血糖値が子どもの身長に影響? 高血糖を防ぐ「5つの鉄則」とは
成長に必須な「糖質」は、エネルギー源として重要な役割を果たす一方、摂り方が原因で高血糖を招き、逆に身長の伸びを妨げることも。
成長期の子どもに必要な糖質の摂り方や、高血糖を防ぐための食習慣について、身長を伸ばす専門医「身長先生」こと東京神田整形外科クリニック院長の田邊雄さんが解説します。
※本稿は、『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(田邊雄/Gakken)から一部抜粋・編集したものです。
糖質も成長に必須! エネルギー調整役として活用
近年、糖質は何かと悪者にされがちです。摂りすぎた場合、エネルギーとして使われずに余った糖質は体内で体脂肪に変換され、体に蓄積されてしまうのですから、摂りすぎてはいけないというのは間違いではありません。
しかし、成長期の子どもにとって、糖質はとても重要。筋肉運動のエネルギーになるほか、内臓や脳が働くためのエネルギー源としても欠かせません。食べたものを胃や腸で消化吸収するためにも、脳が成長ホルモンを分泌させたり、食欲をコントロールしたりするためにも、糖質は不足させてはいけない栄養素です。
たんぱく質のおかず2に対して主食は1
栄養バランスでいうと、「たんぱく質のおかず2に対して主食は1」。ごはんは糖質源ですから、ごはんが茶碗1杯なら、たんぱく質のおかずはその2倍ぐらいが目安です。
これを標準に、子どもの状態に合わせて調整するのがいいでしょう。たとえば、次のような感じです。
●やせている子ども
たんぱく質、脂質を十分摂ったうえで、主食の量を茶碗1杯から茶碗大盛り1杯に増やし、エネルギー不足を補う
●体脂肪が多い子ども
たんぱく質量をキープしつつ、おかずの脂質を減らし、さらに主食の量を茶碗1杯から2〜3割減らして摂取エネルギーを減らす
このように、主食は摂取エネルギーの調整役と考えると、カロリーコントロールに役立てやすいでしょう。
血糖値と子どもの身長
もうひとつ、糖質に関係することで知っておいていただきたいのが血糖値についてです。
「血糖値と子どもの身長は関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、血糖値は、子どもの成長にも深くかかわっています。
前述したとおり、糖質は大事なエネルギー源です。特に脳は糖質(ブドウ糖)しかエネルギー源にできないため、足りなくなるのは大問題。そこで、私たちの体には、糖質を蓄えておき、いざとなったらすぐに使えるようにする仕組みが備わっています。
糖質をエネルギーとして使うためのコントロール役を担っているのがホルモン。ここで注目したいのは、血糖値を下げるインスリンと血糖値を上げる成長ホルモンです。
インスリンは血糖値が上がると分泌され、糖を必要としている組織に運び、使われなかった糖を肝臓などに貯蔵させる働きがあります。その結果、血糖値は低下。
一方、成長ホルモンは血糖値が下がると分泌され、貯蔵された糖を必要な組織に届けるため、血液中に放出します。その結果、血糖値は上昇。
インスリンも成長ホルモンも血糖値に合わせてどちらかが分泌され、糖質のエネルギー化や貯蔵をコントロールしているのです。
身長を伸ばすためには高血糖予防も必要
しかし、糖質の摂りすぎなどによって高血糖が続いた場合、インスリンが大量に分泌され、成長ホルモンの分泌量は減ってしまいます。使われなかった糖は貯蔵され、体脂肪に変換され、肥満を誘発。
日本小児内分泌学会によると、近年、子どもの肥満が急増し、遺伝型ではない2型糖尿病になる子どもが増えているということです。2型糖尿病といえば生活習慣病の1つ。大人がなるものだと思われているかもしれませんが、いまや子どもも生活習慣病を心配しなくてはいけない時代ということです。
実際、文部科学省が行っている「学校保健統計調査」によると、2024年の調査結果では、男子は10〜12歳で約13%、女子は11〜12歳で約10%超が肥満傾向児という結果でした。
もちろんエネルギーの過剰摂取や脂質の摂りすぎも肥満の原因となりますが、量だけではなく糖質の摂り方が原因で高血糖を招き、肥満になるケースも決して珍しくありません。
肥満が身長を伸びにくくする原因になる可能性があることは、すでにお伝えしたとおりです。加えて、高血糖によって成長ホルモンの分泌量が減少すれば、身長の伸びに悪影響となることは間違いないでしょう。
つまり、身長を伸ばすためには高血糖予防も必要ということです。
高血糖を防ぐための5つの鉄則
高血糖を防ぐための鉄則は次の5つです。
①パン、麺、ごはんだけの食事は避け、たんぱく質をしっかり摂る
②甘いお菓子や清涼飲料水を摂りすぎない
③欠食しない
④よく噛んで食べる(早食いしない)
⑤しっかり運動する
特に気をつけていただきたいのは、子どもが1人で食事をする「孤食」です。「国民健康・栄養調査(平成17年)」では、朝食を1人で食べる子どもは小学1〜3年生で約 14%、4〜6年生で約12%、中学生で約26%という結果でした。孤食によって好きなものばかりを食べてしまったり、早食いしたりする傾向が高くなるので、できるだけ1人で食べないようにしたり、1人で食べる場合は、ごはんや麺、パンばかりにならないようにしたり、早食いしたりしないように声をかけてあげましょう。
『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(田邊雄/Gakken)
子どもの身長は「遺伝」よりも「何を食べるか」が大事!
身長治療のスペシャリストで【身長先生】と呼ばれる医師・田邊雄先生が、豊富な臨床経験とエビデンスから導き出した、食事で体・心・脳が健やかに育つ【成長食】30のルールと、超簡単で毎日実践しやすいレシピを教えます。