「厳しくしないと勉強しない」は本当? 中学受験で親がしがちな“間違った思い込み”
「成績が上がらない」「子どもがやる気を見せない」――そんな悩みの原因は、間違った「受験に対する思い込み」にあるかもしれません。
医学部専門予備校を主宰する高梨裕介さんが、多くの受験生を見て気づいたのは、こうした「親の思い込み」が子どもを苦しめ、成績の伸びを妨げているということ。
親も子もラクになるための中学受験に対する向き合い方を、著書より抜粋してお伝えします。
※本稿は、高梨裕介 (著) 『灘中学に合格した医学部専門予備校塾長が教える真実 合格したいなら「中学受験の常識」を捨てよ』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集したものです。
中学受験をしんどいものにする間違った「思い込み」
「子どもの成績が一向に上がらない」
「子どもがやる気をまったく見せてくれない」
「まわりの子の成績が気になって、つい比較をしてしまう」
「何度教えても理解しないから、つい声を上げてしまう」
実は、これらの焦りや不安、イライラは、すべて「思い込み」から始まっています。
それが、次の五つの「思い込み」です。
1.難関校を目指すなら、難しい問題が解けるようにならなければならない
2.中学受験をするなら、有名塾に行かなければいけない
3.親が厳しく言わないと、子どもは勉強しなくなる
4.勉強は理解することが大事
5.頭のいい子の勉強法をマネすれば成績が上がる
「えっ!? これのどこが思い込みなの? これって中学受験の常識じゃないの?」と思った方もいるでしょう。
それが、大きな「思い込み」。しかも、これらは間違った「思い込み」なのです。
逆に言うと、この「思い込み」を取り外していけば、中学受験はしんどいものにはなりません。
むしろ、お子さんの成績は確実に上がっていくし、親御さんのストレスも軽くなります
親の心ないひとことで、自信を持てなくなってしまった子どもたち
そもそも医学部予備校の塾長である私が、なぜ医学部受験の本ではなく、中学受験の本を書きたい、書かなければいけないと思ったかをお伝えしておきたいと思います。
医学部は、理系最難関の学部です。
小さい頃から医師になるためにずっと勉強を頑張ってきた子がたくさんいて、なかには何年も浪人して医学部に合格する人も珍しくありません。
受験生のなかには、自分に自信が持てずに苦しんでいる人が多いと感じます。
そういう子たちに話を聞くと、
「自分はこれまで親に一度も褒められたことがない」
「いつもまわりと比べられていた」
「できないことばかり指摘され責められてきた」
など、親御さんの言葉がけが原因で、自分に自信が持てなくなってしまっている子がとても多いのです。
ある子は中学受験で親御さんの希望の学校に合格できなかったことを申し訳なく思い続け、医学部受験では絶対に親御さんの希望している大学に合格したいと受験し続けた結果、浪人生活から抜け出せずにいました。
大学にこだわり続けなければ、他に行ける医学部はたくさんあるし、医師になりたいという夢だって叶えられる。それでも、親御さんに喜んでもらえる大学に行きたい、行かなければならないと思い詰めていたのでしょう。
その呪縛を少しずつほどき、いまは別の大学で、とても前向きに医師を目指しています。
難関大学に進学できなかったからといって、夢が絶たれてしまうわけではないのです。
むしろ、難関中学、難関大学にこだわりすぎて、受験がうまくいかなくなったり、親子関係の溝が深まってしまったりするケースを、私はこれまで幾度となく見てきました。この状況は本当に深刻だと感じています。
実を言うと、私自身も中学受験経験者で、教育熱心な母親に圧力をかけられながら、幼少期を過ごしてきました。
「できて当たり前」の基準が非常に高く、褒めてくれることなんてほとんどない。いつも、できていないところに目を光らせ、ハッパをかけてくるような人でした。
幸い、私にはすべてを肯定してくれる優しい祖母がそばにいてくれたおかげで、自己肯定感が下がることなく、大人になることができました。
でももし、自分のまわりに誰も味方になってくれる大人がいなかったら、いま頃どうなっていたのだろう……、と思うことがあります。
ですが、自分も親になったいま思うのは、私の母親も決して悪意があって、あのような言葉を投げかけていたわけではなかったということです。
すべては、「わが子の将来」を思って、言っていたに過ぎなかった。
つまり、親の深い愛情があってこそ、だったのです。
でも、残念なことにその愛情表現を間違えてしまうと、受け取る側のお子さんはつらい思いをします。
その間違った愛情表現を引き起こしてしまう発端となるのが、先に挙げた五つの「思い込み」なのです。
『灘中学に合格した医学部専門予備校塾長が教える真実 合格したいなら「中学受験の常識」を捨てよ』(高梨裕介 著/日本能率協会マネジメントセンター)
今までの「中学受験の常識」が合格を遠ざけている?!
高偏差値の大学に進学するには幼い頃から中高一貫校に入り、常に難問に挑み続けなければならないと思い込んでいる人が多くいます。
競争を煽る塾、甘やかしは悪とする親、管理至上主義……これらはすべて子どもの生きる力を奪います。
そんな負のスパイラルを断ち切るには、180度の意識改革が必要です。
実際、著者は毎年100 名以上の医学部合格者を輩出する医学部受験の専門予備校「エースアカデミー」を運営していますが、多くの受験生と面談すると、「しんどい」と深刻に悩んでいる相談のうち 6〜7割が親子関係の悩みだということがわかりました。
そこで子どもたちを悩ませる「親」の対応を改善するためには、間違った思い込みを正し、親が実施すべきサポートを体系化して伝える必要があるのでは、と感じるようになりました。
情報過多の現代社会においては、自分の子どもにあった学習方法よりも、世間一般によしとされている学習方法を盲信し、それが唯一の正解だと思い込んでいる親が多いのが現状です。
間違った学習方法や子どもへのかかわり方では、子どもの学力が向上しないばかりか、親からのプレッシャーで長年苦しむ子どもが増えるばかり。
本書では、受験生の親がすべきこと、すべきでないことを確認し、親が強いるのではなく、子ども自らが勉強に取り組むようになる行動変容を促すことで、受験を通して子どもたちが「自分軸」で生きていくベースを築き、かつ確かな学力向上につながる親の考え方と姿勢を提示します。