習い事をやめたい子どもに「もう少し続けてみたら?」は逆効果? 子どもから自由を奪った“親の口ぐせ”
子どもが「習い事をやめたい」と言い出したとき、「もう少し続けてみたら?」「もう少し頑張ってみたら?」と言いたくなる親御さんは多いでしょう。しかし、何度も繰り返し言うことで、子どもにとってその「口ぐせ」が「悪魔のような言葉」として伝わってしまうことがあります。
どうしたら「悪気のない親の口ぐせ」を、子どもに「温かな言葉」として伝えられるでしょうか? 馬場啓介著『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』から紹介します。
※本稿は、馬場啓介著『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』(あさ出版)から一部抜粋・編集したものです。
「もう少し続けてみたら?」 かすみそう(東京/弟2人・妹)
※仮名(出身地/きょうだい)
小学生のときに、ピアノを習い始めました。
始めたきっかけが、自分で「やりたい!」と言ったのか、母から「ピアノを習ってみる?」と言われたのかは、覚えていません。
毎週1回30分のレッスンは、小学生の私にとっては少し憂鬱で、心の中で「やめたいな……」と思っていました。
5年生になったとき、母に「ピアノをやめたい」と話してみました。
すると、母からは「もう少し頑張ってみたら?」と言われました。
その後も、相談するたびに、「もう少し続けてみたら?」と言われていました。
「やめたい」と言うことには勇気が必要で、思い切って言っていたのですが、母からの返事はいつも「もう少し頑張ってみたら?」「もう少し続けてみたら?」でした。
母は私に“ピアノを楽しく続けてほしい”と思っていたのかもしれません。
でも私は、楽しさよりも、“とりあえずもう少し続けるしかないか……”という気持ちでした。
母は、ひとつのことを続ける大切さや、続けることで得られるものを私に体感させたかったのかもしれません。今の私には、“続けることの大切さ”が身についているように思います。
それはよいことでもありますが、それだけではないとも感じています。
先日子どもが習い事をやめたいと言ったときに、当時の母と同じように、「どうしたらこの子は習い事を続けようと思うかな?」と無意識に考えている自分がいました。
大人の「もう少し続けてみたら?」は「続けなさい」の意味
──馬場先生の一言
これは私も母に言われてきた口ぐせだ。
大人から言われる「もう少し続けてみたら?」は、「やめちゃダメ」「続けなさい」の意味でしかない。
私は幼稚園から高校まで剣道一筋だった。“ひとつのことを続けることで得られるものがある”を信念としていた母は、剣道をやめることを許さなかった。もちろん、長く続けたからこそ得られたことも多く、中には今でも心の支えになっているものもある。人生の師匠と言える人とも、続けたからこそ出会えた。
ただ高校卒業とともに剣道をやめて以降、私は剣道から距離をとっている。剣道は好きなことではなく、己を強くするための修行であり、どこかでずっと“親を喜ばせるもの”だった。何度か勇気を出して「バスケがやりたい」と言ったことがあったが「あなたがやりたいと言って自分で選んだんだから続けなさい」と言われた。自分で選んだと言われても……子どもの気持ちなんてコロコロ変わるものだ。
多くの優秀なアスリートは、幼少期に自分が興味を持ったスポーツをすべてやり、その中から種目を選んでいるという話もある。その方が好きな種目を長く続けられるらしい。当時、私の母にはそんな考えはなかったが、もしこの情報を知ったら母の信念も更新され、私にもバスケ部でキャーキャー言われる人生もあったのかもしれないと、たまに本気で思う(私は男子校剣道部出身)。
最近、ずっとサッカーをやってきた息子が「卓球もやりたい」と言ってきた。ふと、私の母のように「サッカーだけに専念しないと、もっとうまくなれないよ」と言いかけてしまった。
そこをグッとこらえて、「やりたいことを全部やれ!」と言えた自分を褒めてあげたい。
『親に知っておいてほしかった「悪魔の口ぐせ」』(馬場啓介/あさ出版)
子育てには正解もなければ、完全無欠の成功者もいない。
「あなたらしいのが一番」「頑張ればできるよ」……。
無意識に使いがちな親の口ぐせが、子どもを苦しめているかもしれない。