どうせうまくいかない…頭の中で聞こえる自己批判的な声はどこから来ている?
自分を批判するようなネガティブな思考が頭に浮かんだことはありませんか? その批判は、過去に誰か別の人から投げかけられた言葉と同じかもしれません。
自分の内なる自己批判は、子どもの人生にどのような影響を与えるのでしょうか? 『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』よりご紹介します。
※本稿は、フィリッパ・ペリー(著), 高山真由美(訳)『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(日本経済新聞出版)から一部抜粋・編集したものです。
頭の中のネガティブな声に気がついたエレインの話
私たちの内なる声は、どうやら子どもに伝わってしまうようなのです(はっきり見えている癖と同じように)。子どもに幸せになるための能力を身につけてほしいと思うなら、一番邪魔になるのはあなたの内なる自己批判なのです。
私たちは子どものころの経験によって形づくられ、大人になります。これは人間の発達の基本で、それをはねのけるのは困難です。内なる批判の声を止めるのは難しいのですが、その声を自覚することはできるはずです。
次に紹介するエレインは2児の母で、画廊のアシスタントをしています。彼女も頭のなかのネガティブな声に気がつきました。
たいてい失敗についてなんです。やめておくべきだ、どうせうまくいかないから……私は下手なんだから……恥ずかしい思いをするだけだからって。いろいろなことに手を出さないように、自分を説得してしまうんです。それであとになって自分で自分を批判するんですよ、積極性に欠けている、何かに没頭することがないって。何かにかじりついてまで成し遂げるようなことができない、薄っぺらくて、何に対しても本物の情熱がなく、専門性もない。そんなふうに自分に言い聞かせてしまう。いまこうしてあなたに話しているだけでも、頭のなかで自分がこう言っているのが聞こえます。「ああ、そうだよ、それは全部本当のことだ」
頭の中のネガティブな声はどこから来ている?
この声がどこから来ているかを考えると罪悪感を覚えます。母のことをとても愛しているし、愛されていると感じてもいました。でも母は昔からずっと心配性で、何に対しても満足することがなくて、ものすごくうしろ向きで、自分に厳しいんです。褒め言葉をそのまま受けとめることは絶対にありません。「このラザニアすごくおいしい!」と褒められても、「風味に欠けるし、チーズが多すぎるわよ」と答えるんですよ。
「これでは不充分だ」というこの母の態度を、私や姉妹は受け継いでしまったようです。私たちはみんな失敗するといつまでもクヨクヨ考えるし、その失敗を、やってみてもどうせ無駄だという証拠として使うんです。昔、外国語の成績でBを取ったことがあるんですけど、それだけで世界の終わりのように感じました。
母もポジティブになろうと努力はしていますが、不用意な一言ですぐ台無しにしてしまうんです。私がウェディングドレスの最後の試着をしたときも、更衣室から出ていくと、母は心配そうな顔でこう言いました。「そうね、当日になって、お花を持ってベールをつければ、まあなんとかなりそうね」。本人も意識しないうちに、自分の心配や不安で周りの人をいやな気分にしてしまうんです。
自分を苦しめる内なる批判者がいるだけで済まず、母の批判を肯定してしまうのだとエレインは言います。決して彼女の母親を悪者にしたいわけではありませんが、母親自身も自分とどう対話しているか自覚していないようです。とくに自分の内なる批判者が子どもに受け継がれてしまうことに気がついていないのです。
頭の中のネガティブな声を遮断する
自分との対話の内容を自覚すれば、その声をどの程度聞きいれるかについて選択の余地が生まれます。エレインは、自分の内なる批判者に次のように対処することを学びました。
自分の子どもたちにはこれを伝えないようにしようと決めました。私のように失敗を怖れる気持ちを持ってもらいたくないのです。とてもやる気が挫かれるので。
以前は頭のなかの声と議論をして、常に負けていたのですが(この議論には多くのエネルギーと注意力を要しました)、最近では、その声を相手にしないのが最良の策だと気づきました。面倒な同僚を相手にするときのように、こう言うのです。「まあ、あなたにも自分の意見を言う権利はあるものね」
内なる批判者が私にはできないと断じるような物事に、あえて挑戦するようにしています。子どもたちのやる気を削がないように、失敗するのはそんなに悪いことじゃないと示すために、不安を乗り越えるようにしています。あきらめろという声をよそに、昔の趣味を再開して絵を描きはじめました。自分が描いたものを批判するのではなく、それぞれの絵の楽しい部分や気に入っている場所に注目できるように自分を訓練しています。これには思いがけないおまけがありました。前より自信が持てるようになったのです。絵についてだけじゃなくて、生活全般にわたって。
『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー(著), 高山真由美(訳)/日本経済新聞出版)
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