生成AIを正しく安全に使うには? 子どもに伝えたい「気をつけるべき5つのポイント」

池上彰(監修)
2025.05.08 14:52 2025.05.19 11:50

勉強する中学生 高校生の女の子

今や誰でも手軽に使える生成AI。文章やイラスト、音楽までもが簡単に生成できる便利なツールですが、感想文コンクールで生成AIが使われ、話題になったケースも…。
AIは、使い方を間違えると大きな問題を生むこともあります。子どもたちが健全にAIと付き合っていくための基本を、池上彰さん監修『正しく疑う 新時代のメディアリテラシー』より抜粋してご紹介します。

※本稿は池上彰監修『正しく疑う 新時代のメディアリテラシー』(Gakken)より一部抜粋、編集したものです。

生成AIの正しい使い方を考えていこう

勉強する学生

文章や画像、イラスト、音楽や動画など、さまざまな創作物を簡単につくってくれる生成AIですが、あるニュースが話題になりました。2023年におこなわれた「青少年読書感想文全国コンクール」で、生成AIでつくった感想文が10以上発見されたというのです。

感想文を読んだ先生が違和感を覚え、本人以外の人が書いたのではないかと調べてみたところ、本人が生成AIを使ったことを認めたということです。

ふだん生徒と身近に接している先生であれば、生成AIを使ったことを見抜けるかもしれません。しかし、生成AIの性能はどんどん上がっており、その人のオリジナルで書いたものか、生成AIを使ったものかの区別をつけるのは難しくなってきています。

AIに感想文を書かせるのがよくないのは当然ですが、同時に私たちは生成AIをどう使ったらいいかをしっかり考える時期に来ています。

ここで質問です。生成AIでつくられたものは誰のものだと思いますか?プロンプト(指示)をした人のものだと思うかもしれませんが、現在、さまざまな意見が出ています。

そもそも生成AIは、インターネット上のデータを集めて再編成しているので、その中には著作権があるものも含まれており、生成AIでつくったものを無断で使うべきではないという意見もあります。

現状、日本では、生成AIがつくったものには著作権が発生すると規定した法律はありませんが、今後の動向が気になるところです。

私たちはこの新しい技術をどう使っていけばいいのか、注意してほしいところを挙げておきましたので、友だちや先生、保護者と話し合ってみてください。

生成AIを使うときに気をつけること

1:年齢制限に気をつける
たとえばChatGPTが使えるのは13歳以上で、18歳未満は保護者の同意が必要です。それ以外の生成AIも年齢制限があるものが多く、未成年は学校では先生と、家では保護者と一緒に利用するといいでしょう。

2:個人情報は入力しない
生成AIには、名前や住所、学校名、携帯電話の番号、あるいは顔写真など、個人が特定できるものを入力してはいけません。インターネット上の情報の一部となり、ほかの利用者の質問の回答に使われる危険性があるからです。

3:誰かを傷つける言葉は使わない
悪口や偏見などが含まれる指示を入力すると、インターネット上の情報の一部となって生成AIが学習してしまいます。その結果、ほかの人が生成したものに誰かを傷つける内容が含まれるかもしれません。

4:宿題や課題を出すとき、そのまま使わない
生成AIに宿題や課題の答えを教えてもらって、そのまま使うのはやめましょう。そもそも自分のためになりませんし、生成AIの回答は必ずしも正しいとは言えず、ヒントをもらうぐらいにとどめておくことが大切です。

5:他人がつくった生成AIの作品を無断で使わない
誰かがつくった創作物は、たとえ生成AIによるものだとしても著作権の侵害にあたる可能性があるので無断で使ってはいけません。生成AIを利用するときも、小説などの文章や、マンガやアニメなどの画像を素材として使用してはいけません。

生成AIがフェイク画像を増やす!?

生成AIを使って、たとえば災害の被害を大げさに加工したフェイク画像や動画を作成してSNSで発信し、人々を不安がらせようとする人たちがいます。

生成AIが優秀であればあるほど、本物かニセモノかの区別がつきにくくなります。こうしたフェイク画像や動画を見たら、むやみにあわてるのではなく、発信元を確認したり、ほかのメディアのニュースと見比べたりする必要があります。

池上彰

池上彰

ジャーナリスト。1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。1994年から11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年よりフリーに。今さら聞けないニュースの本質をズバリ解説。テレビでも大活躍中。

正しく疑う: 新時代のメディアリテラシー

正しく疑う 新時代のメディアリテラシー』(池上彰(監修)/Gakken)

悪ふざけ投稿、誹謗中傷、炎上…。いまや誰もが発信者、気を付けないと自分が加害者になることもあります。また、フェイクニュースやデマも多く情報の受け取り方にもコツが必要です。情報との向き合い方、発し方を池上彰がわかりやすくナビゲートします。