子どもの嘔吐、自宅で様子見てOK? 知っておきたい「すぐ受診が必要なサイン」

築紫悠(著),窪田満(監修)
2025.05.12 10:42 2025.05.13 11:50

腹痛と吐き気に苦しむ子ども

夜中や外出先で、突然子どもが嘔吐──焦ってしまう場面ですが、まずやるべきこと、やってはいけないことを知っていれば冷静に対処できます。
この記事では、嘔吐後のケアの仕方、水分補給の注意点、見逃してはいけない「緊急受診のサイン」などを、看護師・築紫悠さんの著書より紹介します。

※本稿は、築紫悠(著),窪田満(監修)『子どもの病気とはじめてのホームケア』(総合法令出版)より一部抜粋・編集したものです。

OK:嘔吐後は口を拭いて、ブクブクうがい

吐いた後は速やかに取り除いてあげましょう。吐いたもののにおいで気持ち悪くなり、再び吐いてしまうことがあります。

ガーゼで口のまわりと口の中をきれいに拭き、うがいのできる年齢の子はブクブクうがいでゆすぎます。吐き気が治まったら、汚れた衣類を着替えさせましょう。

OK:熱を測る

熱を測り「元気はあるか」「食欲はどうか」「水分は飲めるか」、全身状態を観察。嘔吐以外に下痢や咳、鼻水、発疹がないかも確認します。

赤ちゃんや子どもの胃はまっすぐで、胃の入り口の締まりもゆるいため、病気ではなくてもちょっとした拍子に吐いてしまうことがあります。

1日に1度の嘔吐で、原因が明らかなケース(食べすぎた、飲みすぎた、お腹を圧迫してしまった、咳と一緒に吐いた)は、多くの場合心配はいりません。しかし、何度も吐いたり、嘔吐以外の症状があったりする場合は受診する必要があります。

OK:吐いたものを写真に撮る

どのような色で、どのような内容物なのかを写真に撮り、受診の際に医師に見せると診断に役立ちます。また、吐いたタイミングを記録しておくことも有益な情報となります。

NG:嘔吐直後にガブガブ水分補給する

たくさん吐いたのを見ると、「脱水症にならないようにしなきゃ!」と急いで水分を与えたくなりますよね。しかし、一回の嘔吐ですぐに脱水になることはありません。

嘔吐直後にたくさんの水分を飲ませてしまうと、吐き気を誘発することがあります。最後に吐いてから30 分後に、ペットボトルのキャップ一杯分程度から飲ませます。吐かないのを確認してから、少しずつ量を増やしていきましょう。

※「もっとほしい」とせがまれることもあると思いますが、ここは我慢です。背中をさすったり、声をかけてあげたりして、安心させてあげましょう。

NG:飲むとすぐ吐くから水分を与えない

水分補給ができなくても、熱が高くなく、症状が嘔吐や下痢だけだと、病院に行かず様子を見ようと思う方が多いかもしれません。でも、脱水症状を起こしやすいことは確かです。

脱水は放置すれば悪化。けいれんや血圧低下が起こり、最悪の場合、命にかかわることもあります。嘔吐が1日に複数回ある場合にはすぐに受診するようにしましょう。発熱時よりも早めの受診が必要です。

NG:吐いた後、あおむけに寝かせる

一度吐くと再び吐いてしまうことがあります。吐いた後は顔と体を横向きにさせて休ませます。
0歳児の場合、仰向けに寝かせると、吐いたものが気管に詰まる可能性が。バスタオルを丸めて背中に当てて横向きを保持できるようにしましょう。

