防衛大に進学する生徒も…3.11被災地の多賀城高校の「災害科学科」で学ぶこと

高橋徹

未曾有の被害をもたらした2011年の東日本大震災。その被災市町村のひとつ宮城県多賀城市にある宮城県多賀城高校では、東日本大震災の教訓を生かすべく2016年に災害科学科が新たに設置されました。

兵庫県舞子高校に次ぎ、日本で2例目として設置された防災専門の学科では、どういった授業や取り組みを行っているか、そして、どのような防災人材を育んでいるのか、同校災害科学科科長の石山俊太先生にお話を伺いました。

防災や減災の視点を落とし込んだ授業を展開

――災害科学科の設置のいきさつについて教えてください

経緯としては、やはり東日本大震災の被害などの事実、そしてそこから得た教訓というものを次世代に伝承していくということを主な目的として宮城県の主導で設置されました。

防災専門の学科としては兵庫県にある舞子高校さんの環境防災科に次ぐ全国2例目となっています。その舞子高校さんをはじめ、東北大学の国際災害科学研究所さんなどからのアドバイスをいただきながら設置に至ったという流れになりますね。

また、多賀城高校に設置された理由としては、多賀城市が公共交通の便に優れ、仙台市内や他県の大学・研究機関などと連携しやすいことや、市内にある陸上自衛隊多賀城駐屯地や、隣の塩竈市に本部を置く海上保安庁宮城海上保安部(海保第二管区)などとも連携や協力をして、助言がもらえる体制をつくりやすいことなどがあったと聞いています。

学科の設立の目標としては、ここにある人と暮らしを守るというところを大きなテーマとしています。あとは防災だけに関わらずさまざまな組織でリーダーシップを発揮できる人材の育成ということを目指しているところです。

――災害科学科の概要について教えてください

まず、多賀城高校では、災害科学科だけではなく、高校全体として防災教育に取り組んでいるところが高校全体の大きな特色となっています。

普通科の授業にも「くらしと安全」「情報と災害」といった本校独自に設定された科目が組み込まれており、被災地の高校として、防災や減災の視点を積極的に取り入れたカリキュラムになっています。

さらに、災害科学科では、理系科目を中心に普通科の学習内容を防災や減災、環境などの視点を取り入れて学習する授業を、例えば、物理だと波の話など出てきますが、長周期振動や建物の強度といった話も入れ込みながら行ったりしています。また、専門科目として、過去の災害などから見られる諸問題を題材に、自然科学や社会学的な視点でアプローチする授業などを展開しています。

実際に現地で見聞きし、災害を自分ごととして捉える