味覚は3歳までに決まる! 「よく噛む子」を育てる調理のコツは?
「食べるの早いな」「しっかり咀嚼できているのだろうか」「野菜を好んで食べないな」。子どもと食卓を囲む時に、こんなモヤモヤを感じたことはありませんか?
「かむ回数」が増える食材の切り方や盛り方の工夫を、歯科医・生澤右子さんの著書(医師・脳生理学者の有田秀穂さん監修)より紹介します。
※本稿は、生澤右子(著)有田秀穂(監修)『集中力が高まり、心の強い子になる! 噛む力が子どもの脳を育てる』(青春出版社)から一部抜粋・編集したものです。
味覚は3歳までに決まる
味覚は脳が発達する3歳ごろに完成するとされています。
そして、何を、いつ、どのように食べたのかということがわかってくる6歳ごろまです。
離乳食が終わるころには、子どもの歯もだいぶ生え、いろいろな味を覚えて、食べられるものが広がってきます。
「すぐに飲み込みたくない」食事では、引き続き素材の味わいを活かしたメニューがいいですね。味つけが薄く、かめばかむほどにおいしいと感じるのがいいのです。
味つけが濃いと、口に入れた瞬間にパンチのある刺激がきて、かまなくてもすぐに味がわ
かりますし、よくかむと逆に味が薄くなって物足りなくなるので、すぐ飲み込んでしまいます。
ですから、やはり和食の味つけがいいのです。
「ゆですぎない」「小さく刻まない」
調理法のポイントとしては、「ゆですぎない」「小さく切りすぎない」ということになります。
口の中でかんで小さくしていくと、味が出てくるようにするための工夫です。食材によって違う歯ごたえも、かみながら楽しめるようにするのです。
切り方にも一工夫します。千切りやみじん切りよりも、乱切りや拍子木切りを多くするのです。
こうすることにより、味を深く感じることができますし、大きいので当然、「すぐに飲み込めない」食事になります。
全部の食材を大きくしなくても、大きさをあえてそろえないで切ることで、逆に注意深くかむようにすることもできます。
野菜を食べたがらない子どもたちに、私はこっそりと(?)粗いみじん切りにした何種類かの野菜をひき肉に混ぜ込んだミートローフを定期的に作って食べてもらいました。
形が見えると嫌いなものを認識してしまって拒否するので、それならば! と「これも入れちゃえ」「あれも入れちゃえ」と、その時々に残っている野菜・きのこを入れました。
お肉ややわらかい野菜だけであればすぐに飲み込めてしまいますが、中身の大きさも歯ごたえもバラバラで、かんでいると崩れてくるので、逆によくかんでまとめていかないと飲み込めません。それでも、お肉のうまみがあるので、かむのが苦にならないメニューです。
繊維に沿って切れば、かむ回数が増える不思議
また、食材の繊維の方向にも注目してみましょう。繊維を断ち切るように横に切ると食べやすくなりますし、繊維の方向で縦に切ると繊維が残るのでかむ回数が増えます。
素材自体では、よくかめるかどうかが一目でわかる「咀嚼回数ランク表」(和洋女子大学 柳澤幸江氏、(株)ロッテ、キユーピー(株))というものがあるので、ぜひ参考にしてみてください。
できた料理をお皿に盛るときも、ちょっとしたコツがあります。
子ども用の食事プレートには、お皿に当たる穴の部分に絵が描いてあります。
その穴を主食・主菜・副菜・果物などに割りあてて、いつもその分類をして出すようにすると、食のバランスについて経験的に教えることができます。大人では、ポーション・コントロール・プレート(食べる量を仕切りのついた器でコントロールする)という取り組みです。
そして、かみごたえのあるメニューをできるだけ手前に配置するようにします。これは、近いほうが食べやすいというナッジを利用したやり方です。
ナッジとは、強制することなく、そっと後押しするということです。
まさに、「そっと後押し」くらいが子どもも大人も負担にならないということですね。
生澤右子/有田秀穂(著)『集中力が高まり、心の強い子になる! 噛む力が子どもの脳を育てる』(青春出版社)
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