幼児期に漢字に触れるメリットは? 人気園園長が解説する驚きの効果
卒園児のIQが毎年平均120を超えるという、東京いずみ幼稚園。園内では、「薔薇」や「蒲公英」といったクラス名が使われ、教室の掲示物にもたくさんの漢字が並んでいます。
果たして園児たちは、これらの漢字を理解できるのでしょうか?
園長の小泉敏男先生が語る、未就学児が漢字に触れることの大きな意味を、著書より抜粋してご紹介します。
※本稿は、小泉敏男著『自分で考えて動く力がつく 最高の育て方事典』(講談社)より一部抜粋、編集したものです。
漢字は平仮名より記憶に残る
いずみ幼稚園の国語教育のベースにあるのは、石井勲先生(教育学博士)が開発した「石井式漢字教育」で、もう40年以上取り組んでいます。
石井式の特徴は、「平仮名やカタカナより、漢字を先に教える」という点にあります。漢字を「書く」のは無理でも、「読む」「覚える」だけなら子どもには非常に簡単にできるのです。たとえば、
「はと」「はし 」「はり」
と平仮名で表示されると、パッと見ただけでは区別をつけにくいし、意味も即座には把握しにくいはずです。ところがこれを漢字で書くと、
「鳩」「橋」「針」
となり、平仮名で書いたときよりも速やかに読みや意味が頭に浮かびます。漢字は形状が独特で、平仮名よりも区別がつきやすいため、書けなくても「読み」「意味」は記憶に残りやすいのです。
しかも、「偏(へん)」や「旁(つくり)」などパーツの組み合わせでできているので、成り立ちがつかめれば子どももパズルを考えるような感覚で楽しんで覚えはじめます。
たとえば、魚偏の字がびっしり書かれた寿司屋の湯吞みに興味津々で見入る子はめずらしくありません。鳩は との字を「旁つくりの部分が『く(九)』で『クー』と鳴く、と覚えたらどう?」と教えると、面白がってすぐ記憶して、二度と忘れない子もいます。
すなわち、遊び感覚で触れるなら、漢字はもってこいの文字だということです。
幼児への漢字教育はまさに「適時教育」
また、漢字はそれぞれの文字が固有の意味と音を持つ「表語文字」なので、一字覚えれば新しい日本語をひとつ覚えたことになります。
つまり、子どもが多くの漢字に触れれば、それだけ多くの日本語に触れたことになり、その子の言葉が豊かになるわけです。組み合わせなければ意味をなさない平仮名では、こうはいきません。
漢字のこのような長所を活いかして子どもの国語力を高める教育法が、石井式です。漢字を入り口にして豊かな日本語の世界へ子どもを誘いざなう教育法であって、漢字を教え込むのが最終目標ではありません。
石井式の原則は「読み先習(よみせんしゅう)」です。すなわち、意味を理解して書くことより、とにかく見て音読し、読めるようになることを重視します。
だから園では、日本の古典や優れた文学作品の一節をみんなで音読する「朗誦(ろうしょう)」を、カリキュラムに取り入れています。
人間には「五感」、すなわち視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5つが備わっていますが、このうち視覚は、3歳ごろまでに約7割の子どもが視力1.0程度まで見えるようになります。
音読するとき、子どもは目で漢字を見て、耳から音声で読み方をインプットしていきます。すなわち、視覚と聴覚という「感覚」を活用して、言葉を身に付けていくわけです。そのように考えると、音読を中心とした「読み先習」とは、子どもならではの強みを巧みに活かした教育法であり、実に理にかなった言語教育であることがわかります。
漢字で子どもの世界が広がる
もちろん漢字を覚えれば就学後の学習の準備になりますが、漢字教育の意義はそれだけにとどまりません。子どもの認識する世界が大きく広がるのもメリットです。
漢字に触れた子は、街中の標識や看板にも漢字が使われていることに気づき、自ら読もうとするでしょう。それを聞いた大人が驚くと、子どもは得意になり、ますます積極的に漢字を覚えるので、言葉の力がぐんぐん伸びていきます。
こんな好循環が期待できるから、子どもには早くから漢字に触れてもらうべきだと私は考えています。教え込む必要はありません。できるだけたくさん、頻繁に「触れてもらう」だけでいいのです。
小泉敏男(著)『自分で考えて動く力がつく 最高の育て方事典』(講談社)
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