぐに結果が出るものではありませんが、その人の一生を豊かにしてくれます。
家庭でできるプロジェクトベース学習…家族で話し合い、考える訓練をする
与えられたプロジェクトをもとにグループで話し合い、自分の意見と相手の意見を調整しながら課題に取り組むプロジェクトベース学習は、子どもの考える力を育てるのにとても役立ちます。プロジェクトベース学習は、多教科にわたる情報をもとにチームで課題に取り組むものですが、これを家庭でも応用することができます。
たとえばわが家では、私の誕生日を祝うために子どもたちと夫がプロジェクトを考えてくれました。
まず、3人の子どもたちが絵を描いてバースデーカードをつくることにしました。
そして、カードを渡すときに今年はどんな演出をするか、そのために何を用意するか。バースデーカードづくりや、バースデーケーキや部屋に飾る花などの準備を私に気づかれないようにいつ誰がやるか。
そういったことを夫と子どもたちが相談しながら企画を立て、準備を進めてくれていたのです。夫も「HAPPY BIRTHDAY!」の文字が飛び出すしかけをつくりました。
誕生日当日、家族が祖父母の家に集まり、パーティが開かれました。お祝いの料理を食べたあとにハッピーバースデーの歌を歌ってもらい、バースデーケーキのろうそくを吹き消すと、長男がおもちゃのドローンを操作してバースデーカードを私の手元に届けるという、手の込んだ演出をしてくれました。
誕生祝いの計画を立てる以外にも、料理をする、送る相手のことを考えて年賀状をつくるなども、プロジェクトベース学習を応用した家庭で行える取り組みです。
料理は、用意する材料や分量、栄養や食材の色のバランス、食べる人のことまで考えてつくりあげるクリエイティブな作業です。包丁や火を使うことができる年齢の子なら、料理をおいしくつくるための調味料の量や入れる順番、加熱の仕方などを考えることで、数学や理科の学習に役立てることもできます。