自閉症のパニックどう対応する?「怖い顔で怒るのは逆効果」と当事者が語る明確な理由

東田直樹
※写真はイメージです

子どもがパニックになった時のベストな対応について、自閉症の作家・東田直樹さんが「当事者目線」で語る答えとは? 著書より抜粋してご紹介します。

※本稿は、東田直樹著だから毎日、幼稚園に通えた(世界文化社)から一部抜粋・編集したものです。

子どもがパニック状態の時、どう対応すればよいのでしょう?

(C・Tさん/保育歴8年)

子どもに「こうしたい」という欲求があり、かんしゃくを起こして泣いたり、人に危害を加えそうになったりした時などは、どのように対応したらよいでしょうか。欲求が叶えられない気持ちや、パニックになってしまった状態には、どのように寄り添ってほしいのでしょう。

落ち着くのを待って、気持ちに寄り添った声かけを

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パニックなどの不適切な行動は、そうなる前に防ぐのが理想的です。

特に自閉症児の場合は、くり返すことで、不適切な行動そのものが、こだわりにつながってしまうことがあるので、注意しなければなりません。自分に注目してほしいから、やってしまう子どももいるかもしれませんが、僕の場合は、注目してほしかったわけではなく、壊れたロボットの中にいるみたいに、自分の感情や言動をコントロールできませんでした。自分の意思だけではどうにもならなかったのです。自閉症児に対して、わざと怖い顔をして怒る人がいますが、あまり効果はないような気がします。行動の善し悪しより、相手の表情だけが記憶に残ってしまい、その表情をもう一度見ようと、注意されたことをまたやってしまうことがあるからです。子どもがかんしゃくを起こした時には、ひとまず受け止めてあげたほうがよいと思います。

「○○したかったよね」「うまくいかなくてつらいね」など、その子の気持ちに寄り添った声かけをしてあげてください。移動できるのであれば、誰もいない安全を確保できる静かな場所に連れていってあげたほうが早く落ち着くと思います。落ち着いたら、次に同じようなことがあった時どうしたらよいか、一緒に考えてあげてほしいのです。

だから毎日、幼稚園に通えた

自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた 』(東田直樹 著/世界文化社)

『自閉症の僕が跳びはねる理由』の東田直樹さん初の、幼稚園時代のエッセイ。会話が難しい重度自閉症の著者が描く、子ども時代の気持ちや世界は、発達障害のある子どもたちの心を代弁しています。また、保育者のお悩みに答えるQAも収録しており、実用的で温かなアドバイスで保育者や支援者、保護者に寄り添います。発達障害のある子どもが増える今、支援に尽力する保育者や支援者、保護者がほっと一息つける、心の処方箋のような一冊です。
(岡山大学学術研究院教育学域 教授の佐藤曉先生による解説を収録)