「ごめんなさい」が言えない…他人の気持ちを考えることが苦手な子に効果的な“お手本”とは?
相手がどんな気持ちかを理解できず、「ごめんなさい」や「ありがとう」が言えない…発達障害の子どもたちに、謝ることの意味やその重要性に気づいてもらうにはどうしたらいいのでしょうか? 長年にわたって特別支援学級の教師を務めてきた村田しのぶさんが、“お手本を見せる”方法を解説します。
※本稿は、村田しのぶ著『発達障害&グレーゾーンの子どもが「1人でできる子」になる言葉のかけ方・伝え方』(日本実業出版社)から一部抜粋・編集したものです。
他人の気持ちを考えることが苦手
K太くんはブランコに乗っている友だちに「僕と替わってよ」と言えません。いきなり友だちに近寄り、無言のまま叩いたり、蹴ったりして友だちを降ろし、ブランコに乗ろうとするのです。友だちは驚いてべそをかくことに。
先生が飛んできて仲裁するものの、K太くんは自分が叱られることに納得できず、逆に怒り出します。相手がどんな気持ちかを理解できず、「ごめんなさい」が言えません。
「ごめんなさい」「ありがとう」はお手本を見せて
発達障害の子どもたちには、ほかの人の気持ちを想像することがむずかしい、という共通点があります。このため、ほかの人がしてくれたことに対して「ありがとう」とお礼を言ったり、迷惑をかけたときに「ごめんなさい」と謝ったりすることがスムーズにできません。なぜなら、「ありがとう」や「ごめんなさい」の意味を理解することは、コミュニケーションをとる力や状況を判断する力が育っていないと、なかなかできないからです。
対策としては、相手が今どういう気持ちなのか、自分のしたことを周りの人がどう感じているかを子どもに知らせ、徐々に子ども自身で気づけるようにすることです。
よくあるのは、友だちのおもちゃをとってしまって、ケンカになることです。「友だちのおもちゃを何も言わずにとってしまったんでしょ。だったら『ごめんなさい』と言おうね。それと、貸してほしかったら、最初に『貸して』と言うのよ」と言っても、自分が悪いと思っていないので、注意されている理由がのみこめません。
そこで、親が相手の目を見て「ごめんなさい」と謝るお手本を見せることで、謝ることの意味や重要性に気づかせてあげることです。
そして「ごめんなさいと言えたら、相手がうれしくなるかもしれないね」などと、いっしょに考えてみることが大切です。そのためには、次に紹介する方法を実践してみましょう。
無言でおもちゃをとられた相手の気持ちを考える!
まず、子どもにおもちゃを持たせ、次にお母さんが黙ってとってしまいます。そのとき、子どもに「どう思った?」と聞いてみます。すると、「お母さんにとられてイヤだった」と言ったり、子どもが泣きべそをかいたりします。
母 「とられると腹が立つし、悲しいよね」
子ども「うん」
母 「お母さん、どうすればよかったのかなぁ?」
子ども「……」
母 「お母さんが『貸してください』と言えばよかったね」
といっしょに考えて話します。そして、子どもに向かって「ごめんね」と謝ります。
ここで終わってはいけません。謝ってもらったとき、どんな気持ちになったかを尋ねてみます。子どもが「うれしかった」と答えたら、すかさず「うれしいよね、そのとおりだね、『ごめんなさい』と言われると、気持ちよくなるね」と笑顔で伝えます。
そのつど、場面を捉えて、繰り返し言葉をかけて考えさせていくことが大切です。
子ども「もし、『貸して』と言っても、貸してくれなかったら?」
母 「 そのときはね、先生や周りの人に『貸してもらえないから困ってる』と応援を頼むことも大切だね」
と話します。子どもは「困ったとき、どうすればいいか」がわかり、安心します。
「ごめんなさい」を言えるちょっとしたコツ!
まず、親が「ごめんなさい」の始めの部分を区切って言います。それに続けて、子どもが言うようにします。
親 「ごめん……」
子ども「……なさい」
短く区切って言えるようになったら、次はいっぺんに言います。
親 「ごめんなさい」
子ども「ごめんなさい」
と言えたら、笑顔で「上手に言えたね〜、かっこいいよ」とオーバーに褒めます。「お母さんは、そういう○○ちゃんが大好きよ」と言ってハグしてあげると、褒められたことがうれしくて自然と「ごめんなさい」が言えるようになっていきます。
発達障害&グレーゾーンの子どもが「1人でできる子」になる言葉のかけ方・伝え方(日本実業出版社)
長年、小学校の特別支援学級で先生として、家庭では発達障害の子どもを育てる母親として、発達障害やグレーゾーンの子どもを支援してきた著者による、効果的な接し方や才能を伸ばすノウハウをわかりやすく解説。子どもたちが笑顔でのびのび成長し、将来の自立にむけて「1人でできる力」をぐんぐん伸ばせる!