性被害や闇バイト、中高生はなぜ騙される? ネット犯罪の手口を解説

池上彰(監修)

性被害や闇バイトへの加担など、ネットで犯罪に巻き込まれる未成年が後を絶ちません。危険から身を守るため、親子で学びたい犯罪対策を、池上彰さん監修『正しく疑う 新時代のメディアリテラシー』より抜粋してご紹介します。

※本稿は池上彰監修『正しく疑う 新時代のメディアリテラシー』(Gakken)より一部抜粋、編集したものです。

ネットの危険から身を守ろう

ネットを介して犯罪に巻き込まれる事件があとを絶ちません。私たちはネットの危険からどうやって身を守ることができるのでしょうか。

ネットの「危険」ってどんなものがある?

さまざまなウェブサイトを簡単に見ることができるスマホやパソコンは、便利な反面、悪意のある人たちともすぐにつながってしまいます。名前はもちろん、顔や性別、年齢、通っている学校(会社)などのプロフィールについていくらでもウソが言えてしまうのがネットの世界です。

リアルな生活が楽しくなかったり、つらいことがあったりすると、ネットの世界にひたってしまうこともあるでしょう。ネットの向こう側にいる人から優しい言葉をかけられて、「自分をわかってくれる人はこの人しかいない」と思う気持ちもわかります。人を信用するのはとても素晴らしいことですが、一度も会ったこともない人を信じるのは非常に危険です。

また、「無料」「割のいいバイト」などの甘い言葉につられて怪しげなサイトに近づき、個人情報などをさらすと、被害にあうだけでなく、自分が犯罪者になってしまうこともあります。ここでは、ネット犯罪の被害にあった二人の中高生のケースを紹介します。非常に怖い事件ですが、誰もが陥る危険性があると知っておいてください。

あなたは大丈夫? ネットにはこんな危険がある!?

この記事の画像(2枚)

SNSで知り合った人から「裸の自撮り写真」を送るように言われたAさん。その相手はてっきり女性だと思い込んでいたのですが、実は男性で、写真をばらまかれたくなかったら言うことを聞けと脅迫されてしまい、Aさんは困り果ててしまいました…。

CくんはSNSで「高収入バイト」という言葉にひかれて応募しました。決められた時間に荷物を受け取るバイトだったのですが、その荷物には大金が入っていて、その大金の中からバイト代をもらったのです。これは犯罪の実行者にされる、いわゆる闇バイトというものです。

自撮り画像の性被害にあったら…

ネット上で知り合った人から、裸や下着姿の自撮り写真を送らせられる性被害が増えています。犯人は巧妙に被害者に近づき、ときには親身に相談に乗ってあげたり、うれしくなるような言葉をかけたりして被害者を信用させ、自撮り写真を送るように誘導します。そして自撮り写真をばらまくなどと脅して誘い出し、危害を加える事件がたくさん起こっています。

【対策は?】
・相手が誰であっても自分の個人情報は簡単に知らせない
・一度も会ったことのない人を安易に信用しない
・誰であっても裸の写真は絶対に送らない
・万が一、被害にあったら保護者や先生に相談する

闇バイトに加担してしまったら…

SNSなどで「高収入バイト」「簡単に稼げる」といった甘い言葉で、アルバイトの募集をしていることがあります。これらは「闇バイト」と呼ばれるもので、高額な報酬と引き換えに、違法な行為に加担させられてしまいます。こうした闇バイトは、応募のときに身分証明書や携帯電話番号、住所や親の名前、学校名などを提出させるので逃げることも難しくなります。もし逮捕されても、その闇バイト先は絶対に助けてくれません。

【対策は?】
・楽でもうかるアルバイト(仕事)はないと心に刻んでおく
・個人情報を教えてほしいと言われても提出しない
・万が一加担してしまったら、保護者に打ち明けて警察に行く

ネットの「危険」からどうやって身を守る?

