『クジラがしんだら』その後どうなる?5歳児が何度も読んだ深海絵本【絵本レビュー】

中野セコリ(nobico編集部)
2025.02.20 11:51 2025.02.21 11:50

クジラがしんだら

nobico編集部員が、おすすめの絵本をご紹介します。
今回は5歳の息子に『クジラがしんだら』(童心社)を読み聞かせしました。

今回読んだ絵本はこちら

クジラがしんだら

クジラがしんだら』(童心社)
江口絵理 文/かわさきしゅんいち 絵/藤原義弘 監修

5歳児、書店で一目ぼれ

『クジラがしんだら』は、深海の鯨骨生物群集を描いた絵本。 鯨骨生物群集とは、クジラの死骸に集まって生きる、様々な生き物たちを指します。

もともと海の生き物が大好きな息子は、表紙を見た瞬間に一目ぼれ。書店で本を手放そうとしないほどでした。
デフォルメしすぎない、リアルさの残った生物の絵が、息子の好みにぴったりだったようです。
これは期待大!

深海生物が大フィーバー!

クジラがしんだら

物語は、1匹のマッコウクジラがその一生を終え、深海に沈むシーンから始まります。
息絶えたクジラに大喜びで集まってくるのが、おなががぺこぺこの深海生物たちです。

次々とやってきては、夢中にでクジラに食らいつくユメザメやタカアシガニ。
その食いっぷりの良さから、久々のごちそうにありつけた喜びが伝わってきます。
クジラの死に思いを馳せていたはずの自分も、「どんな味なんだろう……」と、つられてクジラを食べ物として見てしまうほど。
切ない絵本なのかと思いきや、描かれているのは、もはや「食べ放題パーティー」といっても過言ではありません。

また、深海生物の興味深い生態についても知ることができました。
ダイオウグソクムシは半年の間何も食べていない…などなど、さらっと驚きの事実が書かれています。
深海、なんて厳しい世界なのでしょうか。

クジラの死に、こどもの反応は?

クジラがしんだら

息子は特に、「クジラの いのちは おわっても そのからだを たべる 生きものたちが べつの いのちを つないでいくのです。」という一文に心を打たれた様子でした。

ここ最近、「生き物は最後に死ぬ」ということに気付き、たびたび怯えていた息子。
しかし、この絵本を通して、「生き物は死んだ後も、今生きている生き物とかかわり、影響を与え続ける」という考え方を知り、心に響いたようです。

そして、まさかの「もう一回読んで!」攻撃。
この一文だけで、5回は繰り返し読まされました。
母は「そろそろ次のページに進んでいい?」と聞きたいのを必死に我慢……。

命の輪を感じる一冊

物語のクライマックスでは、クジラの骨の上で生まれたホネクイハナムシの赤ちゃんが、新たなクジラの骨を求めて旅立ちます。
新しい命の旅が始まる、まさに命の輪を感じるシーンです。

宇宙のように広がる深海を、あてもなく漂う小さな赤ちゃん。孤独な旅路に思わず不安になりますが、無事に新たなクジラの骨を発見し、物語はハッピーエンドで幕を閉じます。

巻末には、深海の生き物の解説や、分布などが掲載されていました。本編には登場しないダイオウイカなどの姿もあり、生き物好きの息子は最後まで大満足の様子。

深海の世界への没入感と、子どもの知的好奇心を刺激する盛りだくさんな内容が魅力的な絵本でした。
深海生物に興味のあるお子さんには、きっと刺さること間違いなしです。

nobico(のびこ)編集部

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クジラがしんだら

クジラがしんだら』(童心社)
江口絵理 文/かわさきしゅんいち 絵/藤原義弘 監修

クジラが死んだらどうなる?──深海という厳しい世界に生きるユニークな生きものたちの、いっときの大宴会を描いた物語絵本 深海はえさが少なく、生きものが少ない場所です。ところが、ごくまれに巨大な食べ物のかたまりが降ってくる。それが命を終えたクジラです。 クジラの体は、長ければ100年にもわたってさまざまな生物の命を支え続けます。 はじめはサメ、コンゴウアナゴなどが肉を食べ、タカアシガニやグソクムシなど小さな生物が続きます。骨だけになると、こんどはホネクイハナムシという骨を食べる生物があらわれ、その後も長期間にわたりクジラは分解されていきます。 このクジラの死骸を中心に形成される特殊な生態系は「鯨骨生物群集」と呼ばれ、近年の研究でその実態が明らかになってきました。 50~100年というのは、とほうもなく長い時間ですが、必ずどこかで終わりは来ます。 鯨骨に生きる生き物たちは、やがて別のすみかと食べ物を探さなくてはいけない。こんなに広い海で、そうつごうよく、沈んだ大きなクジラに出会えるものでしょうか? しかし、まっくらな宇宙にも星があるように、深い海の底からあてどない旅に出かける生物たちにも、どこかに必ず明かりがあるのです。でなかったら、クジラに集う生きものたちがずっと子孫を残し、命をつなぎ続けることはできなかったはずです。 これは深海という厳しい世界に生きる生物たちの、いっときの大宴会を描いた物語絵本です。 監修は国立研究開発法人海洋研究開発機構の藤原義弘氏。