緊急度

緑色のものを吐く(★★★★)
救急車をすぐに呼び、即受診する

腸閉塞の危険性があり、緊急受診が必要です。

元気がなくてぐったりしている(★★★★)
救急車をすぐに呼び、即受診する

いつものように遊んでおらず、顔色が悪い場合、脱水や腸重積の可能性があります。

38 度以上の熱がある(★★★☆)
診療時間外でも受診。タクシーか自家用車で病院へ

胃腸炎や食中毒の可能性があります。

24 時間以内に頭を打っている(★★★☆)
診療時間外でも受診。タクシーか自家用車で病院へ

頭を打った直後は元気にしていても、数時間経ってから症状が出ることがあります。繰り返し吐くときは受診を。

毎日1、2回吐く(★★☆☆)
ホームケアをしながら、日中の診療時間に受診

少量の嘔吐であっても、2 日以上繰り返す場合は、病気が隠れている可能性があります。水分・食事が取れていても、診療時間内に受診しましょう。

1、2回吐いただけで元気に過ごしている(★★☆☆)
ホームケアをしながら、日中の診療時間に受診

食べすぎ、飲みすぎ、激しく動いたとき、咳と同時に吐いてしまうといったことも
あります。ケロッとしているのなら、自宅で様子を見ましょう。

嘔吐時の食事

吐き気があるときは、離乳食や食事はいったんお休みにしましょう。吐き気
が治まり食欲が出てきたら、おかゆやうどん、野菜スープなど食べられるもの
を少しずつ与えます。

乳児の吐き戻しと、病気の嘔吐の違い

吐き戻し
・授乳直後、ゲップと一緒に吐く
・吐いてもケロッとしている
・吐いた物の色が白い

病気の嘔吐
・授乳直後に噴水のように勢いよく吐くのを繰り返す(肥厚性幽門狭窄症)
・色が赤、茶、黄、緑色(呼吸器・消化管の出血や、腸の狭窄・閉鎖・回転異常)
・発熱や下痢を伴い、吐いた後にぐったりしている(感染症など)

●赤ちゃんが吐き戻しをする原因や対処法、注意したい吐き方とは | ベビーケア | 妊娠・育児のお役立ちコラム | 無添加せっけんとハーブのアラウ
https://www.arau.jp/baby/column/bcare/82.html

症状の掛け合わせ

・嘔吐×腹痛(ウイルス性胃腸炎、細菌性胃腸炎、虫垂炎、便秘、腸重積)

【著者紹介】

築紫悠
看護師/寄り添い疲れの人専門コーチ
北海道在住。看護専門学校卒業後、JA北海道厚生連帯広厚生病院に入職し産婦人科、新生児集中治療室(NICU)を経験。
退職後、内科、整形外科に勤務。看護師として13年、延べ2万人以上の患者と家族に寄り添ってきた。
20代でがんと診断された夫を12年間支え続けるうちに、自己犠牲による心身の消耗を痛感。自身の「寄り添い疲れ」をきっかけに、患者本人に「寄り添う言葉」が自分自身を守るものでもあるべきだと気づく。
現在は、病気の家族や介護に寄り添い続けて疲れた人に向けに、本当の自分を取り戻し、再び自分らしい人生を歩めるようフルサポートするサービスを提供中。
オンラインサロン「リトリートスペース」主宰。働きながら娘を育てる母。

窪田満(監修)
国立成育医療研究センター 総合診療部 統括部長
小児科専門医。医学博士。北海道大学医学部卒業後、埼玉県立小児医療センターなどを経て、2018年より現職。
専門は、先天代謝異常症、小児消化器病、小児総合診療(成人移行支援や小児在宅医療など)。
日本小児科学会、日本先天代謝異常学会、日本マススクリーニング学会の理事、日本小児突然死予防医学会 評議員も務める。

 

パパ・ママが自宅でできる子どもの病気とはじめてのホームケア

パパ・ママが自宅でできる 子どもの病気とはじめてのホームケア』(築紫悠著,窪田満監修/総合法令出版)
本書は、子どもの病気やケガ・気持ちに悩まされるパパ・ママに向けて、NICU(新生児集中治療室)看護師で一児の母である著者が正しいホームケアの方法を解説します。
さらに、病院に行くか判断するために子どもの「どこ」を見るのか・「何」を聞くのか、病院や薬局で話す・聞くべき項目も掲載。
病院に行くか悩んで検索・自己判断する前に、「こんなとき、どうしたら?」と思ったら本書を見てください。