二人の中高生がネットで大きな被害にあったケースを紹介しました。とても怖い事件ですよね。「自分だけは大丈夫」「だまされるわけがない」と思っている人も多いかもしれませんが、犯罪者はとても巧妙な手口で近づいてくるので、誰もがだまされてしまう可能性があります。

まず知っておいてほしいのは、「おいしい話」は絶対にないということです。「懸賞金が当選した」「お小遣いをプレゼント」「ただ荷物を受け取るだけで10万円」といったメールは、詐欺や犯罪だと思って間違いありません。また、ネットで知り合った人を簡単に信用して、自分の情報や写真などを送らないように気をつけましょう。

だまされたと思ったら、自分一人でどうしたらいいか悩むのではなく、早めに保護者や先生に相談することが大切です。まわりの大人になかなか言えないときはこの記事の最後に相談先のリストを載せておくので連絡してみてください。あなたは一人ではありません。いつでもどこでもあなたの相談に乗ってくれる人は見つかるはずです。

ほかにもあちこちで危険が待ち構えている!!

無償プレゼントに登録したら…

「ユーザー登録すれば、有料のアイテムやスタンプをプレゼント」というサイト。メールアドレスだけなら大丈夫だろうと登録したところ、いきなり「登録手数料3万円が必要。身元はすぐに割り出せる。払わないと訴える」と言われました。「支払いは、ギフトカードを買って番号を知らせて」と言われて、従ってしまいました。

【対策は?】
・怪しいサイトに登録しない
・脅されても無視する
・早めに保護者に相談する

自殺サイトに引き込まれてしまい…

いじめにあっていたときに、「中学生がいじめで自殺」というニュースを見て、興味半分でSNSを検索。自殺願望のある人たちのグループを見つけて参加してみたところ、「一緒に死んでくれる人を募集中」といったコメントがあり、だんだんとそんな気分になっていきました。

【対策は?】
・自殺や家出を誘う人に近づかない
・保護者や先生に相談する

懸賞金が当たったので口座番号を教えたら…

「懸賞金1万円が当たりました。銀行の口座番号を教えて」といったメールが届きました。口座番号だけならいいかと思って教えたところ、「間違えて100万円を振り込んだ。1割あげるから、全額を下ろして、9割をこの口座に振り込んで」と言われて実行。実は自分の口座が振り込め詐欺に使われていて、「出し子」(被害者のお金を引き出す役割のこと)として逮捕されてしまいました。

【対策は?】
・口座番号を教えない
・万が一振り込まれたら、出金せずに保護者と警察に相談する

相談先リスト

● 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)
0120-0-78310(無料)
いじめや友達や先生のことで悩みがあったら、いつでも相談できる窓口です。電話すると、発信された所在地の教育委員会の相談窓口につながります。

● こどもの人権110番(法務省)
0120-007-110(全国共通・無料)
親や先生に話しにくい被害や悩みについて相談することができます。まわりで困っている人がいる、という相談も受け付けています。
8:30 ~ 17:15(月曜日から金曜日)

● 性犯罪被害相談電話(警視庁)
https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html
性犯罪の被害にあった人のための相談窓口です。全国共通番号(#8103)に電話すると発信された地域の警察の性犯罪被害相談窓口につながります。

● 特定非営利活動法人 チャイルドライン支援センター
https://childline.or.jp/
電話とオンラインチャットで、主に18歳までの人の相談に乗っています。
電話相談 0120-99-7777(毎日16時~21時)

正しく疑う: 新時代のメディアリテラシー

正しく疑う 新時代のメディアリテラシー』(池上彰(監修)/Gakken)

悪ふざけ投稿、誹謗中傷、炎上…。いまや誰もが発信者、気を付けないと自分が加害者になることもあります。また、フェイクニュースやデマも多く情報の受け取り方にもコツが必要です。情報との向き合い方、発し方を池上彰がわかりやすくナビゲートします。